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2013年10月28日 (月)

鹿児島から世界へ

Title:カライモ・リンバ
Musician:サカキマンゴー

間違いなく「日本の音楽」のはずなのに、どこか遠い異国の音楽を聴いているような、不思議な気分になる不思議なアルバムがリリースされました・・・親指ピアノ奏者、サカキマンゴーの最新アルバムです。このアルバム、最大の特徴が全編、鹿児島弁によるアルバムということ。日本語のアルバムのはずなのに、対訳がついているという不思議なアルバムになっています(笑)。

なんでももともと、鹿児島のテレビ局がサカキマンゴーの作品の中から鹿児島弁の楽曲をピックアップし、企画盤を鹿児島県内限定でリリースしたいという提案を逆手にとって、全編鹿児島弁のアルバムを作りあげてしまったということだそうです。

しかし、日本の一方言ならば、部分部分で聞き取れてもよさそうですが、このアルバム、全編にわたって、全く意味が聴き取れません(笑)。これ、やはり鹿児島の方なら、若い方も含めてちゃんと聴き取れるのでしょうか。もともと、鹿児島弁は、第二次世界大戦中に暗号につかわれたというエピソードまである方言なのですが、どこか遠い異国の言語に聴こえてきます。そのため、間違いなく「邦楽」のはずなのですが、ワールドミュージックと同じ感覚で聴けるアルバムになっています。これがまたユニークで、日本という国の「広さ」を感じました。

今回のアルバムでは、比較的ゆっくりと聴かせるようなナンバーが多かったのも特徴的。親指ピアノの丸みのあるクリアな音色がとても幻想的な雰囲気になっています。またアレンジも、リバーブをかけたような空間を感じる作風が多く、さらに楽曲の幻想感を増すものとなっています。

この幻想的な空間に載ってくる歌詞が、これまた「聴いたことない不思議な言語」であるため、ある種のファンタジックな感覚を覚えたアルバムになり、これがまた魅力的。鹿児島出身の親指ピアノ奏者という立場の彼だからこそ産み出せる作品になっていました。

ちなみに、サカキマンゴーといえば、私もここ2年続けて足を運んだワールドミュージックのフェスティバル「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」と関係が深いミュージシャンですが、このアルバムでも「HAMA」「Small」では、そのスキヤキでのステージが収録されています。特に「HAMA」では、今年7月にわずか37歳で亡くなったジンバブエのミュージシャン、チウォニーソと共演。他にも合計6ヶ国のミュージシャンと共演しているそうで、鹿児島というローカルと、ワールドワイドなミュージシャンという対比もまたユニークな作品と言えるかもしれませんし、またこのようなその土地土地の文化を大切にしがならも、世界中の人たちと手をとって活動していく、というのがグローバル化の理想系かもしれませんね。

そんな訳で、サカキマンゴーらしい、とても魅力的なアルバムに仕上がっていました。「ワールドミュージック」にカテゴライズされるようなアルバムですが、メロディーは至ってシンプルでポップなので、普段、そういう音楽をあまり聴かない方も是非。お薦めです。

評価:★★★★★

サカキマンゴー 過去の作品
オイ!リンバ(サカキマンゴー&リンバ・トレイン・サウンド・システム)


ほかに聴いたアルバム

Resplendent/ストレイテナー

ストレイテナーの新作は5曲入りのミニアルバム。例のごとく、日本語英語混合の内容になっていて、比較的、日本語の曲はベタなJ-POP色が強いのに対して、英語の曲は洋楽色が強い内容になっています。とはいえ、冒頭を飾る「シンデレラソング」などは日本語詞ですが、迫力あるロックに仕上がっており、アルバム全体に期待をもたせるスタートに。しかし結局、最近のストレイテナーの楽曲と同様、バンドサウンドはそれなりにカッコいいものの、メロディーがインパクト不足というアルバムに。先日聴いたベスト盤で感じたのですが、彼らの初期の作品ってもっとポップでインパクトがあったんですが・・・残念です。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND

THE RECORDING at NHK CR-509 STUDIO/ASIAN KUNG-FU GENERATION

今年4月、NHK BSプレミアム「ザ・レコーディング」で一発録りされた音源をCD化した作品。ベストな選曲で、いわばセルフカバーのベストアルバムとして楽しめそうなアルバムになっています。原曲に比べると、楽曲にかける意気込みから生まれてくるような緊張感は薄くなったような感じはします。ただその一方、そろそろベテランの域に入ってきた彼らだからこそ持ちえる余裕を感じ、それは演奏からもストレートに伝わってきました。アジカンの今を知ることが出来る良企画。「収録曲は全部持っているから」と見送ったとしたら惜しいアルバムだと思います。また、ベスト盤的内容なので初心者にも最適な1枚です。

評価:★★★★★

ASIAN KUNG-FU GENERATION 過去の作品
ワールドワールドワールド
未だ見ぬ明日に
サーフ ブンガク カマクラ
マジックディスク
BEST HIT AKG
ランドマーク

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