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2013年10月 4日 (金)

彼ららしさの中に、新たな挑戦も

Title:小さな生き物
Musician:スピッツ

昔から良質なポップスを作り続け、そのため、高水準で安定したアルバムをリリースし続けるスピッツ。前作「とげまる」はどちらかというとギターロックの色合いが濃い作品でしたが、今回のアルバムは一転。スピッツらしさが強く出たポップス色の強いアルバムになっていました。

特にスピッツらしさを感じるのが序盤。タイトルチューンの「小さな生き物」などは、あの暖かいメロディーラインはまさにスピッツそのもの。また、この序盤、タイトル通りの「小さな生き物」をはじめ、コウロギ(「未来コウロギ」)、金魚(「りありてぃ」)など、歌詞の中で小さな生き物に仮託する内容が並んでいます。ここらへんはタイトルを意識したのでしょうか。こういうユニークながらもどこか親近感を覚える視点はまさにスピッツならでは。そういう意味でもスピッツらしさを感じます。

スピッツらしさを感じられるのは後半も。「スワン」も、まさに切ないメロと歌詞が心に締め付けられる名曲。で、このメロにしんみりなりつつ、それに続く「潮騒ちゃん」がタイトルからしてユニークなギターロックナンバー。これ、今話題のドラマ「あまちゃん」にインスパイアされたの?そしてアルバム最後を締めくくるのは「僕はきっと旅に出る」。前向きさを感じる歌詞に、ちょっと切なさを感じるメロのスピッツらしいナンバーで締めくくります。

「僕はきっと旅に出る 今はまだ難しいけど」
「またいつか旅に出る 懲りずにまだ憧れてる」

(「僕はきっと旅に出る」より 作詞 草野正宗)

なんて、大上段に構えるわけではなく、ちょっと遠慮を感じさせる(笑)歌詞がちょっとユーモラスで、同時にリアリティーを感じさせるのがまた良いですね。ここでも「初夏の虫のように」と小さな生き物が登場。

今回のアルバムは、そんなスピッツらしい曲に彩られながらも、一方では中盤では新たな挑戦も感じる曲が並んでいました。

「野生のポルカ」はタイトル通り、フォークっぽいポルカのナンバーですし、続く「scat」はヘヴィーなギターを聴かせてくれるインストナンバー。そして続く「エンドロールには早すぎる」は80年代風のディスコナンバー。スピッツらしい楽曲を主軸に据えながらも、それだけではないスピッツ像をアルバムの中に作り上げているのはさすがです。

そんな訳で、アルバムの内容としては今回も安定の傑作。ただ、スピッツのアルバムとして考えた時は・・・うーん、ここ最近のアルバムの中ではそこそこ、といった感じだったかなぁ。ちょっとインパクトが薄めというか、「スピッツらしいナンバーが多い」というのは、逆に無難にまとめすぎちゃっている部分も否定できず・・・。もっとも、それでもファンならば、満足できる作品ではあるんですけどね。

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな


ほかに聴いたアルバム

MAMA GUITAR SINGS MAMA GUITAR/ママ・ギタァ

女性2人組のガレージバンド、ママ・ギタァの、なんと10年ぶりとなるアルバム。2006年のライブを最後に活動を休止していましたが、このたび活動を再開。元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎のレーベルからアルバムリリースということで話題となりました。

楽曲は、60年代のガレージサウンドそのまま。素朴なメロディーがとてもキュートなのが大きな特徴です。それだけにパッと聴いた感じはかなり好みなのですが・・・うーん、メロディーがいまひとつというか、後に残りません。特に英語詞の曲が多いのですが、英語との相性がいまひとつで、楽曲がチグハグな印象も。ズバリはまれば、かなりおもしろそうなバンドだと思うのですが・・・ちょっと残念な1枚でした。

評価:★★★

MILLION/SPYAIR

アニメ「銀魂」の主題歌となったシングルがヒット。武道館ライブも成功させ、人気上昇中の名古屋出身のロックバンドSPYAIRの新作。バンド自体は以前から知っていたのですが、アルバムを聴くのはこれがはじめてです。

楽曲的にはハードなメロコア風なサウンドが主軸。メロディーは至ってポップで、雰囲気的にはONE OK ROCKあたり通じるものを感じます。ただ、洋楽テイストの強いONE OK ROCKに対して、かなりJ-POP寄りなのが彼ら。そのため、かなりポップで聴きやすい反面、ちょっとベタというか、あまり面白みのないメロディーラインが耳につきました。そのため、前半はそれなりに楽しめたものの、後半は飽きてしまった・・・。最近、このタイプのバンドはおもしろいバンドが続々と出てくるだけに、J-POP路線を目指すとしても、もう一皮むけないと、人気を持続させるのは難しいような気も・・・。

評価:★★★

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