« フェラ・クティの遺志を継ぎ | トップページ | 意欲作である2作目 »

2013年7月 1日 (月)

「みんなのうた」カバーが絶品

Title:RADIO ONSEN EUTOPIA
Musician:やくしまるえつこ

相対性理論で人気を博し、様々なミュージシャンとのコラボレーションでも活躍している、相対性理論のボーカル、やくしまるえつこのソロアルバム。今回のアルバムで大きな特徴は一発録りであうということ。NHK-FM「やくしまるえつこ“みんなのクリスマスセッション"」での音源も収録され、スタジオ録音ならではの緊張感を覚える作品に仕上がっています。

ちなみに、スタジオ録音でのアルバムとはいえ、いままで発表したシングル曲も多く収録されており、アルバム発売を待ち望んだファンにとってはうれしい内容になっているのではないでしょうか。

ただ、これらのオリジナル曲に関しては、悪くはないけど・・・というのが正直な感想。基本的には相対性理論の延長線上のような曲調なのですが、初期相対性理論のような、記号化されたようなユーモラスな歌詞はなく、やくしまるえつこにあわせたような無機質っぽいメロディーは悪くはないけれど、相対性理論とあわせて聴くと、正直ちょっと飽きてきたかも・・・。

しかし、これらのオリジナルをおぎなって余りある出来の良さだったのがカバー曲。それも、NHK-FMでのセッションだったというのが大きな理由なのかもしれませんが、「恋するニワトリ」「メトロポリタン美術館」などのNHK「みんなのうた」のカバーが実に絶品。思い出補正の部分もあるのかもしれませんが、「みんなのうた」らしいポップで暖かい曲調と、やくしまるえつこのウィスパーボイスが意外とマッチして、絶妙なカバーに仕上がっていました。

彼女のボーカルといえば、そのウィスパーボイスから、無機質なイメージが強く、相対性理論にしても彼女のソロ曲にしても、そのボーカルにあわせたような無機質な雰囲気の曲が多いのですが、今回のアルバムを聴いて、実はむしろ「みんなのうた」みたいな暖かい雰囲気を持った曲の方が、彼女のボーカルに合うのでは?という感触すら抱いてしまいました。

また、彼女のボーカルも、ライブ録音ではっきりしたのですが、ウィスパーボイスながらもしっかりと芯のあるボーカルで、安定感があります。多くのミュージシャンに好かれ、コラボの相手とされる理由は、この意外といったら失礼なのですが、歌の上手さにあるんだろなぁ、ということも感じました。

楽曲自体の出来よりも、やくしまるえつこのボーカリストとしての実力を実感できたアルバム。個人的には、ソロ作では、相対性理論の延長のような曲よりも、「みんなのうた」みたいな、暖かみのある曲を歌ってほしいなぁ、ということを感じたソロ作でした。この経験、相対性理論の活動にはどのように生きるのでしょうか?今後も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

あなたと見た夢 君のいない朝/柴田淳

前作では、70年代の歌謡曲カバーに挑戦した彼女。結果、傑作のカバーアルバムがリリースされました。今回の作品はその影響ということなのでしょうか、全編、その70年代の歌謡曲からの影響を強く感じられるような、哀愁たっぷりに聴かせるナンバーになっていました。ただ、その結果、和風なメロでしんみり聴かせるという、似たようなパターンの曲の連続。1曲1曲は悪くないのですが、アルバムを通して聴くと、正直、単調な仕上がりになっていたように感じます。ちょっと残念な作品でした。

評価:★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's

|

« フェラ・クティの遺志を継ぎ | トップページ | 意欲作である2作目 »

アルバムレビュー(邦楽)2013年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「みんなのうた」カバーが絶品:

« フェラ・クティの遺志を継ぎ | トップページ | 意欲作である2作目 »