削除クロース(笑)
Title:終わらない映画
Musician:TOMOVSKY
前回紹介したウラニーノは歌詞が大きな売りのミュージシャンでした。今回紹介するTOMOVSKYもまた歌詞が大きな魅力のミュージシャンです。
何度かここでも紹介したことがあるのですが、TOMOVSKYは、80年代後半にカステラというバンドでデビューした大木知之のソロプロジェクト。世の中を斜めから見たようなユニークな人生訓を織り込んだ歌詞に、様々な音をユーモラスに取り入れた宅録の音がとてもユニークなミュージシャン。「人生訓」というと堅苦しく感じてしまいますが、でも彼は決して押し付けがましくなく、物事の視点をちょっとだけ変えたような歌詞は、聴いている時は楽しく聴きつつ、聴きおわってから「はっ」とその良さに気がつくような、そんな不思議な魅力があります。
今回のアルバムは本人曰くコンセプトアルバムだそうで、アルバムのコンセプトとなるキャラクターが、サンタクロースの親戚、「削除クロース」なる人物(笑)。「削除」がこのアルバムのテーマとなっているそうで、前半は時間の削除、後半は自意識の削除がひとつのコンセプトになっているそうです。
そんなコンセプトがしっかりしているからか、本作はここ最近少々薄味だった歌詞がインパクトあるものが出来上がったように思います。特にユニークだったのが「さしだせ」で、
「明日に期待したいのなら
それに見合ったなにかをさしだせ
未来に期待したいのなら
それに見合った今日までをさしだせ」
(「さしだせ」より 作詞 大木知之)
と「明日というのは今日までの積み重ねなんだよ」ということをユーモラスに語った歌詞には思わず考えさせられるものがありました。ほかにも
「人生の長さは神様が決めるとしても
一日の長さはこっちが決めるよ」
(「抵抗」より 作詞 大木知之)
「人のためだと手足は動く
自分の部屋はグチャグチャなままなのに」
(「ほうき」より 作詞 大木知之)
など、ユーモラスなので決して堅苦しさはないのですが、よくよく聴くと考えさせられるフレーズが要所要所に入っているがとてもおもしろいアルバムになっています。アルバムタイトルの元になっている「映画の中」も、メタ視点の歌詞がユニークなのですが、このどこかメタ視点を感じさせる点って、TOMOVSKYの歌詞全体に共通するよなぁ。そういう意味では、この世の中全体を映画に例えた「終わらない映画」というこのアルバムタイトルは、実にTOMOVSKYらしいといえるでしょうし、また、そのため、このアルバムも実にTOMOVSKYらしい作品になっていました。
思いっきり楽しんで、クスッと笑って、でも終わった後ちょっと考えさせられる、そんなアルバムでした。また例のごとく、ギターロックを主軸におもちゃ箱のような楽しい音をちりばめたポップなメロディーやサウンドもとても楽しくて魅力的。ここ最近、ちょっと物足りない感触のアルバムが続いていたのですが、久しぶりに満足が出来た傑作でした。やはりTOMOVSKYは楽しい!
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
"X"Chronicle of SOIL&"PIMP"SESSINS/SOIL&"PIMP"SESSIONS
ジャズバンドSOIL&"PIMP"SESSIONS初となるベスト盤。ジャズバンド、というよりもジャズでありながらロック的なダイナミックな演奏を楽しめる楽曲が並んでおり、ホーンセッションが激しく吹き鳴らさせる楽曲は迫力満点。文句なくカッコよさを感じます。ただ、アルバム全体としては正直似たような曲が並んでしまっている印象も。代表曲を集めただけに、似たタイプの曲が並んでしまったのでしょうが・・・。
評価:★★★★
SOIL&"PIMP"SESSIONS 過去の作品
PLANET PIMP
SOIL&"PIMP"SESSIONS presents STONED PIRATES RADIO
MAGNETIC SOIL
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