ワーキングクラスのヒーロー
Title:JAKE BUGG
Musician:JAKE BUGG
昨年、イギリスでデビューし、大きな話題を集めたシンガーソングライター。あのノエル・ギャラガーが絶賛し、自らのツアーのオープニングアクトに起用した他、再結成したストーン・ローゼズのオープニングアクトにも起用されて話題を集めています。
若干18歳の彼。そして、このデビューアルバムも、イギリスのアルバムチャート1位になるなど、人気も十分獲得してきています。
ノエル・ギャラガーは、彼のことを「ボブ・ディラン meets アークティック・モンキーズ」と評したそうですが、音楽的には、まさにそのコメントの通り。特に冒頭を飾る「Lightning Bolt」など、しゃがれた声に、かき鳴らすアコギの音は、おそらく多くの方がボブ・ディランを思い起こしたのではないでしょうか。
前半は、その「アークティック・モンキーズ」というコメントから彷彿とさせるような、ガレージロック風の楽曲が多く、これが、彼の若さから来るような粋がったボーカルや、かき鳴らすアコギの音にもピッタリ。フォーキーでオールドスタイルの荒っぽい音づくりになっていて、インパクトは十分。確かに、懐かしいという部分もあるのですが、それ以上に荒っぽい音が、リアリティーのある若者の叫びという部分を上手く演出しています。
後半は、フォーキーで聴かせるミディアムテンポの曲が多く、ロックという側面は少々後退気味。そういう意味では物足りなさを感じる側面は否定できません。ただ、しっかりと聴かせてくるメロのセンスの良さはひかっており、メロディーメイカーとしてのミュージシャンの基礎体力を彼が十分持っていることをうかがわせます。
そして、JAKE BUGGの大きな魅力は、その歌詞でしょう。「ワーキングクラスのヒーロー」という呼ばれ方もしていますが、やはりそれはその歌詞の内容故。ここらへん、日本人だとストレートに伝わってこないのが残念なのですが・・・。
歌詞の内容は、ワーキングクラスで生きる若者たちの日常と、その中での強烈な上昇志向。例えば、冒頭の「Lightning Bolt」では
「They say you gotta toe the line
They want the water not the wine
But when I see signs
I'll jump on that lightning bolt」
(訳 規則に従えと彼らは言う。
彼らがほしいのはワインではんく水。
しかし、兆しを感じたら、俺はあのイナズマに飛び乗るよ)
(Written by Jake Bugg/Iain Archer 「Lightning Bolt」より)
と歌ったり、「TROUBLE DOWN」でも
「Stuck in speed bump city
Where the only thing that's pretty
Is the though of gettin' out」
(訳 スピードバンプ(車の減速のために道路に設けられた段差)だらけの街から抜け出せない。
ここで心地よい唯一のことは、ここから出ることを考えることさ)
(Written by Jake Bugg/Iain Archer 「Trouble Down」より)
と、かなり明確な上昇志向を歌っています。こういう現実の中でもがき、その中から抜け出そうという姿は、まあ、昔からありふれたネタといえばネタなのですが、非常に共感できる内容ではないでしょうか。
彼は「Xファクター出身のカスどもをチャートから追い出すことこそが使命」というビックマウスぶりでも話題を呼んでいるそうですが、こういう粋がった若者こそが新しい時代をつくるんだよなぁ、と思っちゃうのは、逆に私がオヤジだから??日本でもさぁ、「アイドルどもとチャートから追い出すことこそ使命」くらいのこと、言っちゃうくらいのバンドやシンガーがあらわれてもいいと思うんだけどね。
楽曲のタイプ的には、正直、今のままだと長く続くというタイプじゃないかもしれませんが、18歳の年に、この1枚をリリースしただけでも十分意義のある作品だと思います。ただ、メロディーの良さといい、今後、長く続くだけの実力も十分なシンガーに感じます。今の「若者の粋がった叫び」がどのように変化していくかを含めて、今後が楽しみなシンガーです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
爆発ライブ~渋谷編/GREEN DAY
昨年は、「UNO!」「DOS!」「TRE!」という3枚のアルバムを続けてリリースしましたが、この3枚のアルバムを国内盤で購入するとシリアルコードが封入されており、それを3つ集めると、ダウンロードできるのが、このライブ音源。昨年8月にSHIBUYA-AXで行われたライブの模様を収録した音源で、収録曲は
- Stop When The Red Lights Flas
- Carpe Diem
- Kill The DJ
- 99 Revolutions
の4曲。原曲よりも、よりヘヴィーになった印象があり、ライブならではの迫力ある音が魅力的。バンドとしてのパワーも感じます。たった4曲とはいえ、ファンならチェックしておきたい音源。アルバム3枚を購入した方なら、もうダウンロード済みだとは思うのですが・・・2月末までの特典なので残りあとわずか。まだの方は急げ!
