ボーカル宮本浩次の実力
Title:the fighting men's chronicle special THE ELEPHANT KASHIMASHI LIVE BEST BOUT
Musician:エレファントカシマシ
エレファントカシマシというと、ボーカル宮本浩次のワンマンバンド、というイメージが強くあります。実際、このアルバムのジャケットもそうですが、宮本浩次のみをクローズアップした写真も多く使用しており、むしろ、宮本浩次ワンマンであることを、全く否定していませんし、ここまでワンマン色を押し出したバンドも少ないのではないでしょうか。
エレカシデビュー25周年企画の一環としてリリースした今回のライブアルバム。2枚組となった作品は、1枚目は、ここ数年のライブ音源から選りすぐった、ライブベスト。もう1枚は、直近のオリジナルアルバム「MASTERPIECE」をライブでまるごと再現したアルバムになっています。
このライブベストを聴くと、やはりエレカシというバンドにおける、宮本浩次の存在の大きさをあらためて感じます。荒々しく、時として観客を煽るようなボーカルは、その存在だけでも「ロック」と言えるほど迫力があり、耳に突き刺さります。
特にDISC2。「MASTERPIECE」は正直、オリジナルアルバムだとちょっと地味、という印象がありました。しかし、宮本浩次のパワフルなボーカルを前面に押し出したライブ盤は、原曲よりも、より力強さが現れており、オリジナルアルバムでは物足りなかったインパクトがあらわれていました。むしろ、オリジナルアルバムよりライブ盤の方がお薦めかも。
でも、彼の魅力は、そんなロックボーカリスト的な部分だけではありません。むしろ、今回のベスト盤で印象に残ったのは、ユーミンの「翳りゆく部屋」や沢田研二の「サムライ」のカバー。ロックではなく、むしろ歌謡曲の範疇に近い楽曲を、彼が声量あるボーカルで情感たっぷりに歌い上げています。勢いだけではなく、ボーカリストとしての基礎体力も十分持っていることも実感できました。いや、下手したら、ロック系の曲よりも、こういうタイプの曲の方が、彼の魅力が出ていたかも??
ライブ盤としては、バンドの演奏はおとなしめで、そういう点でもワンマンという印象を受けるのかもしれません。ただ逆に、一歩間違えると暴走してそのままどこかに行ってしまいそうな宮本浩次を、なんとか押しとどめているのは、この「常識的」なほかのバンドメンバーがいるからこそ?そういう意味では、このエレカシは、宮本浩次のワンマンでありながらも、おそらくバンド形態ではなくてはやっていけない、そういう不思議なバンドなんでしょうね。
そんな訳で、ボーカリスト宮本浩次の実力をいやというほと感じることが出来たライブ盤。下手したら、オリジナルアルバムよりも、お薦めできるアルバムかも。エレカシ、なにげにまだライブを一度も見たことないんだよなぁ。そんな私でも、一度彼らのライブを見たくなってしまうアルバムでした。
評価:★★★★★
エレファントカシマシ 過去の作品
STARTING OVER
昇れる太陽
エレカシ自選作品集EPIC 創世記
エレカシ自選作品集PONY CANYON 浪漫記
エレカシ自選作品集EMI 胎動記
悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~
MASTERPIECE
THE BEST 2007-2012 俺たちの明日
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