アラフォーのHIP HOP
Title:Life Is Good
Musician:NAS
アメリカの人気ラッパー、NASのニューアルバムは、まずジャケット写真が印象的。NASの膝に乗っている、薄い緑のドレスは、離婚した元妻のR&Bシンガー、ケリスが、2005年の結婚披露宴で着用したウェディングドレスで、自分の持ち物をまとめて家を出て行ったケリスが、唯一、家の残していったものだとか。結婚の思い出を、未練なく手放す女性と、いつまでも未練がましく自分のアルバムのジャケットにまで使用する男性という、男女の差は、お国柄、人種を超えて共通なんだなぁ・・・と、ちょっと苦笑いしながらも思ってしまいます(^^;;
このアルバムでは、そんな元妻に対する「最後のメッセージ」ともいえる「BYE BABY」も、アルバムの最後(国内盤では、その後にボーナストラックが続きますが)に収録。元妻に対して、精一杯強がっていながらも、歌詞の隅々から未練みたいなものを感じる歌詞には、同じ男性としては、(離婚経験はありませんが)どこか共感する部分があり、こちらも苦笑い(笑)。
他にも、かつての恋人との間に出来た愛娘に対して歌う「Daughters」も、成長して恋をするようになった父親の心境をラップしていますが、こちらも同じ男性としては痛いほど、その気持ちは伝わってきます。
今回のアルバムは、39歳という、「大人の男性」であるNASが、その心境を綴ったり、その39年の人生を、あらためて振り返るようなリリックを、多く綴っていました。ある意味、アラフォーらしいアルバムと言えるでしょうし、同じ30代後半の世代としては、その心境に共感できる部分も。
トラックも、ピアノの音色が美しい「NO INTRODUCTION」からはじまり、オーケストレーションでスケール感あるトラックにまとめた「WORLD'S AN ADDICTION」や、アフロビートが心地よい「THE DON」、ジャジーな「STAY」など、バラエティーがあります。かつタイトで、ほどよく音数を絞ったトラックが印象的です。
そして、そんなアルバムの中で、前述の「BYE BABY」の前を飾る「CHERRY WINE」が特に印象に残りました。この曲は、昨年、27歳で夭折した女性シンガーAmy Winehouseをフューチャー。そんな彼女の歌声をバックに、「Life is good no matter what, life is good」(何であっても人生は素晴らしい。人生は素晴らしい)とラップする彼。「Life is good」という言葉自体は陳腐であっても、このアルバムの中で、かつ、Amy Winehouseという、悲劇の歌姫のボーカルをバックで歌われと、やはり感動するものがあります。
NASの相変わらずの実力を感じさせる傑作アルバム。情けない部分も含めて、実によく本音が出ているようなアルバムに感じました。男としては、ちょっとイタタタな部分も含めて(笑)、実に魅力的な1枚でした。
評価:★★★★★
NAS 過去の作品
Untitled
Distant Relatives(Nas&Damian Marley)
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