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2013年8月 4日 (日)

さだまさしの魅力と違和感

Title:天晴~オールタイム・ベスト~
Musician:さだまさし

ここ最近、大物ミュージシャンのベスト盤、それもキャリアを総括したようないわゆる「オールタイムベスト」が続いています。山下達郎、松任谷由実、矢沢永吉なども話題になりましたが、その他にも先日、高橋真梨子も3枚組のベスト盤をリリース。そして、今、ロングヒットを続けているのが、このさだまさしのベスト盤です。

CDが壊滅的に売れなくなってきている中、ある程度の枚数を見込めるような大物のベスト盤に頼っているという部分もあるのでしょう。ただ、山下達郎が、このタイミングでベスト盤を出す理由として、「CDがまだあるうちに、パッケージ商品としてリリースしたかった」とコメントしていましたが、他のミュージシャンたちも、「配信」という目に見えないものではなく、「CD」という「モノ」で発売できるうちにリリースしておきたい、という思いがあったのかもしれません。

豪華3枚組のさだまさしのベスト盤。さだまさしについては、いままでアルバム含めてほとんど聴いたことはありませんでしたが、知っている曲も少なくないだけに、これを機に、はじめて彼の代表曲をまとめて聴いてみました。

そんなさだまさしに関して完全な素人の私ですが、彼の代表曲を聴いてまず強く感じたのが、歌詞が半端ないということ。わずか3分程度の楽曲にも関わらず、その物語性ある歌詞に惹きこまれますし、なによりその人物描写が天才的。曲を聴いているだけで、登場人物の顔や性格が伝わってくるようでした。

またもちろんメロディーラインの良さも言うまでもないのですが、個人的には、爽やかな昔でいうところの「ニューミュージック」っぽい作品よりも、哀愁ベッタリの、歌謡曲的な作品に強く魅力を感じました。例えば、山口百恵への提供でおなじみの「秋桜」や、デビュー曲の「精霊流し」みたいな感じの曲ですね。歌詞とあわせて、素直に胸が熱くなってきたような曲もチラホラ。

それだけの名曲を詰め込んだベスト盤だけあって、評価は↓の通りなのは言うまでもないでしょう。ただ、それだけ魅了されながらも、一方では代表曲を全て聴いても、どうもはまりきれなかったというのが正直な感想だったりして。

その一番の理由は、彼の世界に登場してくるのが、みんな善人で、かつ、少々説教臭さを感じる点でした。確かに、今回のDisc3に収録されている曲のようなプロテストソングも、さだまさしの大きな魅力のひとつでしょう。ただ、どうも彼の作品に出てくる登場人物からは、人間らしいねたみ、恨み、つらみのような負の感情が感じられません。ちょっと話がきれいごとに終始していないか?そういう印象が最後まで拭いきれず、これがはまりきれなかった最大の理由だったように思います。

今回のアルバムは、アジカンのアルバムジャケットでもおなじみ、中村佑介を起用しており、そういう意味では、若い世代へのアピールも含めたのでしょう。ただ、説教臭さを感じる作風は、どうしても一昔前という時代を感じてしまった点も否定できません。団塊の世代に寄り添ったようなミュージシャンだよなぁ。もちろん、時代に寄り添ったというのは決して否定的な意味ではなく、そういうひとつの時代に寄り添うというのも、ポピュラーミュージックの大きな魅力なのは間違いないわけで。

そんな訳で、さだまさしの魅力を強く感じる一方で、違和感も同時に覚えたベスト盤でした。ただ、名曲が多いのも間違いない事実なので、興味がある方は、是非。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

演出家出演/パスピエ

パスピエというと、相対性理論とかアーバンギャルドのように、かわいらしい女性ボーカルを全面に出して、「今時の若者」的な、サブカル的、おたく的世界観を前に出していたミュージシャンでした。しかし、メジャーデビューアルバムとなる本作で雰囲気は一転。ロリータボイスが特徴的な普通のJ-POPになってしまいました。

その結果、パスピエらしい特徴が薄れてしまったように感じる反面、いままでのアルバムで感じた、変な自意識の高さみたいなものが薄れ、素直なポップソングとして聴けるようになった印象も。楽曲1曲1曲にインパクトもあり、曲の出来としては、一皮むけた感じもします。

ただ、そうするとパスピエだけが持っているような個性がほしいなぁ、とも思ってしまったアルバム。癖が抜けて聴きやすくなったのは間違いないのですが、ちょっと物足りなさを感じることも否めない作品でした。

評価:★★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO

SINCE2/Spangle Call Lilli Line

ポストロック的な要素を取り込んだポップソングで、独特の世界観を構築する男女3人組バンドの2枚目となるベスト盤。ストリングスやピアノなどを取り込みつつ、タイトなアレンジがつくりあげながらもポップにまとめあげている手法は凝っており、とても魅力的である反面、インパクトが薄く、後味が薄い印象が否めず。いいバンドなのは間違いないのですが・・・。

評価:★★★★

Spangle Call Lilli Line 過去の作品
VIEW
forest at the head of a river

New Season
Piano Lesson

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