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2012年11月24日 (土)

15年の集大成

Title:Best of GRAPEVINE
Musician:GRAPEVINE

今年、メジャーデビュー15周年を迎えたGRAPEVINEのベストアルバム。いままで、シングル集はリリースされているものの、純然たるベスト盤ははじめてのリリースとなります。

GRAPEVINEといえば、デビュー直後からずっと聴き続けており、アルバムも全部持っているミュージシャンの一組。それだけに、ほぼ15年近く聴き続けてきたわけですが、彼らほど、聴けば聴くほど味が出てくるミュージシャンも少ないのではないでしょうか。彼らはこの15年間、音楽性の芯となるような部分はほとんど変りありません。しかし、特に、デビュー直後の、私がまだ20代前半だったころの彼らに対する印象と、30代半ばになった今の彼らに対する印象では、微妙に異なってくるのがおもしろいところ。

例えば彼らの奏で出す黒いグルーヴ感は、デビュー直後も魅力的でしたが、ソウルやブルースなどを好んで聴くようになってから、その魅力に、さらにはまりこんでしまいました。田中和将の書く、歌詞のイメージも異なってきていて、以前は、文学的な歌詞に必死に深読みをしようと考えていたのですが、ここ最近では、むしろ歌詞の持つリズム感が曲にマッチしていて、曲と歌詞のバランスが絶妙でおもしろいなぁ、と思ったりして。

昔聴いていたミュージシャンに対する印象が、いろいろな音楽を聴くにつれ変ることも少なくありません。時として、昔あれだけはまっていたのに、つまんないなぁ、と感じたり、逆に、毛嫌いしていたのに、今となってはおもいろいミュージシャンだったんだなぁ、と感じたり。そういう意味ではGRAPEVINEというバンドは、様々な音楽を聴けば聴くほど、その深さにはまっていくような印象を受けました。

今回のベスト盤は、ファン投票により決められたそうですが、上位に入ってきた曲が収録されなかったり、逆に上位に入らなかった曲が収録されたりして、ファンの間で賛否を呼んでいるようです。実際、収録された曲は、比較的ポップス寄りの聴きやすい曲が多く、そういう意味では、ファン以外の層に向けた、入門編というコンセプトがあるのでしょう。まあ、でもそんなわかりにくい恣意的なことをするくらいなら、最初から2枚組のうち1枚がファン投票で、1枚がメンバーセレクトによる・・・とかした方がいいと思うんですけどね。

とはいえども、押さえておきたい代表曲はきちんと収録してあり、コアなファンからしてもれば、比較的あっさり風味なのかもしれませんが、GRAPEVINEとしてのバンドの魅力はしっかりと網羅されているベスト盤だと思います。2枚組というのは入門編としては少々ボリューミーなのですが、いままでGRAPEVINEというバンドを聴いたことない方にはお勧めしたい内容。どうもGRAPEVINEみたいなベテランだけども、「デビュー30年」とかいうほどの超ベテランではないバンドって、中途半端で、雑誌などで取り上げられにくい部分もあるので、これを機に、是非とも聴いてほしいなぁ。ソウルの影響を強く受けたどす黒いグルーヴがたまらないロックバンドですよ!THE BAWDIESあたりが好きなら、こちらも是非(ちょっとタイプは違うかもしれませんが・・・)

で、今回のアルバム、初回盤には「OUTCAST 2.0」という、2003年にリリースしたB面ベスト「OUTCAST」に続く、カップリング集が収録されており、アルバム未収録の曲がたくさん収録されているのですが、これの録音形態がPLAYBUTTONという形式。

Vibne_playbutton

↑こんな感じで、外見は普通の缶バッチ。中にメモリーが入っていて、音源が録音されているとか。一緒にUSBを通じて録音が出来るケーブルが入っていました。ちなみにヘッドフォンは別売り。

確かに音はいい感じなのですが、デメリットとして感じたのは大きくふたつ。ひとつは、外部媒体に録音する手法は一切ないこと。まあアナログ形態ではならイヤホンジャックを通じて録音できそうですが・・・。もうひとつは聴いていて、何曲目を聴いているのかわからなくなること。完全に新譜の場合はちょっと厳しくないか?どこかに小さなディスプレイで、曲順くらい表示できればいいと思うのですが。良くも悪くもファンズアイテムとして、例えばライブ会場のグッズのひとつとして売る、くらいしか、方法が思い浮かばないのですが・・・。

ただ、「OUTCAST 2.0」の中身自体は文句なし。シングルのカップリングなので、コアなファン以外は聴いたことない曲が並んでいるのですが、本来では少々物足りなさを感じた、GRAPEVINEのヘヴィーな側面を前面に押し出したような曲が並んでいます。出来れば、ある程度後でもいいので、CDでも発売してほしいな・・・。シングルまで全てチェックするほどではないファンにとっては、必ず入手しておきたい傑作です。

評価:★★★★★

GRAPEVINE 過去の作品
TWANGS
MALPASO(長田進withGRAPEVINE)
真昼のストレンジランド
MISOGI EP


ほかに聴いたアルバム

PUFFY COVERS

PUFFYの曲を、様々なミュージシャンがカバーしているオムニバス盤。セルフカバーがあったり、直接関係ないミュージシャンがカバーしていたり。参加しているのも奥田民生から、スピッツ、The Birthday、斉藤和義、the pillows・・・・と実力派そろい。おもしろいのは、どんな曲でもちゃんと、カバーしたそれぞれのミュージシャンの曲になってしまっているところ。ちょっと異色としては、グループ魂の「渚にまつわるエトセトラ」は、冒頭に例のごとくコントが入っていて、なんと本人まで出演(笑)。どの曲も名曲揃いですが、個人的にはフジファブリックによるセルフカバー「Bye Bye」は、既発表曲ですが、何度聴いても泣ける・・・。

評価:★★★★★

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