私たちの身に染み付いたサウンド
Title:続、続々カワチモンド
先日のレビューで、最近は日本土着の音楽に興味がある、という話をしました。今回紹介するのは、その延長線上。また、例のごとくミュージック・マガジン誌のベストアルバム2012、ワールド・ミュージック編の10位にランクインしていたことから興味を持った作品。関西圏の伝統的な音頭である、河内音頭、あるいは江州音頭のレア音源、珍盤などを収録したオムニバスアルバム。2006年にリリースされた同趣旨のオムニバスアルバム「カワチモンド」の第2弾となります。
おそらく企画の趣旨としては、「音頭という、日本古来からのレア・グルーヴの魅力を見直そう」的な意図であろうと思います。ただ、聴いてみた感想として、率直なところ、イメージとしては、夏のシーズンに馴染みの深い盆踊り。夏になれば、よく公園からこういう祭りばやしが聴こえてくるよなぁ~といった感想を抱いてしまったというのが正直なところ。ただ、逆に言えば、それだけ日本人にとっては、身体に染み付いたリズムということなのでしょうが。
ただ、確かによくよく聴けば、特にその太鼓の奏でるビートや、三味線の響きにおもしろさを感じる曲も少なくありませんでした。解説にも「アフリカ音楽を連想させる」という言及が見られる「江州音頭唯丸節 浪速遊侠伝」や、「民謡ヤンレー節 鈴木主水」など、太鼓のリズムには、まさに「レア・グルーヴ」という呼び名がふさわしい、独特のグルーヴ感を感じられますし、「千両幟 VooDoo Ciranda」なども久保田真琴のリミックスが実にユニークに仕上がっています。
曲が、というよりも、あの勝新太郎が歌う「『悪名』河内音頭」は、勝新太郎の男らしさに男でも惚れてしまいそうな魅力が。「ソウル河内音頭」なんかは、ラップ風のボーカルまで入った、ソウルを勘違いしたようなサウンドなのですが、それが逆に歌謡曲らしい雑多さが出ていて、ユニークに仕上がっていました。
そんな聴きどころも多く、河内音頭の魅力が伝わる一方で、いかにも演歌然とした、様式化したド演歌の曲も多く収録されていました。これらの曲に関しては、「独特のビート」感も薄く、いまひとつ魅力を感じらず、いまひとつ、楽しむための壺が不明・・・正直、あまりおもしろみを感じられませんでした。
レア音源を集めたから、ということで、玉石混合だったのか、単純に、自分がその魅力をわからなかっただけなのか・・・アルバム全体を通じて、河内音頭にはまったか、といわれるとそこまではなかったけど、確かに魅力的な曲も少なくはなかったな、というのが感想。どちらかというと、実際に、盆踊りの会場で、これらの曲を聴きながら踊れば、もっと魅力をかんじられたのかも。ある意味、日本人にとって身近すぎるビートなのかなぁ、とも感じたアルバムでした。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
caldera/LA-PPISCH
80年代後半のバンドブームの代表格の一組で、「パヤパヤ」などの大ヒットで知られるロックバンド。スカをいち早く取り入れ、後のスカパンクバンドの先駆的なバンドとしても高い評価を得ています。2008年にメンバーの上田現が急逝した後は、ライブを中心に活動をしていたそうですが、デビュー25周年を機にリリースした記念盤がこちら。新曲2曲に、ライブなどでよく演奏される代表曲8曲を、今のメンバーで再録音した内容だそうです。
基本的に、明るく軽快なスカのサウンドを主軸に置いた曲が多く、ライブでよく演奏されるだけあって、祝祭色の強い曲がメイン。聴いていて、無条件でウキウキできるような楽しい曲が並んでいます。相変わらずの代表曲「パヤパヤ」が収録されている他、上田現が元ちとせに提供し大ヒットした「ワダツミの木」のセルフカバー、ファンに人気の高い「美代ちゃんのxxx」などなども収録。全体的には80年代的な雰囲気も漂う点も特徴的ながら、その点、少々新鮮味に欠ける部分も気になるところかも。
評価:★★★★
ガイガーカウンターカルチャー/アーバンギャルド
以前から、その独特な世界観が話題となっていた「テクノポップバンド」アーバンギャルドの新作。「テクノポップバンド」と鍵カッコつきなのは、本作では、ハードロック的な要素を強く入れて、テクノポップらしい、ピコピコポップが後ろに下がった感じがするから。ただ、テクノポップに留まらず、様々な音を入れたことにより、全体的に雑多さが増した感じが。歌詞も、いい意味で言えばクレバーさを感じられる、悪い意味で言えば、少々狙ったような感じの歌詞が印象的。でも、サウンドも歌詞も、ちょっと理屈っぽいんですよね。こういう理屈っぽいサイトをやっていてこういうのもなんなのですが(^^;;頭でっかちな感じが聴いていて疲れてしまいました。以前から、こういう傾向はあって、それもそれで魅力とは思っていたのですが、今回のアルバムは、許容範囲を若干超えてしまった感も。
評価:★★★
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