新生代のギターヒーロー
Title:Black&Blue
Musician:Gary Clark Jr.
ギターヒーロー、そんな言葉は死語になりつつあります。かつて、ロック、いやポピュラーミュージック全体で見ても花形であったギタリストというポジション、今でも確かに目立つポジションであることは間違いありませんが、その立場はかつてに比べれば相対的に低くなっています。その代わり、ベースやドラムスといったリズム楽器が徐々に花形のポジションを確保しつつあります。
そんな中、久しぶりに「ギタリスト」として大きな話題となったのが彼、Gary Clark Jr.。テキサス州はオースティン出身、若干28歳の彼。かのエリック・クラプトンが彼に注目し、シカゴのクロスロードフェスティバルに招いた上、ブラジルツアーのオープニングアクトに起用したことから、大きく注目が集まりました。ロック・フィールド以上に、ブルースフィールドからも注目を集めています。確かに、黒人が、ブルース調のロックを演るという意味で、白人がシーンの主役になっているブルース界の中では、やはりうれしくなってくる、ということなのでしょうか。
ただし、そんな彼の作品は、決してかつてのギターヒーローのように、ギターソロをこれでもか!という感じで聴かせる感じではありません。確かに、「When My Train Pulls in」のようにブルージーなギターソロが実に気持ちのよい、60年代から聴き続けているようなおやじロックファンにはうれしくなってくるような作品もあります。ただ、その一方で、「Ain't Messin 'Round」は、むしろオルタナロックの雰囲気が強いですし、「Blak and Blu」は、メロウな、むしろR&B色が強いナンバーに仕上げていました。
そういう意味では、彼自身、ギターヒーローとは、みたいな感じで型にはまることもなく、ブルースやハードロックから、今風のR&Bやオルタナティブまで、壁をつくることなく、自由に演奏しているのではないでしょうか。その結果、確かにこのアルバム、少々食い散らかした感じも否定できません。また、彼の音は斬新か、といわれると、それも微妙なのは否定できません。ただ、ジャンルに壁を作らない姿勢は、21世紀に生まれたギターヒーローとして、今後新たなケミストリーを産み出してくれそうな、そんな予感がしました。
また、こういう様々なジャンルを貪欲に取り込んだ楽曲は、昔ながらのロックリスナーよりも、むしろ若い世代のロックリスナーに受け入れられそう。オルタナティブな路線も、今のロックに聴きなれた耳には、実になじみやすいですし。
マイナスポイントも少なくない作品なのですが、一方で、次世代のギターヒーロー誕生には、今度の期待も否応なく高くなる、そんな作品だったと思います。評価は、そういう将来への期待を込めて。今年のフジロックに出演も決定したみたいで、苗場でどんなステージを見せてくれるのか・・・見てみたいなぁ~。
評価:★★★★★
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