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2012年10月20日 (土)

5年目の総括

いままでも、このサイトでは何度か取り上げてきた「初音ミク」を使用したボーカロイド楽曲。その「初音ミク」の発売から5年ということで、5周年のベスト盤がリリースされました。2009年にも、総括的なベスト盤がリリースされましたが、位置付け的には、それに続くベスト盤、ということになるでしょうか。2枚同時リリースで、サブタイトルも、その時と同様です。

Title:初音ミク 5thバースデーベスト ~impacts~

こちらはタイトル通り、インパクトのある曲を集めたベスト。そしてもう1枚が。メロディアスな曲を集めたベスト。

Title:初音ミク 5thバースデーベスト ~memories~

まず、前回のベストから3年が経って思ったこと、それは、初音ミクがらみの曲のクオリティーが、間違いなくあがっているという事実。前作では、supercellやlivetuneといった、既にメジャーでアルバムをリリースし、ヒットをあげていたミュージシャンの曲が、頭2つくらい出ていた印象があります。彼らも今回のベストで楽曲を提供していますが、それらの作品についても、前作よりグッとよくなっています。しかし、今回のアルバムの中で、彼らの作品は、全体の中では正直中程度。もっともっとおもしろいミュージシャンたちが、どんどん楽曲を提供しています。

楽曲のバリエーションも、以前よりグッと増えた印象が。あいかわらず、90年代J-POP風の曲や、エレクトロ系の作品は多いものの、アメリカインディーロック風、オルタナ系ギターロック、歌謡曲風、R&B風など、様々なタイプの曲が増えてきた印象を受けました。

以前のベスト盤では、「内輪受け」的な要素が目立ち、このままでは一時的なブームで終わるかも、ということを感想として書いたのですが、この「内輪受け」という要素もグッと減ったような印象を受けます。事実、その結果、以前もここで紹介した米津玄師のような、「初音ミク」コミュティーから抜け出して、評価を受けるミュージシャンも出ていてきます。(ちなみに、彼も、ハチ feat.初音ミク&GUMI名義で「マトリョシカ」という曲が収録されていますが、確かに楽曲は、米津玄師と同様の個性を感じます。)

ただ、その上でちょっと気になった部分も多く・・・まず、これはどうしようもないのかもしれませんが、やはり機械声は、長く聴いていると少々辛い・・・。初音ミクのボーカルを、あくまでも普通の人間のボーカルの代替としてしかつかっていない曲がほとんど。でも、例えば打ち込みのサウンドが、決して生音の代替ではなく、テクノやエレクトロのようにそれ独自のジャンルを作り出しているように、機械声でもまた、生音とは違うジャンルを作り出せるように思うんですが・・・外部からの生意気な意見で申し訳ないのですが・・・。

その「機械声」のためなのですが、歌詞が聴き取りにくいのもマイナス。歌詞に関しても、若い世代の鬱屈した感情が上手く表現されているユニークな歌詞が増えてきたような印象を受けます。ただ、初音ミクの声では、歌詞カードを見ないと、それが聴き取れない曲が多く・・・と思っていたのですが、付属のDVDのプロモを見て思ったのですが、もともと動画サイトからのムーブメントなだけに、歌詞が、映像の中で流れるんですね。だから、曲だけ聴いて歌詞がわからなくても問題ない、ということなんでしょうが・・・ただ、それって何か、ちょっと違うような・・・。

あと、シーン全体について最近感じるのですが、初音ミクというキャラクターに、ちょっと頼りすぎな部分があるような。そのため、外からシーンに入り込みにくかったり、キャラクターイメージが先行してしまったり、シーン全体の可能性を狭めているような気もしてしまいます。もっとも、これに関しても、以前に比べては初音ミクというキャラクターに頼らない曲も増えてきていますので、徐々に解消されるのかもしれませんが。

そんな訳で、やはりまだまだ気になる部分はあるものの、グッとおもしろくなったベスト盤。やはり機械声は万人にお勧めできる感じではないものの、興味ある方は、チェックしてみても損はないと思いますよ。今後も、このシーンから、新たなる才能が続々と出てくる予感も?

評価:
Memories ★★★★
Impacts ★★★★

初音ミクベスト~Impact
初音ミクベスト~Memories


ほかに聴いたアルバム

jibun/tacica

北海道出身の3ピースバンドによる5曲入りのミニアルバム。2009年にシングル「人鳥哀歌e.p.」が、同じ年にアルバム「jacaranda」がベスト10ヒットを記録していますが、このアルバムは24位に留まっています。楽曲的は、典型的なオルタナ系ギターロック。ちょっと哀愁あるメロディーがインパクトあり、ポップなメロディーは聴かせるものはありますが、正直、「jacaranda」で感じたように、彼らだけが持っている個性が薄い感じが。終わった後、いまひとつ印象に残らないのが否めないのですが。

評価:★★★

tacica 過去の作品
jacaranda

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