電子音の向こうに感じる暖かさ
Title:UNTIL THE QUIET COMES
Musician:FLYING LOTUS
前作「Cosmogramma」が大きな注目を集めた、アメリカ出身のFLYING LOTUSによるニューアルバム。ジャンル的には、「コズミック・ヒップホップ」なる呼ばれ方をしているそうなのですが、美しいスペーシーな雰囲気のある、高音域の電子音のトラックに、重低音で静かに響くリズムの対比が印象的。いわばエレクトロニック・ミュージックの範疇に入る音楽ということになります。
ただ、スクエアなリズムに無機質さを感じるビートが特徴的なこの手のシーンの中、彼の音楽には大きな特色がありました。それは、楽曲の随所随所にブラックミュージック的な要素を感じる点。「TINY TORTURES」に流れるメロディーには、どこかジャジーな雰囲気を感じますし、「ONLY IF YOU WANNA」なども、ウッドベースの音色といい、ジャズの要素を感じられます。また、「UNTIL THE QUIET COMES」や「DMT SONG」ではトライバルなビートを響かせ、こちらはともすればアフリカンな雰囲気すら感じられます。
ご存知とは思いますが、もともとFLYING LOTUSことスティーヴン・エリソンは、ジャズの巨匠、ジョン・コルトレーンの叔父に持ち、アリス・コルトレーンを叔母に持つという家系。それだけに、その楽曲の中にジャズやブラックミュージックの影響を感じるのは当然なところ。前作でも、その影響は顕著でしたが、今回のアルバムでは、より、ブラックミュージックからの影響という彼の大きな特徴が、前面に出た作品のようにも感じました。
そのため、時として無機質で、非人間的にすら感じられる電子音楽ですが、彼の音楽には、一種独特の暖かさや人間らしさが感じられ、それが彼の音楽に厚みを与えていたように思います。スクエアなビートゆえに、ジャズやソウルあたりを好んで聴く人に、電子音楽というのは敬遠するジャンルかもしれませんが、このアルバムなら大丈夫かも??
評価:★★★★★
Flying Lotus 過去の作品
Cosmogramma
PATTERN+GRID WORLD
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2012年」カテゴリの記事
- 21世紀のシューゲイザーバンド(2013.01.06)
- 「今風」のR&Bなれども(2012.12.22)
- 今を生きるブルース(2012.12.18)
- ブレイク後の彼ら(2012.12.09)
- 天才、復活(2012.12.16)
コメント