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2013年6月21日 (金)

ゆらゆら帝国の歩み

Title:SINGLES 1998-2002
Musician:ゆらゆら帝国

2000年代の日本のロックシーンにおいて、絶大な支持を得たロックバンド、ゆらゆら帝国。2010年に惜しまれつつ解散した彼らですが、このたび、ベスト盤がリリースされました。といっても、オールタイムベストではなく、かつて所属していたミディ時代のシングル曲を集めたベスト盤。レコード会社を移籍したミュージシャンによくありがちな、移籍前のレコード会社に残った音源で、お小遣い稼ぎにリリースされる例のアレですね。

そういう意味では、ファンにとっては賛否両論ありそう。ただし、現時点では入手困難なシングルを、カップリングを含めて全曲収録というのは、やはりファンにとってはありがたいのでは。特に「彼女のサソリ」など、シングル以外では聴くことが出来ないような曲も収録されており、そういう意味でも、要チェックの1枚です。

また、それに加えて、ゆらゆら帝国の歩みがわかるベスト盤としても最適なアルバムのように感じました。シングル曲というと、どうしてもバンドのプロモーション目的も兼ねており、それだけではバンドの本来の姿がわからな、という部分も少なくありません。確かに、ゆらゆら帝国に関しても、シングル曲については、比較的「聴きやすい」曲が多いようにも感じます。

ただ、彼らの場合、シングル曲を並べて聴いただけでも、しっかりとゆらゆら帝国のその時その時の指向を強く感じさせます。特に、このミディ所属時期というのは、徐々にその音楽性をソリッドに追及していった時期になり、その変遷が、シングル曲にも如実にあらわれています。

デビュー直後や、このアルバムで言えば、1枚目に収録している曲については、ノイジーなギターサウンドをかきならす、ガレージロックバンドという側面が強くあらわれています。それが、2枚目になると、もっと音数がシンプルに、必要な音だけをつむぐような作品が目立ってきます。特に「3x3x3」は、そんな空間を生かした音づくりが特徴的。この、より空間を生かしたような音づくりは、さらにソニーへ移籍した後も続き、その究極の地としてたどりついたのは、歴史的名盤として名高い「空洞です」ということになるのでしょう。そういう意味でも、彼らが「空洞です」にたどりつく前の軌跡をたどるベスト盤とも言えるかもしれません。

また、2枚組とはいえ、2枚あわせて90分程度の長さ。ゆらゆら帝国をはじめて聴くための1枚としてもちょうどよい最適な長さになっており、そういう意味でもお薦めできるアルバムかもしれません。本当はオールタイムベストを・・・と言いたいところだけども、ゆらゆら帝国としての音は「空洞です」で完成しているだけに、下手なベスト盤をつくるよりも、こういうシングル集の方がいいのかなぁ、なんてことも考えたりして。ともかく、偉大なバンドの軌跡を追えるという意味でも、とりあえずチェックしておきたいベスト盤です。

評価:★★★★★

ゆらゆら帝国 過去の作品
空洞です
REMIX 2005-2008


ほかに聴いたアルバム

シンガーソングライター/坂本真綾

坂本真綾の新作は、タイトル通り、全曲みずから作詞作曲にいどんだ意欲作。ご存知の通り、彼女はいままで菅野よう子をはじめ、様々な優れたライターから楽曲提供を受けていました。今回は、そんな作家陣の手を離れて、自らの手で楽曲をつくっています。ただ、基本的には、ここ最近の彼女の延長線上な雰囲気。爽やかでソフトなポップス路線となっています。SSWに挑戦した1作目としては十分な出来かも。ただ、彼女だけの個性という点では薄く、まだまだ成長の余地は大きそう。とはいえ、今回の経験を糧に、今後、再び外部の作家を入れるかSSWを続けるのか、どちらにしろ大きな期待はもてそうな作品でした。

評価:★★★★

坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルクレクション+ ミツバチ

トーマの心臓/トーマ

ボカロ系プロデューサーとして、人気を博し、このアルバムではベスト10ヒットを記録したトーマのアルバム。ハードロックの影響を強く受けた、ギターサウンドを軸としたサウンドは、ロックリスナーにも聴きやすい反面、打ち込みを多く導入した結果、かなりゴチャゴチャした音に仕上がってしまっています。ボカロのボーカルゆえの歌詞の聴き取りにくさも、ボカロ系でよくありがち。独自の世界観を構築した上で、その上で展開する歌詞の世界は、こちらもボカロ系プロデューサーらしく、強烈な個性を発揮しているのですが、音的にはもうちょっと交通整理した方がよかったかも。

評価:★★★

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