評価:★★★★★
GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown
AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)
UNO!
DOS!
TRE!
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コメント
はじめまして。いつも音楽を探す参考にさせて頂いています。
>こういう粋がった若者こそが新しい時代をつくるんだよなぁ、と思っちゃうのは、逆に私がオヤジだから??
なんとなく関連するかと思ったので勝手に紹介します。
↓
http://regista13.blog.fc2.com/blog-entry-50.html
「ロック」を崇拝し「アイドル」を侮蔑する人々
http://regista13.blog.fc2.com/blog-entry-47.html
「洋楽離れ」と「ビール離れ」の話
投稿: | 2013年3月 4日 (月) 00時42分
はじめまして。書き込みどうもありがとうございます。できれば、ハンドルネームを入れていただけるとうれしいです。
紹介していただいたブログ、拝見しました。内容については、賛同半分、反対半分といった感じでしょうか。
ただ、JAKE BUGGに関して私が思ったのは、メインストリームに中指立てて、そんなシーンを変えてやろうという意気込みが、今の若いミュージシャンたちにほしいなぁ、ということです。確かに、アイドルポップにも優れた曲がたくさんあることは事実なのですが、リスナーならともかく、ミュージシャンが、そういうメインストリームを無条件で肯定してしまうのって、それじゃあ世の中は変わっていかないのでは?と思ってしまいます。言っていることが中2病的で、痛くても、いまのヒットシーンのメインストリームであるアイドル系にいどみかかるような勢いのあるミュージシャンの方が、見ていて気持ちいいし、そういうミュージシャンが、閉塞感のある今の日本の音楽シーンを変えるのではないでしょうか。
そういう意味で、イギリスにいけるJAKE BUGGのようなちょっと痛いかもしれないけど粋がった若いシンガーが出てきたというのは、うらやましさも感じます。
投稿: ゆういち | 2013年3月 5日 (火) 00時41分
ハンドルネーム無しでの投稿失礼しました。
そして返事ありがとうございます。
賛同半分、反対半分ですか、なるほど。
私があのブログを呼んで思ったのは中途半端に噛み付いても上手くいかないだろうなと(ブログ内でツイートを載せられた人たちのような感じに)、そしてどうやれば実現できるのかが想像できなかったんですよね。少なくとも日本でロック側の人たちが言うと閉じた世界からの発言のようにとられてしまうのでは、と。
今回のエントリーを読んだ際にあのブログを思い出して、どう思うかなと勝手に載せさせていただきました。
これからも更新楽しみにしてます。
ありがとうございました。
投稿: セブン | 2013年3月 6日 (水) 00時35分
>セブンさん
すいません、お返事が遅くなりました。
なるほど確かに、紹介していただいたブログでの取り扱いのようにされる可能性も高いのですが、それでも個人的には、少々「痛い」発言でも、ネット上で揶揄されても、どんどん粋がった発言をしていけばよい、と思います。
どうも昨今のネットって、ああいう発言をシニカルに取り上げたり、一見正論っぽい意見ばかりがチヤホヤされる傾向にありますが、そんなネットなんて無視して、どんどんと発言したいことを発言すればいいのになぁ、と思います。
そんな発言をしている場も、Twitterというネットだろう、というつっこみは無しな方向で(笑)。まあ、Twitterなんて場所でチマチマ言うよりも、もっと自分の曲の中で、とか、テレビや雑誌で(・・・は難しいか?)とかでどんどん粋がった発言をしていって欲しいなぁ、なんてことも思ったりして。
投稿: ゆういち | 2013年3月26日 (火) 00時19分