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2012年11月17日 (土)

オーケストラをバックにしたライブ盤

Title:CUT THE WORLD
Musician:ANTONY AND THE JOHNSONS

その美しいボーカルとメロディーに聴きほれてしまう傑作をリリースし続けるイギリス人ミュージシャン、アントニー・ヘガティによるソロプロジェクト、ANTONY AND THE JOHNSONS。最新作となる本作は、ライブアルバム。昨年の9月2日、3日に、デンマーク国立室内管弦楽団との共演でのライブの模様を収録した内容になっています。

前作「SWANLIGHT」においても、ロンドン交響楽団やデンマーク国立室内管弦楽団と共演した曲が収録されていました。オフィシャル的には、「ライブアルバム」というよりも、「最新オリジナルアルバム」みたいな扱いをされているケースが多いみたいで、今の彼の音楽的な興味が、オーケストラとの共演という方向に行っているのでしょうか?確かに、彼の中性的な美しい歌声は、オーケストラの清らかな響きにピッタリ来るように感じます。

ただ、いままでのアルバムに比べると、と言ってしまうと、やはりバリエーションの富んだいままでのアルバムの方に、分があるように思えます。多分、その場で生で聴けば、その美しいオーケストラの演奏に圧倒されそうでしょうが、正直、おなじオーケストラアレンジで、かつミディアムテンポな曲ばかりだと、少々単調にすら聴こえてきたりして。まあ、私自身、あまりオーケストラを聴かない影響かもしれませんが・・・。

とはいえ、じゃあ、これが駄作だったかといわれるととんでもありません。文句なしの傑作だったと思います。少々単調にすら感じる内容にも、全く飽きが来なかったのは、やはりその美しいボーカルと、メロディーの影響でしょう。特に、表現力豊かで力強いボーカルは、無条件に聴き入ってしまいます。もっとも、いままでの彼のアルバムも、やはりその魅力の多くが、彼のボーカリストとしての力に拠っている部分が大きかっただけに、当然ともいえるのかもしれませんが。

オーケストラを用いたポップのアルバムというと、オーケストラの音ばかりが目立って、大味になってしまうアルバムが多いのですが、やはりボーカルとメロディーの力でしょうか、オーケストラの使われ方が非常に自然で、そういう意味でも、「オリジナルアルバム」としても楽しめる内容だったと思います。ライブアルバムということで、いままでのアルバムに比べると、日本での取り上げられ方が少々寂しい感もしますが、いままでのアルバムではまった方は、文句なしに聴いてほしい傑作だったと思います。

ちなみにこのアルバム、ちょっと話題になったのが2曲(?)目の「FUTURE FEMINISM」というスピーチが収録されている点。トランスジェンダーと宗教に関するスピーチなのですが、いわゆるポエトリーリーディングではなく、完全なスピーチ。内容はともかく、スピーチをそのままアルバムに収録することに賛否はあるみたいです。個人的にも、こういうスピーチの内容を歌にするのがミュージシャンの役割ではないか?とどちらかというと否定的な見解なのですが・・・。ただ、その内容は、もちろん英語なので、これから聴く人は、日本語訳のある国内盤の方をお勧めします。スピーチをアルバムに入れることの賛否はともかく、その内容は、彼の考え方を知る上でも重要と思われる内容なので。

評価:★★★★★

ANTONY AND THE JOHNSONS 過去の作品
The Crying Light
SWANLIGHT

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