最初で最後のベスト盤
Title:GREEN GARDEN POP
Musician:YUI
Title:ORANGE GARDEN POP
Musician:YUI
昨年12月の紅白歌合戦を最後に、YUIとしての活動を休止した彼女の、「YUIとして最初で最後」となるベスト盤。「GREEN」「ORANGE」と、タイトルに色を含めて同時発売としたのは、ビートルズの「青盤」「赤盤」を意識したとか。
「GREEN」と「ORANGE」の2枚に、大きな違いはありません。ただ、あえて言えば、「GREEN」の方は、いかにも「若者の叫び」を意識したような曲が多く、逆に「ORANGE」は、もうちょっと素直な、等身大のラブソングが多かったような印象を受けました。
で、どうしても気になってしまうのは、その若者の代弁者的な彼女のスタイル。「My Generation」あたりが典型なのですが、いかにも尾崎豊を意識したようなスタイルがどうもに気になってしまいます。もっと上の世代が考えてそうな、「今時の若者像」的な歌詞は、ある意味わかりやすすぎるだけに、いまひとつリアリティーがなく、「言わされている」という感じすら受けてしまいます。
逆に、そんな若者の代弁者的な曲とは逆に、好感を持てたのが、特に「ORANGE」に多く収録されていた、素朴で素直なラブソング。こちらは素直な若者らしい、率直な気持ちと、リアリティーある描写が印象的で、変に気負った感じもなく、非常に好感の持てる内容になっていたと思います。
ここからは勝手な推測なのですが、今回の彼女の活動休止、実際には音楽活動は新年すぐに別名義で開始したとか。要するに、YUIとして求められている、若者の代弁者像が本当に歌いたい音楽とずれてきたから・・・そんなことをベスト盤から憶測してしまいます。もっとも、それに関するインタビューもほとんど読んでいないですし、あらたな活動で、どんな曲を歌ったのか、全くわからないので、この指摘は完全に的外れの可能性もあるのですが。
もうひとつちょっと気になったのは、彼女は比較的アコースティックギター1本をかかえて、シンプルな音を志向しているように感じるのですが、実際のアレンジに関しては、ストリングスなどもふんだんに入れて、悪い意味でもいかにもJ-POP的な仰々しい内容。ここらへん、彼女の本来の持ち味とのギャップが生じているようにも感じてしまいました。
いい曲も多いものの、一方では、いかにも売れることにターゲットを絞ったような曲づくりも目立つような印象を受けたベスト盤。そこらへんが今回の活動休止の大きな理由、なのかもしれません。ここらへん、再活動後にどのような曲をリリースしてくるのか、注目したいところです。
評価:
GREEN GARDEN POP ★★★★
ORANGE GARDEN POP ★★★★
YUI 過去の作品
I LOVED YESTERDAY
HOLIDAYS IN THE SUN
HOW CRAZY YOUR LOVE
ほかに聴いたアルバム
MELODY/清水翔太
J-POPの名曲を数多くカバーしたカバーアルバム。歌い方には癖がないので、シンプルなカバーになっています。そのため、彼が曲に新たな色をつけることにより、曲の新たな魅力を発見するようなことはないものの、一方で、もともとの曲を、メロと歌詞だけの丸裸の状況にすることにより、その曲のメロと歌詞の良さを再認識できるようなカバーも。典型的だったのは桑田佳祐の「白い恋人達」のカバーでした。逆に、中島みゆきの「化粧」のような曲もしっかりとカバーしている点、彼の歌唱力を再認識できる内容になっていました。
評価:★★★★★
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