本音が炸裂する歌詞
Title:バンドやめろ
Musician:日本マドンナ
ここ最近の日本の「ロックバンド」は、どうも曲を聴いても雑誌のインタビューを読んでも、妙に社会に対して寛容というのか、誰かに気を使っているというのか、あまりにも丸くなりすぎている、と感じることが少なくありません。例えば、AKB48に対しても、あれだけその販売手法などに問題視されていながら、面と向かった批判はほとんどありません。昔だったら、「アイドルなんてぶっつぶしてやる」みたいなバンドが何組かいてもおかしくなかったような気がするんですが・・・。
今回の日本マドンナのメジャーデビューアルバムのタイトル曲が出来たきっかけも、そんな妙に優等生になってしまった日本の「ロック」シーンを象徴するような出来事で、なんでも、彼女たちの歌に対して、対バンしていたバンドのメンバーに「そんな歌を歌って親に申し訳ないと思わないの?」と言われたことがきっかけだとか。インタビューでもこのエピソードは繰り返し語っていますし、PVにもなっていますし、ライブのMCでも語っていましたし、よっぽどインパクトがあったんでしょうね。
この日本マドンナという、ミュージシャン名にもインパクトがある女の子3人組のパンクバンド、まさにそんないい子ちゃんばかりの「ロック」シーンの中で、かなりインパクトのある歌詞が話題になっています。この「バンドやめろ」ももちろんなのですが、軽薄なアイドルブームに疑問を投げかけるような「愛ドル」なんて曲があったり、このアルバムの収録曲ではないのですが、タイトルそのままの「村上春樹つまらない」なんて曲もあったり(笑)。
はっきりいって、かなりドギツイ歌詞もあったりするのですが、彼女たちの言いたいことをストレートに伝えるこのスタイルこそ、ここ最近のロックバンドが忘れかけているパンクロックそのものといった感じ。それが、まだこの間高校を卒業したばかりという、女の子3人組によって奏でられているあたり、日本の将来も、まだまだ捨てたもんじゃないなぁ、という感じがしました(笑)。
で、基本的にその歌詞をメインに取り上げられることが多い彼女ですが、なにげに分厚いバンドサウンドといい、、意外にポップでインパクトのあるメロディーといい、バンドとしての基礎体力もきっちり備えていて、歌詞のインパクトだけのバンドではない、という点も重要なところではないでしょうか。
先日、ライブではじめて彼女たちのステージを見たのですが、なにげに演奏もしっかりしていて上手く、かつ、迫力のある音を出していて、ちゃんとバンドとしての実力も兼ね備えているなぁ、と感じました。
インパクトは抜群ですし、なにげに曲の土台もしっかりしているし、今後に注目したいパンクバンド。こういうバンドがもっと売れれば、日本の音楽シーンもおもしろくなるのになぁ。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
対音楽/中村一義
ここ最近は100sとしての活動が続いていたので、中村一義名義のオリジナルとしては、なんと2002年の「100s」以来、10年ぶり(!)となる新作。今回のアルバムでは、彼の音楽的な原点でもあるベートーヴェンを曲の中に取り込んだ作品。具体的には、1曲目から9曲目まで、ベートーヴェン交響曲の第1から第9まで、その順番通り、フレーズを取り込んだ作品になっています。
普通、この手のクラシックとのコラボは、どうも上手くいかないことが多いように感じます。なにより、クラシックのフレーズがあまりにも強烈で、楽曲自体がクラシックの色に染まってしまい、ベタな作風になってしまうことがほとんどのケースのように思います。
しかし、そこはさすが中村一義。今回のアルバムは、ベートーヴェンの有名曲のフレーズを上手く取り込みながらも、楽曲自体は、中村一義らしい、極上のポップソングにしっかりとまとめあげています。それも、10年ぶりのソロというのにふさわしい、ギターロックからアコースティック、ストリングスやらピアノやら、様々な音の要素を取り込んだ美しいメロディーラインが展開していく、まさに中村一義の世界をしっかりとつくっています。天才、中村一義の実力を、再認識したアルバムでした。
評価:★★★★★
中村一義 過去の作品
最高宝
6 REMIX'N BIRDS
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