ダンスサウンドを導入した新作
Title:REFLEKTOR
Musician:ARCADE FIRE
前作「THE SUBURBS」も大きな評判となったカナダのロックバンドARCADE FIREの3年ぶりとなる新譜。これがまた素晴らしい!各種メディアなどでも絶賛を集め、ビルボードチャートでも見事1位を獲得するなど、既に大きな話題となっていますが、そんな評判も納得の傑作に仕上がっていました。
今回のアルバム、紹介される場合の決まり文句としては「ダンスミュージックを取り入れた2枚組の大作」という感じで紹介されています。今回のアルバムでは、元LCD Sound SystemのJames Murphyをプロデューサーとして起用し、ダンスサウンドを導入しています。
ただ、このアルバムがダンスアルバムかと言われるとおそらくそうは感じないと思います。タイトルナンバーの「Reflektor」などおそらくライブなどでは踊れそうな作品になっていますが、基本的にはリズミカルなサウンドを主軸におきながら、バンドサウンドやポップなメロディーと見事に融合させている感じ。前作「THE SUBURBS」でもアルバムの中で様々なサウンドを織り込んでいましたが、今回も曲によって様々な色を出しており、踊るための機能性が中心であるダンスアルバムではなく、しっかりと聴いて味わう作品になっています。
また2枚組の大作といっても1枚あたりの長さはそれぞれ36分と39分。2枚あわせて75分程度で確かに収録時間は長めとはいっても1枚のアルバムでおさまる分量。どちらかというと、アナログのA面B面という感覚であえて2枚組にしたように思います。実際、リズミカルでアップテンポな曲が多い1枚目とミディアムテンポで聴かせるナンバーが多い2枚目とは雰囲気が少々異なり、CDを入れ替えるという行為が、リスナーにとっても気持ちの切り替えを与えているように思いました。
1曲1曲聴き所の多い曲が並んでいますが、個人的には1枚目ではアフリカンなリズムの要素を取り入れた「Here Comes The Night Time」や分厚いバンドサウンドに、耳に残るギターリフのフレーズが印象的だった「Normal Person」などが強く印象に残りました。2枚目でも「Awful Sound(Oh Eurydice)」は同じくアフロなリズムが顔を覗かせますし、「Afterlife」のリズミカルで爽快なポップナンバーも印象的。最後を締めくくる「Supersymmetry」では美しくもどこか幻想的な楽曲で幕を下ろします。
メロディーにはどこか憂いが漂っていて強く心に残りますし、残念ながら日本人にはダイレクトに伝わりませんが、現実社会に即した内省的な歌詞も印象的。ライブではリズミカルなサウンドで楽しめそうだなぁ、と思う一方で、最後までゆっくりその世界を味わえる作品になっていました。
今年のベストアルバム候補の1枚。聴けば聴くほど新しい発見があり、それでいてポップなアルバムとしても楽しめる傑作。日本では残念ながらアメリカほど盛り上がっていないみたいですが・・・もっともっと評判になってもいいアルバムだと思います。お勧めです。
評価:★★★★★
ARCADE FIRE 過去の作品
THE SUBURBS
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