シンプルなだけに・・・
Title:HOME AGAIN
Musician:MICHAEL KIWANUKA
今、最も話題の新人ミュージシャンの新譜が、ついに日本でもリリースされました。ウガンダからの移民である両親のもと、イギリス北部のマスウェル・ヒルで生まれ育った、25歳のシンガー。毎年、期待の新人ミュージシャンを取り上げる、BBCの「Sound of...」で、「Sound of 2012」に選ばれ(過去にはAdeleやMIKAなども選ばれています)、このデビューアルバムも、イギリスのアルバムチャートで4位にランクインしました。
ジャケットからして、60年代あたりのソウルの匂いがプンプンしてくるのですが、1曲目「TELL ME A TALE」など、まさに60年代ソウルドンピシャ。グルーヴ感あるリズムに、黒っぽいホーンによるアレンジが、ソウル好きには壺にはまりそうな作品になっています。
・・・と思って、サザンソウルの王道路線なのか?と思えば、そうではないところがおもしろいところ。その後の、タイトルチューンである「HOME AGAIN」にしろ「REST」にしろ、ソウルというよりは、どちらかというとフォークソングっぽい雰囲気の曲で、アコースティックなサウンドでメロディアスな染み入るような歌が特徴的でした。
もっとも、その後も「ANY DAY WILL DO FINE」みたいに、ソウルテイストの強いナンバーがあったり、「BONES」みたいにジャジーな曲もあったり。イメージとしては、ソウルやフォーク、ジャズなどと等距離の位置に立ち、それぞれの良いところを取り込んだ、といった感じでしょうか?
どの曲にも共通しているのが、アコースティックなサウンドと暖かみのあるメロディー、そしてちょっとスモーキーで味わい深い彼のボーカル。楽曲には派手さはありません。真新しいか、と言われるとそうでもありません。ただ、シンプルなだけに、逆に、聴き入ってしまう魅力が、この曲にはありました。CDの帯に書かれたあおり文句ではありませんが、どこか郷愁を誘うようなメロディーが実に魅力的です。
今年のフジロックにも出演し話題となりましたが、ストレートにボーカルとメロディーを聴かせるシンガーなだけに、幅広く薦められそう。最初は、ちょっと地味かと思いつつ、気がつけば、手放せなくなっている、そんな作品。今年を代表する傑作の1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Pull Up Some Dust And Sit Down/Ry Cooder
御年65歳になるアメリカを代表するギタリストの一人、ライ・クーダーの新作。アコースティックなサウンドに、全体的にアメリカ南部の空気をそのまま感じるような作品。カントリーやブルースなどの色合いが濃く、ブルースからの影響では、著名なブルースシンガー、John Lee Hookerからダイレクトに影響を受けた、そのものズバリ「John Lee Hooker For President」なんで曲も。様々なタイプの曲があるものの、カラッと明るい雰囲気は、いい意味でのアメリカらしさを感じます。
評価:★★★★★
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