心ゆさぶられる
Title:DISCOVER NEW JAPAN 民謡ニューウェーブ VOL.1
ここ最近、日本の昔からの音楽に興味を持ってきました。そういう心境に至った経緯は大きくふたつ。ひとつはご存知ソウルフラワーユニオン。日本の土着の音楽やリズムを、その楽曲に積極的に取り入れている彼らの音楽から、民謡の持つリズムの楽しさをはじめて知りました。もうひとつはワールドミュージックからの流れ。欧米だけではなく、世界各地の音楽に興味を持つうち、じゃあ、我々日本のルーツミュージックはどうなんだ?という疑問に至りました。
そんな日本のルーツミュージックへの興味を持つミュージシャンは最近増えているようで、今回、おもしろいオムニバスアルバムがリリースされました。その名も「DISCOVER NEW JAPAN 民謡ニューウェーブ VOL.1」。音楽ライターでDJの大石始氏監修によるアルバムで、自身の楽曲に、日本の民謡の要素を取り入れた曲、あるいは、日本の民謡を、自分なりのアレンジで歌ったような曲などが収録されており、いずれも、今のミュージシャンによる、日本のルーツミュージックの解釈が、とてもユニークな内容に仕上がっています。
で、その解釈の方法として、大きく2つのスタンスを取るミュージシャンが目立ちました。ひとつは祭り囃子のリズムを取り込み、ライブ志向の楽曲をつくってくる方法、そしてもうひとつは、民謡に、テクノやポストロックなどのアレンジを実験的に加え、過去と現在の融合を図る方法。個人的に、特にユニークだったのは、後者の方法を取るミュージシャンだったように思います。
例えば、昨年、「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」でもライブを堪能した、OKIの「hup tare dub」。アイヌの民族楽器、トンコリの音色が非常に幻想的で、その中で静かに歌う、おそらく老女の歌い手との対比が、斬新さを感じました。
他に耳を惹いたのは二羽高次×ヨシダダイキチの「会津磐梯山」。「おはら庄助さん なんで身上つぶした」のフレーズは、おそらく誰もが知っているおなじみの民謡ですが、これにシタールの音色をかぶせる手法がとてもユニーク。こちらも、日本民謡ながらもどこかエキゾチックな、実に不思議な曲に仕上がっていました。
一方、祭り囃子を生かしたアップテンポな曲も、心踊る曲が多く、文句なしで楽しめるものの、例えば、ソウルフラワーユニオンなどと比べると、ちょっと物足りなさを感じる側面も。なにが物足りないのかなぁ・・・と思ったのですが、おそらく、祭り囃子のビートを前面に押し出しすぎて、メロディーが後回しになっているような部分があるのでは?とも思ってしまいました。
ただ、アルバム全体としては、とても楽しい、心ワクワクするようなオムニバスだったと思います。それは、やはり日本人として・・・と言いたいところなのですが、もっと人としての根源的な部分で、身体がついつい反応するようなリズムやグルーヴが、ここには流れているから、ような気がしてしまいます。企画としては文句なしにおもしろかったオムニバス盤。「VOL.1」というタイトルからすると、「VOL.2」「VOL.3」もリリースされるのでしょうか。是非、今後とも、続けてほしい企画です。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
Do You Remember?/ザ50回転ズ
ザ50回転ズといえば、ガレージ風のサウンドをベースに、様々なタイプの曲を取り入れる点が大きな特徴ですが、今回のアルバムの特徴は、全面的にホーンセッションを取り入れた点。軽快なホーンの音色で、よりポップスさが増している感じが。その一方で、キャバレーロック風の「香港ブーガルー」、ラテンの要素を取り入れた「キャプテン・オブ・アメリカ」など、ゴッタなジャンルを取り入れ、いい意味での猥雑さは、相変わらず。
評価:★★★★
ザ50回転ズ 過去の作品
50回転ズのビックリ!!
ロックンロール世界旅行
ロックンロール・ラブレター
Beats for Daddy/DJ FUMIYA
RIP SLYMEのメンバーであり、トラックメイカーであるDJ FUMIYAのソロデビュー作。RIP SLYMEのファンならはまりそうな、「JYANAI?」をはじめ、ユーモラスなトラック、楽曲の連続で、RIP SLYMEのファンなら文句なくはまれそうですし、そうでなくても、DJ FUMIYAの実力を実感できる傑作に。アイドル風でコミカルな「LOVE JIGOKU」や、ボッサ風のギターでしんみり聴かせる「TOKYO LOVE STORY」など、バリエーションも豊富で、RIP SLYME以上に自由度があがった感じになっています。
評価:★★★★★
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