どこまでも熱く
Title:BREAK MY SILENCE
Musician:高橋優
いまの時代、というよりも、ここ10年くらいずっとかもしれませんが、「理想論」を熱く語る人に対して、冷めた現実を語ることがカッコいいという風潮があるように感じます。特にネット上ではその傾向が強く、例えれば、純粋にLove&Peaceを語っても、せせら笑われるような雰囲気すら感じます。
しかし、そんな中、高橋優はひたすら熱い!!メジャーデビューアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」こそ、その尖った牙を隠していましたが、続く「この声」「僕らの平成ロックンロール(2)」では、叫び声は大きくなり、そして本作。タイトルや、いかにもなジャケット写真の通りに、ひたすら熱い高橋優の姿が本作にはありました。
特に序盤から、その熱さは炸裂し、彼の生きた時代を語る、自己紹介的な「ジェネレーションY」からスタート。続く「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」は、叫び声を上げろと鼓舞するような、社会派的な歌詞が大きなインパクト。
凶器も戦闘機も備え放題 エグい画像アップしたらハイ御終い?
50基の核発電所 年に5000回揺れる列島
人間でなく二次元が元気なこの国の居心地はどう
(「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」より 作詞 高橋優)
など、かなり皮肉たっぷりの歌詞が並んでいます。
個人的に、特に彼らしいなぁ、と感じたのが「同じ空の下」で、
「夢は叶うよ さぁ歩み続けよう やがて時は満ちてく
いけるところまでいこう
同じ空の下で」
(「同じ空の下」より 作詞 高橋優)
と、平凡な自分を抱えたままの前向きな力強さを感じる曲。「夢は叶うよ」と簡単に言ってしまうところが最近のJ-POP風かと思いきや、「いけるところまでいこう」という、あくまでも弱い自分をみとめたままのような表現に、彼ららしさを感じます。
他に、秋田出身の彼らしい、秋田弁を取り入れた「泣ぐ子はいねが」なんかもインパクトがありましたが、今回のアルバムで一番インパクトがあったのが「CANDY」でした。ポップな雰囲気のタイトルとは全く逆の、「いじめ」をテーマとした歌詞。その内容にリアリティーがあけに、聴いていて痛々しいものがありました。
そんなアルバムを通して叫びつづけた彼の作品。ここ最近、これだけ自己主張の激しいシンガーも少ないだけに、彼の主張は頼もしくも感じます。ただ、その一方で、このアルバム、熱いを通してちょっと暑苦しく感じる部分も(笑)。アルバム全体「押し」一辺倒で、その点、箸休めのような、ちょっと引いた歌詞があれば、もっとよかったのかも。その点だけはちょっと残念だったのですが、それを差し引いても、非常に心に響くアルバムだったと思います。醒めた視点がカッコいいといわれそうな今だからこそ、これからもがんばってほしいシンガーです。
評価:★★★★★
高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
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