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2013年11月23日 (土)

次の時代への萌芽が・・・。

ラジオ全盛期にラジオから流れた音楽を、洋楽邦楽1枚にまとめたコンピレーションアルバム「ラジオの時代」の紹介。今日は3回目、最終回です。

Title:ラジオの時代 1974年

Radio1974

邦楽に関してはグレープ「精霊流し」のようにフォークの流れを受け継いだ曲も目立ちますが、この頃の楽曲については邦楽洋楽ともに、良くも悪くも毒気の抜かれたような曲が目立つように感じました。

特に洋楽に関しては、Jackson5「Dancing Machine」みたいな後のディスコに繋がりそうなダンスナンバーや、ABBA「恋のウォータールー」みたいな軽快なポップソング、The Stylistics「誓い」のようなAORっぽいナンバーなど、80年代の萌芽を感じさせるような曲が並んでいます。

もちろん、これらの曲を含め、名曲も揃ってはいるのですが、アルバム全体としてシーンの勢いが失速した感じが伝わってきてしまいました。

評価:★★★★

Title:ラジオの時代 1975年

Radio1975

1曲目のサディスティック・ミカ・バンド「タイムマシンにお願い」や3曲目細野晴臣「北京ダック」など、完全に垢抜けた作風は今聴いても新鮮さを感じさせるような傑作も収録されていますが、全体的には1974年から引き続き、毒気のないポップスが増えて勢いが停滞気味に感じます。

そんな中でもどちらかというと邦楽の方が勢いを感じさせます。上の2曲もそうですが、「卒業写真」「『いちご白書』をもう一度」とユーミン作曲による楽曲が2曲収録。新たな時代の訪れを感じます。

1975年は、ボブ・マーリーがブレイクし、SEX PISTOLSがライブ活動をスタートするなど、海外では新たなロックの流れがスタートした年だったりするのですが、基本的にヒットした曲が主導のこのコンピでは残念ながらそんな空気は収録されず。Van McCoy「The Hustle」みたいなシンセポップ、後の産業ロックを彷彿とさせるSweet「Fox On The Run」、AOR風の10cc「I'm Not In Love」など、良くも悪くも80年代ポップの走りのような作品が多く収録されています。全体的にポップシーンの停滞気味を感じたコンピでした。

評価:★★★★

Title:ラジオの時代 1976年

Radio1976

そしてコンピの最後を飾る1976年。イギリスではパンクがブレイクしましたが、残念ながらこのコンピには収録されず。このアルバムで一番目立ったのがディスコナンバー。Hot Blood「Soul Dracula」Silver Convention「恋のブギー」など、ディスコナンバーが続きます。ディスコソングの流行について、リアルタイムの証言として「うんざりした」という話はよく聞いたのですが、個人的にはディスコソングは決して嫌いではないのでいまひとつピンと来ない部分がありました。でもこのコンピでディスコソングの連続は、確かにうんざりする・・・(苦笑)。

邦楽もグレープ「無縁坂」小椋佳「めまい」など全体的に哀愁感のある歌謡曲テイストの曲が増えた印象。勢いの失速した洋楽勢に比べて、比較的勢いのあった邦楽勢も、おとなしいナンバーが増えて、ちょっと失速気味に感じました。

正直、コンピのおもしろさとしては10枚の中で一番いまひとつだったかも・・・。もちろん、名曲も少なくないのは間違いないのですが・・・。

評価:★★★★

さて、そんな感じで10枚のアルバムを紹介してきました。以前、ここでも紹介した洋楽のヒット曲を集めたコンピレーションアルバム「僕たちの洋楽ヒット」でも感じた、ポップスシーンは60年代後半から70年代前半に黄金期を迎え、70年代後半から失速していったという印象、このコンピシリーズでも同じように感じました。

ただ、洋楽に関しては60年代後半から1970年71年あたりが全盛期なのに対して、邦楽は70年代に入って73年あたりまでが全盛期と、リンクしながらも微妙に時期が後ろにずれている点がおもしろく感じました。

今回のアルバムでは洋楽と邦楽が一緒に収録されているという企画なだけに、そんな洋楽と邦楽の同じ時代のヒット曲の違いもよくわかりました。特に邦楽は、洋楽の影響を強く受けながらも、ヒット曲を聴く限りだと、意外と洋楽にリンクしていないなぁ、と感じました。洋楽はロックやソウル全盛なのに、邦楽でその影響をストレートに受けた曲は少なく、むしろフォークソングの影響が70年代後半あたりまで続いている点、洋楽と邦楽の大きな違いを感じます。

確かにリズム感やボーカルの歌唱力が重要なロックやソウルと比べて、メロディーと歌詞で勝負するフォークソングは、リズム感の悪い日本人でも出来るし、また日本語詞の曲は日本人にしか出来ません。そのためおそらくロックやソウルを聴きたい人は洋楽を聴いて、歌詞や和風なメロを聴きたくなったら邦楽、という住み分けが出来ているように感じました。

そんな洋楽と邦楽の対比で新たな発見もある、とても興味深いコンピレーションアルバムでした。「ラジオの時代」はこの頃で終わりかもしれませんが、同じような洋楽邦楽融合型のコンピレーション、もうちょっと後の時代まで作ってほしいなぁ。

ラジオの時代 1967年~1969年
ラジオの時代 1970年~1973年

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