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2013年4月30日 (火)

オーバー30にもアピールできるミュージシャン

Title:BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002-
Musician:スガシカオ

Title:BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-
Musician:スガシカオ

「音楽不況」、そう言われて久しい状況が日本では続いています。単なるCDが売れない、というだけなら、CDから配信へのパラダイム・シフトという説明がつきますが、CDのみならず、配信もいまひとつ盛り上がらない現状。「CD」と称した「握手券」「イベントチケット」の売上で、なんとかレコード会社が維持されている、そんな状態が久しく続いています。

レコード会社は、その理由を異様に違法配信に求めているみたいですが、私はなんてことない、いままでCD購買層の大半を占めていた10代後半から20代前半の若者人口が減ったことが最大の理由だと思っています。

思えば80年代あたりから、ヒット曲は極端に若者向けにシフトし、その上の世代が聴いていたような「歌謡曲」が姿を消しました。そのヒット曲の若者向け志向は、10代から20代の人口が大きく減った現在でも続いており、逆に、30代、40代あたりが聴けるようなヒット曲が極端に少なくなってしまっているように思います。むしろ90年代のメガヒットを支えた、団塊ジュニア世代が、30代後半から40代に差し掛かっている今こそ、この世代向けの音楽にヒットポテンシャルがあると思うにも関わらず。

2011年にオフィス・オーガスタを独立したスガシカオのいままでの活動を総括するベスト盤を聴きながらそういうことを思ったのは、まさにスガシカオが、そういう30代から40代世代に対してアピールするにはもってこいの楽曲を書いているから。ファンクやソウルミュージックの影響を強く受けた彼の作品は、ベタな歌謡曲とは違うバタ臭さを感じる一方で、ちょっとビターな雰囲気のミディアムテンポな楽曲が多いため、落ち着いて聴くことが出来ます。

また、30代40代世代のアピールできると考えた大きな要素は歌詞。いわゆるFUNKY MONKEY BABYSみたいな根拠のない前向きソングでも、SEKAI NO OWARIみたいな中2病ソングでもなく、地に足をつけた歌詞が、やはり年齢なりのものを感じます。また、「サナギ」「19才」のようなエロチックな歌詞が要所要所に見えるにも魅力的。まさに「大人のラブソング」といった感じでしょう。

ただ、その上で魅力的なのは彼のメロディーセンス。ファンキーなリズムや歌詞もさることながら、その向こうで流れている彼の書くメロディーは、「美メロ」という表現すら出来てしまいそうなメロディアスなもの。曲によっては、哀愁あるメロディーが、日本的。いい意味での歌謡曲的な部分も感じ、洋楽テイストのリズムやサウンドが流れる中、しっかり日本のポップスに仕上げています。

今回のベスト盤は、それぞれ2枚組で計4枚というフルボリューム。年代にわけて2作品となっていますが、正直なところ、初期と最近の作品に、それほど大きな差はありません。さすがにデビュー作「ヒットチャートをかけぬけろ」は、歌い方に若さを感じるのですが、初期の作品と最近の作品をシャッフルしても、ファンではなければ気がつかなさそう。それだけ、初期の作品から、完成度の高い曲をつくっていた、ということでしょう。

フルボリュームながらも魅力的な作品がたくさんで、最後まで楽しんで聴くことが出来ました。これからの時代、こういうオーバー30にもアピールできるようなミュージシャンを、もっと売り込めばいいのになぁ、ということを感じます。

ただ一方、初心者向けとしては、この2枚組×2=CD4枚というのはちょっとボリュームがありすぎ・・・。最近、CDが売れないためか、ベストで3枚組とか普通にリリースして、その分、値段は高めに、というケースが少なくありませんが、入門盤としてアピールするには、初心者でも手軽に聴けるボリューム、せいぜい2枚組くらいがベストだと思うんですけどね。

評価:★★★★★

スガシカオ 過去の作品
ALL LIVE BEST
FUNKAHOLiC
FUNKASTiC
SugarlessII

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