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2013年3月10日 (日)

21世紀のマイブラ

Title:m b v
Musician:my bloody valentine

my bloody valentine。1988年「Isn't Anything」、1991年「loveless」、わずか2枚のアルバムが大きな衝撃を与え、「シューゲイザー」と呼ばれる数多くのフォロワーバンドが世に誕生しました。しかしその後、彼らの活動は沈黙。一種の伝説的なバンドになりました。しかし、その後も彼らの音楽は、多くのバンドに多大な影響を与え続け、今に至っています。

そして、そんな彼らがが2008年に突然のバンド活動再開。その年の7月にはフジロックのために来日も果たしています。その後も、「Isn't Anything」「loveless」のリマスター盤のリリースや、再度の来日公演のニュースがあるなど、徐々に活動を本格化させていきます。

そんな中、突然のニュースとして飛び込んできたのが、今回のニューアルバムのリリース。それも、1月28日のライブの中で、突然「2、3日中に新作を発表するかもしれない」というMCがあり、さらに2月2日に、「本日中に新譜を発表する」というアナウンス、そしてダウンロード版の発売と、CD版の予約受付という、22年ぶりという待ちに待った新譜が、いきなりリリースされたという点に、ファンもビックリした方が多かったのではないでしょうか。

そんな21世紀に発売されたmy bloody valentineの新譜。まず、大きな興味として沸いたのが、マイブラのメインライターであるケヴィン・シールズが、あくまで「loveless」の延長線上の音を出してくるのか、それとも、「loveless」とは関係なく、2013年のマイブラの音を出してくるのか、という点でした。

結果として、このアルバムでまず耳に飛び込んできたのは、「loveless」の延長線上にある音でした。楽曲を塗りつぶすかのような、甘いフィードバックノイズに、その向こうで鳴っているケヴィンやビリンダのボーカルに、ポップなメロディーライン。この内容に関しては、正直、個人的には最初少々ガッカリしてしまいました。というのも、やはりマイブラには、「loveless」の次の展開を期待していたからです。

しかし、聴き進めて行くうちに、そんな屁理屈は関係なく、マイブラの魅力にドップリとはまり込んでしまいました。とにかく、これでもかというほどの美しく甘いギターのフィードバックノイズ、その向こうで鳴っている、これまたポップなメロディーライン。彼らが作り出す幻想的な世界観は、あれだけフォロワーの出てきた21世紀の今となっても、圧倒的な存在感を作り出しており、マイブラのすごさをあらためて実感しました。

ただ、そんな「loveless」の延長線上だった音が、後半になると徐々に変わっていきます。特に7曲目「in another way」から先。「in another way」ではギターのノイズが後ろに下がり、むしろドラムのリズムが目立つような構成になっており、続く「nothing is」も、ドラムとギターが重なり、ミニマル風に展開していく構成は、以前のマイブラでは見られなかったようなタイプ。特にラスト「wonder 2」では、ギターノイズがこれでもかというほど押し出されている反面、ドラムのリズムが、細かいリズムを刻んでおり、いかにも今風。あきらかに「loveless」の次を意識した楽曲が並んでいました。

まさに「loveless」からスタートし、21世紀のマイブラの音へと繋げるように展開しているアルバム。なんとなく、ケヴィンの中では次のアルバムの構成が、ほぼ固まっていて、そのアルバムと、「loveless」をつなぐ内容として、今回のアルバムをリリースしてきたのでは?と都合よく解釈できちゃいそうなアルバム(笑)。実際、今回のアルバム、例えば「who sees you」の出だしなど、まるっくり「loveless」収録の「Only Shallow」の出だしと一緒ですし、「loveless」を意識したことは明確のように感じました。91年のマイブラと2013年のマイブラの橋渡し、このアルバムはそういう位置付けだったのではないでしょうか。

ただ、そういう意図は別として、1枚のアルバムとしても実に魅力的な作品に仕上がっていた今回のアルバム。幻想的なサウンドとポップなメロディーというバランス感覚が絶妙で、このバランス感覚が、いまだに他のマイブラフォロワーから圧倒的な位置にいる大きな理由のように感じました。間違いなく、今年を代表する1枚。DL版は高音質のハイレゾ版のリリースもあるので、それで音に拘るのもよし、あくまでもCDリリースを待つもよし。是非ともチェックしておいてほしい1枚です。

評価:★★★★★

my bloody valentine 過去の作品
EP's 1988-1991


ほかに聴いたアルバム

RED/TAYLOR SWIFT

アメリカでは絶大な人気を誇るカントリーシンガー、TAYLOR SWIFTの最新作。カントリー、とはいっても、前作同様、いかにもカントリーらしいという曲は少なく、どちらかというと、普通のガールズポップといった感覚で聴ける曲ばかり。新鮮味という観点では、よくありがちなポップスではあるのですが、比較的多くの方に、無難に薦められそうなポップソングが並んでいます。

評価:★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS

push and shove/no doubt

こちらも、90年代後半から、2000年代前半にアメリカで絶大な支持を得ていたスカパンクバンド、no doubt。2004年からそれぞれのソロ活動に移行し、バンドとしての活動は休止していましたが、このたび活動を再開。11年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

彼女たちの絶頂期って、ちょうど私が洋楽を聴きはじめた頃なだけに、no doubtという名前は、すごく懐かしいなぁ・・・という感じで、久々にアルバムを聴いてみました。で、軽快なポップスは相変わらず。シンセも多く導入し、軽快なサウンドが印象的。ただ、スカの要素は少なめで、メロも「あれ?こんな感じだったっけ?」といった感じでインパクトも薄く、ちょっと捉えどころがない感じ・・・。正直、ちょっと期待はずれだったかも・・・。

評価:★★★

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