Title:wordwide
Musician:たむらぱん
「天才」という肩書がふさわしい、数少ないシンガー、たむらぱんのニューアルバム。ただ、前作「mitaina」がちょっといままでの勢いが止まっただけに、大丈夫か??と思ったのですが、本作は、「天才、復活!!」と言っても過言ではない傑作を産み出してくれました。
タイトルチューン「new world」も、爽やかでポップなメロディーながらも、微妙にひねってあって、これがまた癖になってユニークだったのですが、序盤の真骨頂とも言えるのが2曲目「おしごと」。ポップなメロディーなのに、途中から、どんどん変化していく展開が、いい意味で突飛すぎて、リスナーが置いてきぼりに(笑)。特に後半、オペラ風の作風は、下手すればQUEENを彷彿させるほど??にも関わらず、メロディーは至ってポップ。さらに、これを上回る「働くこと」に対して皮肉いっぱいに綴った歌詞も非常にユニーク。ともかく、たむらぱんの本領発揮!ともいえる傑作になっています。
他にもバリエーションが豊富だった今回のアルバム。「でんわ」では、エレクトロの要素を取り入れたり、「ヘニョリータ」では、ニューオリンズ風のハッピーなナンバー。「直球」というタイトルながらも、どこかメロディーがひねっているのも、おもしろいですし、逆に「ぼくの」なんかは、正統派なバラードナンバー。決してひねくれポップだけではなく、王道のポップチューンも、当たり前だけど書けるんですよ、と主張しているような名曲に仕上がっています。
そして、最後を飾るのが、このアルバムもうひとつの聴きどころ、「でもない」。なんと、Shing02が参加し、HIP HOPを取り入れた作品。トラックもHIP HOP的で、他のポップソングとは一線を画する、新たな可能性を感じます。人とのかかわりあいへの悩みをストレートに歌った歌詞も、とても印象的。単なる明るく楽しいだけのポップスソングとは明らかに異なる内容に、たむらぱんのミュージシャンとしての奥深さを感じる傑作でした。
バリエーションも増え、楽曲に奥行きを感じると同時に、アルバムを通して聴いた印象としては、ポップで明るい曲も多く、いい意味でのポピュラリティーもちゃんと兼ね備えた傑作。ちょっと物足りなさの残った前作から一転、たむらぱんとしての実力を存分に感じることが出来る作品になっていました。
正直、売上的には、売りどころを若干逃してしまった感は否めず、一時期ほどクローズアップされる機会も少なくなってしまった感も否めません。ただ、アルバム的には、間違いなく、「ノウニウノウン」「ナクナイ」に類する傑作だと思います。これだけのミュージシャンが、なぜいまひとつ、ブレイクできないのかが不思議であると同時に、残念に感じます・・・。
ポップス好きはもちろんのこと、ロックリスナーにも聴いてほしいなぁ。Shing02が参加している、という意味では、HIP HOP好きも要チェックって感じだし。そんなわけで、みなさん聴いてください!(笑)たむらぱんを「天才」と称する理由も実感できる作品だと思います。
評価:★★★★★
たむらぱん 過去の作品
ブタベスト
ノウニウノウン
ナクナイ
mitaina
ほかに聴いたアルバム
BABY ACID BABY/ART-SCHOOL
メンバーの宇野剛史と鈴木浩之が脱退し、2人組となったART-SCHOOLのフルアルバムとしては、3年ぶりとなるニューアルバム。序盤はへヴィーなガレージロック、中盤以降は不気味な雰囲気の曲が展開し、バリエーションは増えた印象が。ただ、いまひとつ、これといった核になるような曲がなく、物足りなさも感じる内容に。
評価:★★★★
ART-SCHOOL 過去の作品
Ghosts&Angels
ILLMATIC BABY
14 SOULS
Anesthesia
hacanatzkina/cruyff in the bedroom
いまや数少なくなった正統派なシューゲイザー系の後継者的バンド。楽曲全体を覆い尽くすようなホワイトノイズが心地よく、そこにポップなメロが絡む・・・というのが、いかにもシューゲイザー系といった感じで壺。ただ、メロディーに関しては、以前からJ-POPっぽく、いい意味でも悪い意味でもベタな部分があったのですが、本作は、メロに平凡さを感じ、それがちょっと悪い部分で気になってしまったかなぁ。
評価:★★★★
cruyff in the bedroom 過去の作品
Ukiyogunjou
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