東京の風景
Title:オレらは肉の歩く朝
Musician:前野健太
最近、話題のシンガーソングライター、前野健太の4枚目となるオリジナルアルバム。前野健太、という名前は、前作「ファックミー」も話題になっただけに、もちろん知っていたのですが、音を聴くのは、このアルバムが全くもってはじめてでした。
正直言えば、彼のアルバムは期待半分といった感じでした。ちょっと奇妙なアルバムタイトルといい、素直なポップソングではなく、もっと実験的な作風の曲を書くシンガー、そう勝手に思いこんでいたからです。
ただ、そのイメージは全くもって誤りでした。むしろ、ポップで人なつっこいメロディーを書いており、その楽曲からは難解さは感じられません。1曲目「国歌コーラン節」から、「コカ・コーラ」と掛けたユニークな歌詞で描く日常風景は、非常に馴染みやすいものでした。
楽曲的には、基本的にフォーキーな作風が特徴的。イメージとしては、かつてジョイントツアーも行ったことあるそうですが、曽我部恵一に近いかもしれません。日常を描くという視点も、曽我部恵一に似たものがあるかも。まだ「東京の空」や「東京2011」のような、東京の生活をストレートにテーマにした曲が多く、人の多い東京という大都会の片隅で、どこか孤独さを抱えながら生きる人たちの姿を感じました。
また、その歌詞の世界はどこかユーモラスであり、加えて、どこか赤裸々、露骨な内容が多いように感じます。例えばタイトルチューン「オレらは肉の歩く朝」は、非常に爽やかな雰囲気ながらもエロを暗喩させるような歌詞が特徴的ですし、いきなり「父親の遺産を使って初めてピンサロ行った」という歌詞からスタートする「あんな夏」に、さらにラストはそのまま「女を買いに行こう」・・・。ある意味、男性のダークな側面も、そのままストレートに歌詞にしています。
そんな赤裸々な歌詞が、少々アングラ臭も感じられそうで、メロディーがポップで、歌詞と反して爽やかな雰囲気のため、そんなことは感じられません。パッと聴いたら、爽やかなポップソングと・・・・・・さすがに思わないか(^^;;ここらへんの歌詞は少々好き嫌いがわかれそうですが、こういうストレートな歌詞を、さらりと歌える点が、彼の大きな魅力なんでしょう。
今回の作品は、ジム・オルークプロデュースということで、少々サイケな作風の曲もあったりするのですが、総じてポップで、ユーモラスで、そしてその歌詞の風景に、どこか共感できる、そんな内容のアルバムだったと思います。正直、予想していた以上の傑作でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
未来大人宣言/SOPHIA
今年4月からのツアーで、活動休止を宣言したSOPHIAの、活動休止前最後となるオリジナルアルバム。うーん、「サヨナラ 愛しのピーターパンシンドローム」みたいに、メロディーセンスの良さは相変わらずながらも、特にこれといった特徴もないポップスロックが並んでいる感じで、勢いのなさというか、惰性でリリースしたアルバムといった感じ。なんとなく、活動休止の理由がわかるそうな気もする、少々煮え切らないアルバムでした。
評価:★★★
SOPHIA 過去の作品
2007
BAND AGE
15
ALL SINGLES 「A」
ALL-B SIDE 「B」
QUEENS,DANKE SCHON PAPA!/HiGE
ガレージロック風のバンドサウンドをベースに、ポップなメロディーや、サイケな雰囲気のアレンジが、まるで楽しいおもちゃ箱のような、ワクワクするようなポップソングを聴かせてくれます。まあ、彼ららしい楽しいロックンロールサウンドは健在。ただ、聴いていて楽しいけども、似たような雰囲気の曲が多いような・・・。
評価:★★★★
HiGE 過去の作品
Chaos in Apple
テキーラ!テキーラ!the BEST
サンシャイン
それではみなさん良い旅を!
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