カミングアウトも大きな話題に
Title:channel ORANGE
Musician:FRANK OCEAN
FRANK OCEANは、ここのサイトでも何度か紹介しているHIP HOPグループ、オッド・フューチャーの一員であるR&Bシンガー。昨年リリースしたミックステープ「nostalgia,ULTRA」は、ミックステープとしては異例というほどの大きな評判を呼びました。そして、このたび、待望のデビューアルバムがリリースされました。
今回のアルバムで、ひとつ大きな話題となったのが、彼がバイセクシャルということをカミングアウトしたというニュース。もともと、このアルバムにも収録されている「FORREST GUMP」について、アルバムの試聴会で、あるジャーナリストが、「男から男へのラブソングだ」と看破したことがきっかけだったみたいです。
このニュースが大きな話題となったのは、もともとHIP HOPやR&Bといったブラック・カルチャーの世界では、マッチョイズム志向が強く、特に性的には保守的な志向が強い社会。そんな中で、あえてバイセクシャルであると公で認めること自体、大きなニュースとなりました。
そんな彼の性格は、このアルバムの歌詞に強く反映されていたように感じます。件の「FORREST GUMP」に限らず、HIP HOPにありがちな、マッチョイズムの観点はほとんど皆無。特に女性に関しての描写については、「俺についてこい」的な視点はほとんどなく、どこか対等な雰囲気すら感じられるところも。
また、全体的に内省的な歌詞が多く、辛い現状の中、もがくような姿は、どこか弱さすら感じられる歌詞が印象に残りました。
そして、一番印象に残ったのは、メロディーとトラック。トラックは、音数を絞ったタイトなトラック。柔らかい感じの音と、ちょっとジャジーな雰囲気は、最近はやりのDRAKEと似たような方向性で、最近流行りということになるのでしょうか?どこか、彼の歌詞の世界にもマッチした音が印象に残ります。
さらにまさに美メロと呼ぶにふさわしい、メロウで優しいメロディーラインが素晴らしい。ファルセットボイスを多用しながらも、優しく、時には悲しげに歌い上げるボーカルも心に響きます。全体的に、メロウなミディアムテンポの曲が多かったのですが、メロディーラインの美しさから、全17曲、まったくだれることがなく、最後まで耳が離せませんでした。
間違いなく、今年を代表する傑作だと思います。Odd Futureがちょっと苦手という方にもR&B好きなら是非とも聴いてほしい傑作です。
評価:★★★★★
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コメント
お久しぶりです。コメント残す機会は少ないですが、いつも楽しく拝見しております。
僕も話題性で気になってFRANK OCEANを聴きましたが、本当に聴いてよかったです。
最初の印象として、彼は歌手としてもとても器用な人だなと思いました。音域もそうですが、内省的な歌詞に秘めたる感情を、ボーカルを通して伝える表現力が素晴らしくて、またシンプルなトラックにとても映えてますよね。
要所要所に暗めの曲を差し込んだり、楽曲作りにおいても王道のR&Bから、チャレンジングなサウンドもあったり、非常にバランス感覚に優れた1枚だなと思いました。
投稿: 亮 | 2012年10月22日 (月) 13時48分
>亮さん
お久しぶりです。FRANK OCEAN、本当にいいですよね~。確かに、表現力もすばらしく、思わず聴き入ってしまいます。個人的にも今年のベスト盤候補で、これからが本当に楽しみな才能です!
投稿: ゆういち | 2012年11月 1日 (木) 01時37分