HIP HOPに向き合った新作
Title:ダーティーサイエンス
Musician:RHYMESTER
先日、このアルバムを購入したら、招待券がついてきたので、はじめてRHYMESTERのライブに足を運んできました。わずか200名程度収容の、小さい箱だった、ということもあるのですが、そのアゲアゲなステージにすっかりはまってしまい、彼らの魅力を再認識してきました。
とにかく、そのライブでも感じたのですが、このアルバム、非常に聴く側の壺をついているんですよね。その時のライブでも演った「ゆめのしま」「スクリーム」、さらには「ダーティーサイエンス」のような、パーティーチューンをきちんと抑えつつ、「グラキャビ」みたいに、ちょっとしんみりとさせるような曲や、「ナイスミドル」みたいな、タイトル通り「大人」の雰囲気を混ぜてきたり、楽曲ごとにその雰囲気をかえつつも、きちんとRHYMESTERらしさを押さえた展開になっています。
前々作「マニフェスト」、前作「POP LIFE」が、どちらかというと、リリックをより楽しめ、(特に「マニフェスト」など、タイトル通りなのですが)彼らの「主張」がより前面に出ているアルバムに感じましたが、今回のアルバムは、それに対して、サンプリングを全面的に用いて、よりHIP HOPらしいアルバムになっていたようにも感じました。正直、聴いていて、決して「新しいスタイル」という感じではありません。ただ、セルフタイトル曲「ダーティーサイエンス」は、まさにHIP HOPの魅力を存分に綴ったリリックが特徴的であり、それをタイトルチューンとするあたり、よりHIP HOPというジャンルに前面から向き合った作品、と言えるかもしれません。
とはいえ、今回も彼ららしいユーモラスで、でも強い主張もしっかりと顕在。そちらの方面への期待にもキチンと応えています。「Deejay Deejay」では、
「ここは魂の休憩所 蹴散らせファックな風営法」
(作詞 Mummy-D、宇多丸 「Deejay Deejay」より)
と、ストレートに風営法を批判。さらにストレートなのは、タイトルそのままの「The Choice Is Yours」。
「選ぶのはキミだ キミだ 決めるのはキミだ キミだ
考えるのはキミだ 他の誰でもないんだ」
とストレートな歌詞が印象的なのですが、個人的に印象に残ったのは
「この世界はそんな単純じゃないんだ ラスボスはどこにもいないんだ
所詮カネか?誰かの陰謀か?そりゃ解り易いがそれだけじゃないな」
(以上 作詞 Mummy-D、宇多丸 「The Choice Is Yours」より)
という歌詞。例えば何か問題が起こると、すぐに誰かをすぐにスケープゴートにしたり、自分の都合が悪いことがおきると、すぐに陰謀論を唱えたり。そんな昨今、よくありがちな風潮を痛烈に批判しています。
決して悪い意味ではなく、RHYMESTERらしさを存分に感じられる、いい意味で安心して聴けるようなそんなアルバムだったと思います。もちろん、前々作、前作に続く、傑作アルバムという点でも間違いないでしょう。彼らの実力を存分に感じることが出来る作品です。
評価:★★★★★
RHYMESTER 過去の作品
マニフェスト
POP LIFE
フラッシュバック、夏。
ほかに聴いたアルバム
Cocoon/Chara
ロックからソウル、ポップにスカにと、様々なタイプの曲が展開する作風。それにも関わらず、アルバム全体にしっかりと統一感があるのは、やはり彼女の独特なボーカルゆえでしょうか?若干、様々なジャンルに手をつけすぎて、主軸がわかりにくくなってしまった部分もあるようにも思えるのがマイナスでしたが、Charaらしい魅力はきちんとアルバムを通じて感じられました。
評価:★★★★
CHARA 過去の作品
honey
kiss
CAROL
Very Special
Dark Candy
うたかた
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