「中2病」的世界観にもどこか共感
Title:ラブソング
Musician:amazarashi
昨年11月にリリースされ、話題となった「千年幸福論」以来、フルアルバムでは2枚目となるamazarashiのニューアルバム。メンバー自体は、人前に一切姿を見せない、「謎のバンド」として話題になっています(・・・といっても、メディアなどのインタビューなどには、それなりに応えているみたいなのですが)。
で、前作「千年幸福論」の感想でも書いたのですが、いわゆる「中2病」的なスタンスは、本作でも健在。世の中を斜めから見ているというか、虚無主義的なものを感じます。
ただ、自分も「学生時代だったらもっとはまっていただろうなぁ」なんてことを思いつつも、なんだかんだいって、それなりに聴いてしまうのは、なんだかんだいっても、歌詞のふとした部分に、アラフォーのおっさんの私でも共感できるような部分があるから。
タイトルとなった「ラブソング」は、「愛こそ全て」という落としどころこそ、少々陳腐ですが、消費社会への強烈な皮肉に、ユーモラスを感じることが出来ますし、「アポロジー」の
「約束なんて何一つ守れなかった僕らのアポロジー
世界に文句ばっか言ってたら 誰も愛しちゃくれねぇよ
ごめんなさい ちゃんといえるかな?
ごめんなさい ちゃんといえるかな?」
(「アポロジー」より 作詞 秋田ひろむ)
という歌詞にしても、なんだかんだいっても、それなりに年齢重ねたからこそ、グッと来るような部分もあります。
虚無主義的な世界観を作り上げながらも、よくありがちなファンタジックな方面に走らず、歌詞にしても、いい意味で平易でわかりやすい。サウンドは、正統派のオルタナ系ギターロックで、シンプル。彼らの曲を聴いていると、すんなり歌詞の世界が耳に入り、とてもわかりやすい。歌詞を売りとしているバンドは多いのですが、決して押し付けがましくないのに、歌詞がしっかりと頭に残るバンドは少ないように感じます。「中2病的」と書いたのですが、なにげに歌詞をアピールする観点からは、しっかりと考えられてるように感じます。
ただ、それだけわかりやすい曲を作れるんだったら、「セビロニハナ」をはじめとして、「語り」がメインの曲はいらないような気がする。「語り」をメインにされると、ちょっと押し付けがましくなってしまって、「中2病」度も増すような気がするし・・・。
で、その上で、前作もそうだったのですが、最後には、その向こうの「希望」をきちんと歌っているのもうれしいところ。ラストに収録されている「祈り」は、東日本大震災を受けてつくった曲だそうで、被災者へ向けての思いがつづられているのですが、最後を締めるのが
「「僕らは無力だ」と暗闇に祈るのが
本当に無力とは信じないぜ」
(「祈り」より 作詞 秋田ひろむ)
という締めくくりが、決して悲観しているだけではない、力強さを感じます。
前作も前々作も、チャートでベスト20には入っているのですが、なかなかブレイクしきれない感のある彼ら。確かに、メロディーはちょっと地味で、派手さはないのは事実なのですが・・・。もうちょっと売れてもいいバンドとは思うんですけどね。次回作こそ。
評価:★★★★★
amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ほかに聴いたアルバム
嘘憑キズム/小南泰葉
フジロックへの出演し、話題となった女性シンガーソングライターのメジャーデビュー作。というわけで、このアルバムではじめて聴いたのですが・・・うーん、歌い方が完全に椎名林檎・・・。歌詞の世界は、椎名林檎よりも、もうちょっと幻想的な感じがして、丸っきりパクリといった感じではないのですが、でも、椎名林檎のブレイク以降、ありふれちゃったよなぁ、こういうシンガー(苦笑)。
評価:★★★
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