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2013年3月30日 (土)

アカデミー賞授賞の話題作!

Sugarman

話題のドキュメンタリー映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」。各種メディアでも話題作として取り上げられてきましたが、名古屋でも先日、公開されたので、さっそく映画館で見てきました。

この映画は、アメリカで70年はじめに大物シンガーとして期待されデビューした、ロドリゲスというミュージシャンについてのドキュメンタリーです。このロドリゲスというシンガー、ボブディランとも比較されそうな、社会派なフォークソングを歌うシンガーソングライターなのですが、アメリカではさっぱり売れず、完全に「忘れ去られたシンガー」になっていました。

しかし、彼のアルバムがなぜか南アフリカにわたり、大ヒット。南アフリカでは、当時、アパルトヘイト政策を行っており、国内的にも、政策に反対する言論を(白人も含めて)封じ込んでいたのですが、そのアパルトヘイト政策に意義を唱える若者に大きな影響を与えたそうです。

しかし、アメリカでも無名の彼は、南アフリカでも実態は全くの謎につつまれており、ステージ上で拳銃自殺したなんて噂も語られていました。物語は、そんな「死んだ」と思われていたロドリゲスの実態を、南アフリカの音楽ジャーナリストが探るところからはじまります。

・・・・・・ということで、これ以上の感想を書こうと思うと、どうしてもネタバレになってしまいます。かつ、このドキュメンタリー、是非、これ以上の情報はなしで見てほしい!とにかく、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門を授賞した話題作であり、私も、このドキュメンタリーで感動しました!それだけの感想になってしまいますが、本当に素晴らしい音楽ドキュメンタリーだったので、興味がある方は是非。

以下、ネタバレの感想です。

この映画、この手のドキュメンタリー映画にありがちな、関係者のインタビューをバストアップで映し、物語を進めていく展開。そのインタビューの間にロドリゲスの曲が流れるという、シンプルな構成になっています。

ただ、序盤の、ロドリゲスがいかに素晴らしかったか、というインタビューからはじまり、南アフリカでのヒット、ロドリゲスの発見に、そしてクライマックスの南アフリカツアーに至るまで、非常にドラマ性があり、ドキュメンタリーというよりも、物語のように楽しむことが出来ます。

かつ、展開をシンプルにまとめているため、見終わった後も、ロドリゲスに関してはどこかミステリアスな印象が残るのがユニーク。ロドリゲス本人へのインタビューもあったものの、短いものであり、途中で謎として提示されている、レコードの名義がバラバラである話や、印税の行方、また、アメリカで売れなかった理由などもさほど突っ込むこともありません。

このドキュメンタリーで、私が一番印象に残ったのは、ロドリゲスの「発見」のエピソードでも、南アフリカでのライブツアーのエピソードでもなく、後半語られる彼の生き様。肉体労働の日雇いで、最低限の生活費をコツコツと稼ぐ彼の生き方は、南アフリカでの人気を聞かせれても全くぶれることがありません。コンサートの収入は、ほとんど家族や友人にゆずってしまい、ツアーが終わったら、またアメリカでの生活に戻って、日々の暮らしのためにコツコツと一労働者として働くスタンスを続けています。

一方では、社会に対して物申す態度は強かったようで、市長や市議会議員選挙に何度も立候補していたようで、また、映画では紹介されていませんでしたが、10年かけて、大学で哲学の単位を獲得したとか。こういう一労働者としての立場から、社会に対して強い関心を示す態度は、劇中で流れてくる彼の歌にも強く反映されていました。

こういう、ぶれることのない彼の強い信念、生き様には強い共感を得るとともに、この映画の中で最も印象に残るエピソードでした。もっとも、このある種のガッツキのなさが、彼の曲が売れなかった理由のひとつかもしれませんが(^^;;

80分程度の長さもちょうどよかったし、本当に強い印象に残る素晴らしいドキュメンタリー映画だったと思います。思わず帰りに、この映画でつかわれたロドリゲスの曲をおさめたサントラ盤も買ってしまいました(笑)。また聴いていないのですが・・・サントラ盤の感想は、近日中に!

余談

・この映画で別の意味で印象に残ったのがアパルトヘイト制度が、黒人のみならず、言論に規制をくわえることで、白人の自由も奪っていたという点。ちょっと意外な印象でした。

・ロドリゲスが出馬したデトロイトの市議選のシーン。数人の議員に対して出馬が百名以上。日本とは、政治に対する市民のスタンスが全く違うように感じました。

・映画だと、南アフリカのみで人気が出たように描写されていますが、英語版Wikipediaを見る限り、オーストラリアでも一時期人気があったようですね。アルバム「Cold Fact」は、オーストラリアチャートで23位を記録しているみたいです。オーストラリアツアーも行ったようで、「再起をかけたツアーが全く客が入らず、失望してステージ上で自殺」という噂も、このオーストラリアツアーがベースとなっているのかもしれません。

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