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2013年8月23日 (金)

生涯現役歌手のドキュメンタリー

Batayan

今年4月、享年94歳でこの世を去った、昭和を代表する歌手バタヤンこと田端義夫。その彼の、遺作となったドキュメンタリー映画「オース!バタヤン」が名古屋でも公開されたので見に行きました。

先日、この映画のサントラ盤について紹介しました。もともと、映画の存在自体は公開前から知っていたのですが、ソウルフラワーユニオンがライブで彼の「島育ち」を取り上げたことから興味を持ち(中川敬も映画の中で登場しています)、もともとから、ここ最近、昭和歌謡曲に興味があったことから、映画館に見に行きました。

場所は駅西のシネマスコーレというミニシアター。サブカル文脈で紹介される映画なだけに客層はどんなもんかなぁ、と思ったのですが、見事なまでのジジババばかり(^^;;30代の観客は私だけ。昭和歌謡曲の再評価が久しいのですが、結局、若い世代はクレイジーケンバンドくらい止まりで、実際の昭和歌謡曲には興味がないってことなんでしょうか。ちょっと寂しい気持ちになりました。

以下、ネタバレの感想

映画は、2006年に、彼が幼少期をすごした大阪・鶴橋の小学校で行われたコンサートの模様を主軸として展開していきます。この日のコンサートでの彼のステージに、その往年(おもに昭和50年代の映像が多かったのですが)のステージ映像を重ねつつ、さらに、その楽曲にまつわる彼のエピソードを、関係者のインタビューなどで紐解いていく構成になっていました。

彼の幼少期からはじまり、戦時中のエピソード、戦後の、特に大阪での人気や、また彼のギターにまつわるエピソードなどで構成。かなり懐かしい貴重な映像や、貴重な証言など、熱心なファンにとってはうれしい内容がありつつ、また、私のような初心者にとっては、バタヤンの人生をそのままなぞれるような構成になっていたため、わかりやすく、非常に楽しめる内容になっていました。

特に印象的だったのが戦時中のエピソードで、片目が悪かったため、兵役に取られなかった話や、現地に慰問に行った話、さらには大阪大空襲の時は、みんなと逆の方向に逃げたために助かったというエピソードなど。田端義夫に限らず、戦時中の日本を垣間見るエピソードが多くおさめられていました。

それと同様なのが幼少期のエピソードで、当時、とても貧しかった思い出話が、その時代の日本という国の現実を物語っていました。この戦前の話に関しては、バタヤン個人の話というよりも、戦前の日本を物語るドキュメンタリーとしても見られるような内容に感じました。

また、散々女癖の悪さがエピソードとしてあがっていましたが(笑)、その一方で、関係者の証言として登場した、最後の奥さん(映画中では紹介されていませんでしたが、3度離婚して4度結婚しているみたいですね)や、長女(てか、バタヤンは私の祖母と同年代なのですが、彼女は私より年下ってどういうこと?(笑))のインタビューも印象的。女癖の悪さにあきれられつつも、今となっては笑い話として語っている証言が、どこか憎めない、バタヤンの人間的な魅力を感じるインタビューでした。

人間性を感じるといえば、現在のコンサート映像。最後には観客席に降り、観客と握手しながら、時には観客と会話しながら客席を練り歩く姿がありました。インタビューの中でも大阪での彼の人気は、「スターというよりもみんなの代表」という証言があったのですが、その姿は、やはりどこか遠い存在のスターというよりも、身近な存在に感じます。過去の映像にも、最近のインタビュー映像からも、どこか彼の人間臭さを感じられるドキュメンタリーでした。

ちなみに、個人的なお目当てだったソウルフラワーユニオン中川敬もインタビューで登場・・・したのですが、短かった(^^;;ただ、ソウルフラワーモノノケサミットとのセッションの模様も収録されており、こちらはファンとしてはうれしい映像でした。

他にも立川談志師匠の、今となっては貴重なインタビュー映像があったり、見所たくさん。数多くのヒット曲が取り上げられていましたが、ほとんどがワンフレーズのみだったのは、ファンとしては物足りなかったかも?ただ、初心者の私にとっては、むしろ触りだけたくさんの曲を聴けるという意味では、ありがたい構成。田端義夫というシンガーを詳しく知らなくても、最後には、彼の魅力を感じることの出来る、よく考えられ構成されたドキュメンタリー映画でした。名古屋では残念ながら23日で公開が終了してしまいましたが、今後も全国各地で上演されるみたいなので、昭和歌謡曲に興味がある方は是非。

公式サイトはこちら

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