現実を生きること
Title:Stranger
Musician:星野源
昨年12月、くも膜下出血を発症し、活動を休止。その容態が心配されたものの、無事復帰を果たした星野源の待望のニューアルバムがリリースされました。
基本的に、いつもの通り、アコースティック主体のサウンドの、暖かい雰囲気の曲調が特徴的。目新しさというものはないかもしれませんが、安定感があり、なにより、決して派手ではないものの、しっかりと心に染み入ってくるようなメロディーが大きな魅力となっています。
そして彼のもうひとつ大きな魅力はその歌詞の世界。現実世界にしっかりと立脚して、日常風景を歌うスタイルは以前からの彼と同じ。ただ、今回の作品は、その「現実を生きる」というテーマが、より強く感じられました。それはやはり、病気から復帰してきたからこそ、「今」の大切さを実感したから・・・というのは安易な解釈でしょうか?
例えば、そのままストレートに「働け」と歌う「ワークソング」なんかは、まさにそんな「現実」に立脚した楽曲(「定時まで」とエクスキューズを入れているのがちょっとユニークですが)。また、タイトルそのもの「夢の外へ」なども
「ドアの外へ連れてって
ただ笑う声を聞かせて
この世は光 映してるだけ」
(「夢の外へ」より 作詞 星野源)
と、「今」を生きる喜びを歌っているのが印象的。また、「生まれ変わり」では、「生まれ変わりなんてない」と歌いながら、
「決してもう二度と戻らぬ日が
いつまでも輝けばいいな
何度も何度も見上げた背中はもう
前を向いたまま
前を 前を向いたまま」
(「生まれ変わり」より 作詞 星野源)
現実の中で前を向いていくことを歌っています。
かと思えば、「知らない」では
「物語つづく 絶望のそばで
温もりが消えるその時まで」
(「知らない」より 作詞 星野源)
と、楽しいことと同時に苦しいことも多い現実を、でも死ぬまで生きていかなければいけない、と歌っています。
もともとから、日常を歌っていた彼らですが、死線をさまよい、生きることの重要性を悟った今だからこそ、こういう歌詞になったのでしょうか。ただ、とはいって、決して仰々しく生きることを歌っているわけではありません。あくまでもいつもの星野源の作風の中で、さりげなく生きることの楽しさ、そして苦しさを歌っている、そんなアルバムでした。
・・・・・・・・・ということを書いた直後に、予後があまりよくないようで、治療に専念するために、再度活動休止を発表しました。非常に心配なのですが、ここはゆっくりと治療に専念し、また、元気な姿を見せてください!
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
21st CENTURY ROCK BAND/ストレイテナー
今年でメジャーデビュー10年となるオルタナ系ギターロックバンドの、メジャーデビュー後初となるベストアルバム。ヘヴィーなギターサウンドに対して、メロディーは意外とポップで聴きやすいのが特徴的。ただ、初期の作品に関してはメロディーはインパクトもあるのですが、最近の作品になると、バンドサウンドが前に出すぎて、メロディーはちょっと薄味に。結果、いまひとつインパクトが薄くなってしまったように思います。また、ベストに収録された曲に関しては、決してバリエーション豊富なわけではなく、似たタイプの曲が多いのは残念な感じ。
評価:★★★★
ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
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