美しい歌声に鳥肌
Title:いにしえのクロンチョン
Musician:NETTY
先日、「インドネシア音楽歴史物語」という、インドネシアの代表的大衆音楽であるクロンチョンの歴史を紹介したアルバムを、ここで取り上げました。そのレーベルで続いてリリースされたのは、クロンチョンの代表的ミュージシャンである、ネティという女性シンガーの曲をまとめた企画盤でした。
ただ彼女、ネティは、附属のブックレットによると、50年代後半には、国民的歌手として活躍していたようですが、残念ながら現在では、半ば「忘れられた歌手」になってしまっているみたいで、これだけまとまったCD化は、これがはじめて、ということだそうです。
「インドネシア音楽歴史物語」でクロンチョンという音楽にはじめて触れて、気に入ったのですが、今回のアルバムも、CDショップの試聴機でチラッと試聴し、なかなかよさげだったので、さっそく購入し、聴いてみました。
で、これが大ヒットでした!なんといっても、このアルバムの最大の魅力は、ネティのボーカルだと思います。非常にクリアで美しいボーカルながらも、声量があり、芯の強いボーカルは、聴いていて、ゾクゾクと鳥肌が立つほどすばらしいボーカルでした。彼女の、この歌声を聴くだけでも、このアルバムの価値はあるかと思います。「インドネシア音楽歴史物語」と、このアルバムを企画した、田中勝則氏によると「ネティこそクロンチョンの最高の歌手」と語っていますが、その理由は十分すぎるほど納得できる魅了的な歌声。これだけでも是非聴いてみてください!
もちろん楽曲自体も、「インドネシア音楽歴史物語」で知ったクロンチョンの魅力満載。いわば歌謡曲がムード歌謡曲あるいは演歌として様式化する前、戦後直ぐの歌謡曲をイメージさせるような音楽。洋楽の要素をたくみに取り入れつつ、インドネシア本来の大衆音楽の魅力もそのまま残したようなポップスは、どこか人なつっこさを感じさせます。
ただ、「インドネシア音楽歴史物語」で取り上げていたクロンチョンからは、ラテンやジャズ、ハワイアン、ロックなどの多彩な要素が感じられましたが、このアルバムに関しては、さほどバラエティーは感じられず、わずかにハワイアンの要素が入った曲がチラホラ。そういう意味では、正直、ちょっと似たタイプの曲が多かったのも事実です。
しかし、そういう似たタイプの曲でも全く飽きさせないのが、ネティのボーカリストとしての魅力でしょう。実際、70分を超える長さのアルバムなのですが、全く飽きることなく、最後まで彼女の歌声に聞き惚れたアルバムでした。
22ページのブックレットで、楽曲について解説もされており、読み応えもたっぷり。ただ、ちょっと残念だったのは、ネティが、現在ご存命なのか否か(1929年産まれということなので、ご存命ならば85歳。十分、ご存命の可能性もあるのですが)、また、50年代後半、国民的歌手だった彼女が、なぜ今は忘れられた歌手になってしまったのか、そこらへんの説明がいまひとつ不明だったのが残念。ネットで調べてもいまひとつわからなかったし・・・。
評価:★★★★★
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