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2013年2月23日 (土)

カバーアルバム3枚

今回は、カバーアルバム3枚をほぼ同時期に聴いたので、同時に感想をアップ。もちろん、相互に影響されたリリース、ではありませんが・・・。

Title:渋彩歌謡大全
Musician:渋さ知らズ

まずは渋さ知らズによる、日本のポップスのカバーアルバム。渋さ知らズといえば、大所帯で奏でる、圧巻の音の世界が特徴的なジャズバンドですが、基本的にそのスタイルは、このカバーでも貫かれています。

ちょっと意外な選曲の「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」も、基本、その渋さ路線が貫かれたインストに仕上げており、原曲のイメージとかなり異なりユニーク。まさに人力YMOというべき「RYDEEN」のカバーも、その出来映えはともかくとして、一聴の価値ありのユニークなカバーに仕上がっています。

ただ、基本的に歌詞とメロディーを聴かせる歌謡曲のカバーに、確かに演奏が後ろに回っている曲も少なくないものの、渋さのようなアバンギャルドな演奏はちょっとクドイようにも感じられました。そんな中、一番彼らの演奏とマッチしていたのは、最後の「君は答えよ」。あの「伝説のおかま」として知られる同性愛者の活動家、東郷健が歌った曲で、社会派ながらもかなりエグく、かつ猥雑な歌詞が特徴的。それが渋さのアングラ感満載の演奏とピッタリマッチしていて、絶妙な名カバーに仕上がっています。

おなじみの曲も多いだけに、聴きやすい内容でしたが、渋さとマッチしているか、といわれるとちょっと微妙な部分もあったカバーアルバム。まあ、これはこれでおもしろいかも。

評価:★★★★

渋さ知らズ 過去の作品
渋栗(川口義之with栗コーダーカルテット&渋さ知らズオーケストラ)
生渋栗(川口義之with栗コーダーカルテット&渋さ知らズオーケストラ)
割れ渋栗(川口義之with渋さ知らズオーケストラ)

渋夜旅

そして、同じ「歌謡曲」メインでも、こちらは対極的にシンプルなアレンジが特徴。

Title:COVER 70's
Musician:柴田淳

こちらはシバジュンのカバーアルバムで、タイトル通り、70年代の歌謡曲のカバー。彼女が小さい頃に慣れ親しんだような曲がメインとなるカバーで、初回盤のジャケットは、彼女の幼児の頃の写真が使われているのですが、まさにその頃に親が歌って、慣れ親しんだ曲、ということでしょう。

基本的に、原曲のイメージを重視したシンプルなアレンジになっています。ただ、一番魅力的だったのは、やはりシバジュンのボーカルそれ自体。憂いをひめた彼女のボーカルが、これがおもしろいほど歌謡曲やフォークソングの雰囲気にマッチ。絶妙で、かつ味わいのあるカバーに仕上がっています。

特に「青春の影」「東京」のように、原曲が男性ボーカルの曲については、より哀愁ただようノスタルジーを感じるようなカバーになっており、味わい深さが増した感じに。女性ボーカルの曲についても「異邦人」などは、シバジュンのボーカルが曲のイメージにピッタリ合っていて、驚くほど。原曲の良さを再認識すると共に、ボーカリスト柴田淳の魅力も存分に感じられるカバーアルバムになっていました。

インタビューでは、「カバーミュージシャンになるつもりはない」みたいな話をしていましたし、やはりカバーよりもオリジナルが聴きたいのですが、これだけ歌謡曲の雰囲気に彼女のボーカルが合うのなら、機会があれば、またカバーアルバムを聴きたいなぁ。実に魅力的な、カバーアルバムの逸品でした。

評価:★★★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来

そして最後は、こちらは洋楽。映画音楽のカバーアルバムです。

Title:My Favorite Songs~うたの木シネマ~
Musician:渡辺美里

いままでも「うたの木」と題して、何枚かのカバーアルバムをリリースしている彼女。今回は、タイトル通り、映画音楽をカバーしています。

正直言えば、渡辺美里の「うたの木」シリーズ。いままでの作品は、名カバーからはほど遠いものでした。一番の理由は彼女の歌唱力の問題。確かに彼女、声量はあります。音程もしっかり取れています。ただ、歌い方が、全体的にのべっとした平坦な歌い方をしていて、単調。彼女は一般的に「歌が上手い」といわれ続けてきましたが、声量や音感の良さに、少々頼りすぎてしまっているきらいがあるように感じました。

それだけに今回のカバーアルバムも期待はしていなかったのですが、今回のアルバムに関しては、その単調な歌い方がグッと良くなっているように感じました。しんみりと、感情を込めて噛み締めるような丁寧なカバーが多く、ボーカリストとしての魅力を感じることが出来るカバーが多く収録されているように感じました。

もっとも、原曲に対して、彼女なりの新しい解釈は希薄で、新たな発見みたいなものはなかったのは残念なのですが・・・とはいえ、あまり期待していなかったアルバムだったのですが、思ったよりは良いアルバムだったと思います。ボーカリストとして、一歩前進した、そんなカバーアルバムでした。

評価:★★★★

渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity

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