スリリングな3つの楽器の会話
Title:THREE
Musician:坂本龍一
坂本龍一の今回のニューアルバムは、彼の過去の楽曲を、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの三重奏にリアレンジしたセルフカバーアルバム。もともと、1996年に、「1996」と題された、同じ趣旨のアルバムをリリースし、大絶賛を得たらしいのですが、このアルバムは、いわば、それに続く形でのセルフカバーアルバムになっています。
そんな訳で、イメージとしては、かなり「クラッシック音楽」的な要素が強いアルバム。ただし、あくまでも坂本龍一の楽曲のセルフカバーであるため、聴き馴染みのある曲、あるいはどこかで聴いたことあるような曲が多く収録されています。また、ベースはポピュラーソングであるため、どの曲も4、5分、長くても7分程度の曲であるため、「クラシック音楽」と身構えることなく、気軽に聴くことが出来るアルバムに感じます。
また、その上でこのアルバム、世の中にありふれている「ポップのクラシックアレンジ」というアルバムとは明らかに一線を画するアルバムに感じました。その手のアルバムでよくありがちなのが、単なるバンドサウンドを弦楽器やオーケストラに置き換えただけ。また、いかにもオーケストラらしい壮大なアレンジを、どんな曲でも突っ込んできて、結果、仰々しいだけになっている、そういうアルバムが少なくありません。
このアルバムは、三重奏ということもあり、アレンジは非常にシンプル。むしろ空間を生かすようなアレンジになっているだけに、3つの楽器の間に、とてもスリリングな空気が流れているような印象を受けました。時には融和し、時には対抗するような、3つの楽器による演奏は、クラシックというよりも、むしろジャズやロックのアドリブみたいな緊張感を思わせる部分も。
良く知られている「Merry Christmas Mr.Lawrence」みたいな、BGM感覚でも聴けるような曲もあれば、一方では、「Nostalgia」のようなポストロック的な印象を受ける曲もあり、バリエーションも様々。最後まで耳の離せない展開を聴かせてくれます。
実は「1996」は聴いていないので、そちらとの比較でとやかく言うことは出来ないのですが、このアルバムも坂本龍一の才能がいかんなく発揮された傑作であることは間違いないと思います。いい意味で幅広いリスナー層も楽しめる作品だと思うので、是非。
評価:★★★★★
坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
ほかに聴いたアルバム
欲望/東京スカパラダイスオーケストラ
全編一発撮りで構成されたスカパラのニューアルバム。キャバレーロック風な、ビターな雰囲気漂うインストナンバーが多く、ポップな傾向が強かった、ここ最近のアルバムとは一線を画するような内容に。歌モノである、中納良恵の「黄昏を遊ぶ猫」や、ハナレグミの「太陽と心臓」も文句なしの名曲。ポップだけではない、と主張するような、スカパラ本領発揮を思わせる作品。ポップス志向になり、離れていってしまったかつてのファンもチェックしてみても損はないのでは?
評価:★★★★★
東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
オオカミ青年/藤巻亮太
現在、活動休止中のレミオロメンのメインボーカリストであり、メインライターのソロデビュー作。小林武史プロデュースになり、無駄に仰々しくなったレミオロメンと異なり(最後のアルバムはそうでもなかったのですが)、比較的シンプルな曲が多い雰囲気に。ただ、初期レミオロメンとも少々異なる印象があり、シンプルさを目指しながらも、無垢だった初期レミオロメンと違い、いろいろな音に色気が出てしまったというイメージか。悪くはないが、今後、彼が目指そうとしている方向性が少々見えてきていない感が。
評価:★★★★
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