EDM旋風の中で
Title:RANDOM ACCESS MEMORIES
Musician:DAFT PUNK
ここ最近、EDMという言葉をよく耳にするのではないでしょうか。エレクトロニック・ダンス・ミュージックの略。その名前の通り、電子音によるダンスミュージック。ここ最近、このEDMがすっかりブームになってしまっています。
で、このEDMの流れ、よくよく考えると、おそらくそのスタートのひとつが、彼ら、DAFT PUNKのヒット。2001年のアルバム「Discovery」は日本でも大ヒットを記録しましたが、このアルバムや、松本零士によるPVが日本でも話題になった「One More Time」の大ヒットが、間違いなく、今に続くEDMブームの源流のひとつ、と言えるでしょう。
しかし、当の本人たちはそんなブームはどこ吹く風。雑誌のインタビューでも「誰かDJの略かと思った」なんてコメントを残しています。そしてそんなEDMブームの中で発表された新作は、そんなブームを鼻で笑うかのような、いわば格の違いを感じさせる作品でした。
今回のアルバムで流れてきた曲を聴いて、かつての彼らのようなエレクトロを想像すると、かなり驚いたのではないでしょうか。今回のアルバムは、ストレートに70年代のディスコサウンドに大きな影響を受けたサウンド。いや、影響を受けたどころか、当時のディスコブームの中心にいたシックのギタリスト、ナイル・ロジャースも参加しており、「影響」どころか、まんま70年代のディスコサウンドを、現代によみがえらせています。
それを「懐古趣味」と言ってしまうのはたやすいでしょう。でも、今回のアルバムは聴いていると、とてもワクワクしてくるというのか、楽しくなってしまうそんなアルバムでした。決して、いままでの彼らの曲のようにアゲアゲのダンスチューンで踊れるナンバーではありません。ただ、ストレートでメロウなポップソングと、心地よいファンキーなリズムの楽曲は、まさにポップミュージックの楽しさを体現化しているように感じます。そして、この聴いた時にワクワクしてくる感覚は、まさにかつて「One More Time」をはじめて聴いた時と一緒・・・。そういう意味では、楽曲の雰囲気は変わっても、根本のところではDAFT PUNKは全く変わっていないのではないでしょうか。
そんな懐かしさを感じるアルバムである反面、同時にある種の新しさも感じるのも大きな特徴。ファレル・ウッィリアムスのように、まさに現代のプロデューサーも参加している今回のアルバムは、エフェクトのかかったボーカルを用いたり、あるいはベースやドラムスのリズムを強調したり、アレンジに関してはかなり今風な部分も多く、その点では、かつてのディスコサウンドに、現代の調味料を加えた作品と言えるのかもしれません。
また、EMD全盛期の中、生音主体という点も大きな特徴のひとつ。ダンサナブルなディスコサウンドながらも、どこか暖かさを感じさせる音になっています。
結果、意図していたかどうかは別として、EDMブームに対するDAFT PUNKからの回答のようになった今回のアルバム。そういう意味では、おそらくこの作品がリリースされたことで、EDMブームの大きな岐路になったでしょうし、また大きな意味を持つ作品だったと思います。
聴き始めると、そのポップなメロとファンクなリズムが楽しくて、ついつい聴き入ってしまう、そんなアルバム。おそらく、今年を代表する1枚にもなりそう・・・。ダンスミュージック好き、特に懐かしいディスコサウンドが好きな方には必聴。ポップミュージックフリークにもお薦めです。
評価:★★★★★
DAFT PUNK 過去の作品
TRON:Legacy
ほかに聴いたアルバム
Visions/Grimes
かなり奇抜なジャケットですが・・・Grimesは、カナダはバンクーバーを拠点に活動している、女性ソロミュージシャン、クレア・バウチャーのソロプロジェクト。この作品は大きな話題となり、2012年のベストアルバムにも多く選出されていました。
甲高い女性ボーカルに、アバンギャルドなエレクトロポップが特徴的なアルバム。いわゆる宅録系のミュージシャンなのですが、宅録らしい、自由度の高いサウンドが特徴的です。ちょっと幻想的で、不思議ちゃん的な様相も強く、そのキャラも含めて、今度が楽しみなミュージシャンです。
評価:★★★★★
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