今の日本の音楽シーン
Title:20112012
Musician:ヒャダイン
人気アイドルグループ、ももいろクローバーZへの楽曲提供などで大きな注目を集め、昨年は、雑誌「GQ」で「GQ Men of the Year 2012」を受賞するなど、話題を呼んだ、自身の音楽活動では「ヒャダイン」の名前で活躍している前山田健一のソロデビューアルバム。話題のミュージシャンということもあって、聴いてみました。
で、ももクロに提供したシングル曲を聴いて予想していた部分はあるのですが、はっきりいってしまうと、私にとってはちょっと厳しかった(苦笑)。CD2枚組のそれなりのボリュームがあるアルバムなのですが、通して聴くのがちょっと辛くなるような内容でした。
おそらく、その一番の理由は、楽曲が全体的に情報過多であるという点。これは、ももクロをシングルで聴いていても感じたのですが、ポップでエンタテイメント性あふれるつくりになっているのは間違いないものの、様々なアイディアがつめこまれていて、確かに、目くるめく展開が楽しめるということは楽しめるのですが、聴き終わって、どっぷり疲れてしまう、そんな印象を受けてしまいました。
これは多分、彼の音楽が良い悪いという話ではなく、純粋に私がこの手の音楽は少々苦手、という話。別の表現を借りれば、理屈っぽい。まあ、こんな理屈っぽいサイトをつくっているお前が言うな!という声が聴こえてきそうですが、自分が理屈っぽい人間なだけに、音楽は、むしろ理屈っぽいとちょっと疲れてしまうんですよね・・・。ただ、一方で、こういう音楽が、ここ最近の流れなのかなぁ、ということを感じたりもしました。
実は、この「情報過多」という話、私のオリジナルではなく、何の雑誌かは忘れてしまったのですが、先日、ももクロの音楽を評したコラムで見かけた話。そのコラムでは、最近のネット社会の中、こういう情報が多い音楽が受けているのでは、という結論だったのですが、私はむしろ、最近の音楽の流れなのかなぁ・・・ということを感じてしまいます。
というのも、80年代は、シンセのサウンドなどを取り入れた、華やかなサウンドが流行った反動で、90年代は、グランジロックのような、シンプルなロックサウンドが主流となりました。その結果、シンプルな音作りが良しとされていた風潮があったように感じます。ただ、2010年代に入り、またその流れが、様々な音を詰め込んだような、派手な曲調に戻ってきた、という、ひとつの流れを感じました。
ただ、彼の音づくりに関しては、自分が苦手で・・・という話なのですが、一方で、気になったのが歌詞の世界。「リア充ってこんなもんだっけ」あたりが典型なのですが、いわば2chをはじめとする、ネット世論を偏見も含め、そのまま歌詞にした内容。単純なエンタテイメントなんだから、ごちゃごちゃ言うものじゃない、という意見もありそうですが、ちょっとそういうネット世論を、批評的に取り入れるでもなく、もっと奥に突っ込むでもなく、そのまま取り上げるような歌詞には、違和感を覚えました。
うーん、単純に、好き嫌いの話になっちゃうのですが、やはり個人的には苦手だなぁ・・・。逆にももクロの曲が好きなら、素直にはまれるのかもしれませんが。ただ、良い悪いは別として、今の日本の音楽シーンでは、彼みたいなタイプの曲が、しばらくは主流になっていくのかもしれません。
評価:★★★
ほかに聴いたアルバム
Best Wishes/Ken Yokoyama
ハイスタとしても活動を再開した、横山健のソロアルバム。全英語詞のストレートなメロディアスパンクなのは相変わらず。基本的に、いつも通りの王道メロパンク路線といった感じだが、東日本大震災を受けてつくられた作品なだけに、愛する人を守れと歌う「You And I,Against The World」や、子供たちに恥じない国にしろと歌う「This Is Your Land」など、若者を奮い立たせるような曲が多いのが印象的。若干、内向きな気がしないでもない点が気にかかるのですが・・・。
評価:★★★★
Ken Yokoyama 過去の作品
Four
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コメント
はじめまして!
同世代で、音楽に対するスタンスも近いものを感じるので、ずっと以前からこちらのブログ愛読させていただいてます。
が、この1年でももクロにどっぷりハマってしまい、いわゆる音楽からだいぶ離れてしまっています・・・
そんな自分からみても、このヒャダイン評は納得ですね~
仰る通りの情報過多。でもそれが「ももクロ」というエンターテイメントにはぴったりだったりするのですよ。
とまあ、自分には完全にももクロフィルターがかかってしまってるわけですが、ROLLY・長谷川智樹作の最新曲「僕等のセンチュリー」は音楽好きにも是非一度聴いてみて欲しい楽曲です!
限定CDということもあり、フィルターを通してない冷静な視点での「音楽」としての評論はなかなか見あたらないものでして・・・
投稿: tnkn | 2013年1月24日 (木) 11時01分
>tnknさん
はじめまして。書き込みありがとうございます。ヒャダイン評にご賛同くださってありがとうございます。
「僕等のセンチュリー」機会があれば聞いてみますね。また、是非遊びに来てください!
投稿: ゆういち | 2013年2月 3日 (日) 22時14分