郷愁感誘う
Title:LA BELLE EPOQUE VOLUME2(邦題 ラ・ベル・エポック 第2集)
Musician:ORCHESTRA BAOBAB
さて、今回紹介するのは、アフリカはセネガルの代表的なミュージシャン、オーケストラ・バオバブです。
オーケストラ・バオバブは、1970年、セネガルで活躍していた老舗バンド「スター・バンド・ド・ダガール」を脱退したメンバーによって結成されたバンド。「バオバブ」という、いかにもアフリカ的な名前は、その時、メンバーが在籍していた専属クラブの名前から取られたそうです。
60年代のセネガルの音楽シーンは、ラテン音楽一色。彼らが以前所属していた「スター・バンド」もそんなラテン音楽のバンドだったそうです。彼らもそんなラテン音楽やキューバ音楽の影響を強く受けながらも、西アフリカの伝統音楽の要素を加えて、独自の音楽性を確立していきます。その音楽性は、後にアフリカを代表する人気ミュージシャンとなるユッスー・ンドゥールにも大きな影響を与えたそうです。(ユッス・ンドゥールは、日本でも坂本龍一やドリカムの曲に参加したことがあり、また、ホンダ「Step Wagon」のCMで、ビートルズの「オブラディ・オブラダ」のカバーを歌っていたこともあります。)
70年代に一世を風靡した彼らですが、80年代になると新しい音楽であるンバラの台頭などもあり、徐々に人気を低迷。最後は、ンバラを取り入れようとするメンバーと、あくまでもラテンにこだわるメンバーが対立し、87年に解散してしまいます。しかし、99年ころから再結成に向けて動き出し、2002年には久々のアルバムをリリース。2007年にはもう1枚アルバムをリリースし、現在に至っています。(ちなみに彼ら、再結成後の2003年に、今年、私も足を運んだ、富山・南砺市のワールド・ミュージックのイベント「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」にも参加しています)
このアルバムは、そんな彼らの初期作品集とも言える作品。「ラ・ベル・エポック」というのは、「黄金時代」という意味なのですが、彼らの黄金時代ともいえる、70年代の録音が収録されています。ただ、「初期作品集」とはいえ、結成の段階で、既にプロの集団だった彼ら。既に、半ば完成された彼らの世界を聴くことが出来ます。
上にも書いた通り、基本的にはラテン音楽をそのスタート地点としている彼らの音楽。そのため、このアルバムに収録されている曲も、ラテンの色合いが濃く、とても哀愁あふれるナンバーが並んでいます。特に1枚目に収録されている「サマ・ホル・ブル・デム」などは、垢抜けたサウンドとメロディーは、アフリカ音楽に縁がない方でもなじみやすいかも。どこか郷愁を誘うメロディーは意外と日本人好みのような感じもします。この曲に限らず、例えば2枚目の冒頭を飾る「ンジャイ」などもそうでしたが、どこか憂いをひめたナンバーは、日本人にとっても懐かしさを感じるかもしれません。
また、「カブラル」などは、アフリカ音楽というよりも、南洋の楽園で流れてきそうなナンバー。結構垢抜けた雰囲気の曲も多く、アフリカ音楽のイメージとは異なる印象を受ける方も少なくないかもしれません。
ただ、それだけで、単なる「ラテン系バンド」として終わってしまわないところが大きな魅力。典型的なのは2枚目に収録されていた「ケレン・カティ・レーン」。まさにジェイムズ・ブラウン風のファンキーなリズムに、これぞブラックパワー!と心ウキウキ躍りだしたくなるナンバーになっています。他にも最後を飾る「リマレ・ンジャイ」など、アフリカの空気を感じられる曲があちらこちらに。そういう意味では、彼らの大きな特徴である、ラテン音楽と西アフリカの伝統音楽の融合が、このアルバムでも強く感じられますし、この独自性こそが、大きな魅力に感じられます。
70年代の初期作品集とはいえ、決してマニア向けの初期ベストという訳ではなく、むしろ「黄金時代」というタイトルにふわさしいベスト的な内容だったと思います。郷愁感誘うメロディーは、「ワールドミュージック」という枠組みを超えて意外と聴きやすいかも?ちなみに、一般的には82年のセッションの模様を収めた「PIRATES CHIOCE」というアルバムが、名盤としてよく紹介されているので、興味ある方はそちらから入るのがお薦めかも?
評価:★★★★★
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