実力は「バブル」にあらず。
Title:日本の恋と、ユーミンと。
Musician:松任谷由実
「日本の恋と」じゃなくて「バブルの恋と」じゃねーの・・・なんて揶揄も飛ばしたくなりそうな感じなのですが(笑)。2012年、大きな話題となった松任谷由実のオールタイムベストです。
今年は、同じベテランシンガーソングライターのベスト盤として、山下達郎のベストも大きな話題となりました。この2作、構成上、ひとつ大きな違いがありまして、山下達郎のベストが、作成順に並んでいるのに対して、ユーミンのベストは、アルバム全体としての流れを考えた構成になっています。
そのため、DISC1に関しては、おそらくもっともメロディーメイカーとしてのユーミンにスポットをあてた曲が並んでいたように感じます。特に序盤の曲に関しては、ユーミンといえばバブル経済と揶揄するような声を黙らせるような、美メロの連続。「卒業写真」なんて、あれだけシンプルなメロディーなのに、あれだけ泣かせるメロディーを書いちゃうあたり、とんでもない実力の持ち主だなぁ、と感じてしまいますし、その後の「Hello,my friend」への展開は神がかり的。その後の、ある意味、「バブル」のイメージに最もマッチしちゃいそうな「恋人はサンタクロース」へ1曲を挟んだだけで続けられてしまう構成にも、ビックリしてしまいました。
DISC2は、一方で「バブル経済」を彷彿とさせそうな、いわばユーミンのパブリックイメージにもマッチしたおしゃれな都会的なシティポップが並びます。もちろん、ここらへんの曲も名曲であることには変わりないと思うのですが、そんな中に挟まっている「翳りゆく部屋」の迫力には圧倒されてしまいます。
そして最後を締めくくるDISC3で、一番ユニークなのは、彼女の名を一気に高めた名曲「ひこうき雲」に続き、その「ひこうき雲」に強い影響を与えた、イギリスのロックバンド、プロコル・ハルムの「青い影」を、ユーミンが、本人たちと共演したカバーバージョンを収録されている点。この「青い影」を本人たちとカバーという点だけでも大きな話題なのですが、その「青い影」からの影響が顕著な「ひこうき雲」と並べちゃうあたり、彼女のすごい自信を感じました。
冒頭で書いた通り、すっかりバブル経済の象徴的なイメージがついてしまった彼女。確かに、曲によっては、「こういう時代もあったんだね」と感じてしまう曲もチラホラ。ただ、今回、調べてみたところ、彼女の最も売れた曲って、シングルは「真夏の夜の夢」で1993年、アルバムは「THE DANCING SUN」で1995年。いずれもバブル崩壊後というのは、ちょっと意外な感じが(もっとも、この時期は、CDのミリオンセラーが連発しており、音楽業界のみはバブル景気的な時代でしたが)。また、もちろん、バブル景気の象徴とだけ片付けられない魅力があるのも事実で、確かに一時期に比べれば、人気はかなり厳しい状況であるものの、根強いファンに支えられており、このアルバムもチャート1位を獲得するなど、ヒットを記録しており、彼女の実力は決してバブルではなかったことを証明しています。
通常盤で3枚組というフルボリュームですが、ある年代以上にとっては耳なじみのあるスタンダードナンバーが並んでいて、ユーミンの熱心なファンでなくても、非常に楽しめるアルバムだったと思います。彼女の実力を再認識するとともに、ちょっとノスタルジックな雰囲気も味わえるアルバムでした。
評価:★★★★★
松任谷由実 過去の作品
そしてもう一度夢見るだろう
Road Show
ほかに聴いたアルバム
A World Of Pandemonium/the HIATUS
今回のアルバムは、ハードな曲は少なめ。代わりに、ミディアムテンポのしっかりと聴かせるナンバーが多く、メロディーメイカーとしての実力も感じます。また、サウンドもアコースティックなサウンドに、打ち込みをからませたユニークな曲が多く、単なるパンクバンドではないという、彼らの主張が聴こえてくるような作品になっていました。
評価:★★★★★
the HIATUS 過去の作品
Trash We'd Love
ANOMARY
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2013年」カテゴリの記事
- 9年ぶりのオリジナル(2014.03.14)
- 削除クロース(笑)(2013.12.28)
- 音楽シーンへの憤りも感じる(2013.12.27)
- 脱EDM(2013.12.20)
- やさしくなりたい(2013.12.17)
コメント