「歌謡曲」らしさを上手く織り込んだ傑作
Title:I
Musician:いきものがかり
正直言うと・・・というか、ここのサイトの過去の感想を見ていただければわかると思いますが・・・いきものがかりについては、あまりいい意味ではなく、「よく出来たJ-POPユニット」というイメージしかありませんでした。しかし、今回のアルバムに関しては、その見方をあらためなければいけないかもしれません。いきものがかりのアルバムの中で、間違いなく最高傑作と言えるのではないでしょうか。優れたポップスバンドとしての顔を垣間見せたアルバムに仕上がっています。
もっとも、このアルバムについて、いつもの彼らと大きく変わった、という訳ではありません。基本的にはいきものがかりらしいポップスソングが並んでいます。ただ、いきものがかりらしさを生かした上で、ある種の垢抜けたものを感じました。特に今回のアルバムで感じたのは、彼らの楽曲の中に感じられた歌謡曲的要素が、上手く作用したように感じます。
このいきものがかりの楽曲の中に感じられる「歌謡曲」っぽさは、いままでの楽曲にも感じることが出来ました。ただ、いままでの曲に関しては、その歌謡曲っぽさが、野暮ったさにつながっている部分があり、ともすれば「平凡なJ-POP」というイメージを強く抱いてしまう部分がありました。
しかし、今回のアルバムについては、「歌謡曲」っぽさが、メロディーラインの良さにつながっており、さらにはどこか懐かしい、ノスタルジックな要素を楽曲に与えていたようにも思います。例えば先行シングルになった「1 2 3~恋がはじまる~」は、どこか80年代のアイドル歌謡曲っぽさがいい味を出していますし、「恋跡」などか、J-POPがJ-POPと呼ばれる直前、90年代初頭あたりの香りが漂い、ここらへんは個人的にはかなり懐かしさを感じ、壺にはまる楽曲になっていました。
さらに今回のアルバムで特によかったのが、この歌謡曲路線をさらに推し進めた楽曲。軽快な「ぱぱぱ~や」も、哀愁ただようメロディーが耳につきますし、さらに特筆すべきは「恋愛小説」。歌詞も含めてまさに80年代の歌謡曲そのまま。おそらく本人も意識して書いたと思うのですが、意識して書いた曲が、ちゃんとその狙い通りに機能している点、その実力を感じます。
いきものがかりというグループの、脂が乗り切っていることを感じる傑作。ちょっと興味深いのは、この手の傑作は、通常、最も売上が伸びている時期にリリースされることが多いのですが、彼らにとっては、その人気が一段落した段階でリリースされたという点。実際、このアルバムの売上は、初動売上11万1千枚と、前作「NEWTRAL」の初動売上19万2千枚から大きく売上を落としてしまっています。
ただ、どんなバンドでも、最も勢いのあるころには、奇跡のような傑作をリリースしてくるケースが少なくありません。このアルバムが、そんな「奇跡の1枚」なのか、それとも、彼らが、このアルバムを機に一皮むけて、さらに大きく成長したことを示すのか・・・次回作も注目です。ただ、このアルバムが後者のアルバムであり、次回作も傑作であれば、おそらく、一段落してしまった彼らの人気が、再び上向いてくるのは、そう遠くないかもしれません。
評価:★★★★★
いきものがかり 過去の作品
ライフアルバム
My Song Your Song
ハジマリノウタ
いきものばかり
NEWTRAL
バラー丼
ほかに聴いたアルバム
エレクトリックセクシー/ORIGINAL LOVE
ORIGINAL LOVEのニューアルバムは、まずタイトルがいいなぁ、と感じます。「エレクトリックセクシー」。うん、セクシーなんてタイトルをこんなにさらっとつけれるバンド、少ないんじゃないかなぁ。そして、この「エレクトリック」というタイトル通り、全面的にエレクトロサウンドを取り入れた今回の作品。80年代のテイストがたっぷり含まれてたダンスポップが並んでいます。ただ一方、その底に流れているメロディーやリズムはいつものORIGINAL LOVEらしく、ソウルやファンクの要素が色濃い作品。新しい要素を取り入れつつ、ORIGINAL LOVEらしさは健在という傑作に仕上がっていました。
評価:★★★★★
ORIGINAL LOVE 過去の作品
白熱
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