「目」にまつわる物語
Title:メカクシティデイズ
Musician:じん
人気動画サイト「ニコニコ動画」で人気を博し、メジャーデビュー作となる本作が、いきなりオリコンベスト10入りを記録した、じんによるデビューアルバム。例により、ボーカロイドの初音ミクを使用した作品になっています。
まずおもしろかったのが、楽曲自体が、オルタナ系ギターロックの影響を強く受けたサウンドになっている、という点。例えば2曲目「カゲロウデイズ」の出だしのギターサウンドなんかは、ちょっとSPARTA LOCALSっぽい感じも受けました。
例により、音をこれでもかというほど詰め込んだような、オーバーアレンジ気味なのは少々食傷気味で、アルバムの途中で、少々お腹一杯になっちゃいそうなのですが、ギターロック好きにも、十分気に入る音なのではないでしょうか。
また、このアルバム、すべて「目」にまつわる歌詞になっているとか。また、このアルバム発売と同時に、彼の世界観を体現化した、小説と漫画も発表されているそうです。
アルバムと同時に、その世界観を体現化した小説を発表・・・と言うと、30代後半の私くらいの世代の人間にとっては、TM Networkの「CAROL」を思い出してしまいました(笑)。これは勝手なイメージなのですが、なんとなく、聴いているリスナー層が、かつてTM Networkを聴いていたようなリスナー層とかぶっているような気も・・・(^^;;
それだけに、歌詞にも力を入れているみたいで。で、これは決してけなし文句ではないのですが、印象としては、「高校生の妄想みたい」というイメージを受けました。それはようするに、あの世代ではよくありそうな、世の中に対する違和感、世間に対してどこか斜に構えて見る感情。そういう感覚を、上手く物語り的にまとめて歌詞にしている、という感じを受けます。
少々現実ばなれしたような設定や、妄想ちっくな部分が、正直、受け入れられないような人もいそうな感じはするのですが、彼らしい個性がしっかりと発揮されているように思います。ただ、残念なことに、やはりボーカルがボーカロイドで、かつハイテンポな曲が多いために、肝心の歌詞が、いまひとつ聴き取れない。おそらく、動画サイト主導の人気で、動画サイトでは歌詞が表示されるため、気にならないのかもしれませんが、CD単体で聴くと、この点については、とても残念に思いました。
そんな訳で、一般的に受け入れられなさそうな部分も感じられる一方で、今の若い世代の叫びをきちんとつかんで楽曲にまとめあげている感じも受け、そういう意味では、「初音ミク系」の枠組みを超えて、おもしろさも感じられる1枚でした。正直言うと、先日紹介した米津玄師みたいに、ボーカルも生声の方がおもしろいと思うのですが・・・。今後に期待。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
蛇姫様/女王蜂
昨年、急速に注目を集め、「孔雀」を聴いた時は、かなりのインパクトを感じました。ただ、インパクト主導すぎて、後にいまひとつ残らないものを感じてしまいましたが、このアルバムもそんな感じ。ヘヴィーなサウンドと、歌謡風メロという組み合わせに、インパクト十分なのですが、つかみのインパクトが強すぎて、聴き終わった後に、肝心の内容に、あまり印象が残らない感じも。ライブはすごい、と聴いているだけに、ちょっと残念な感も・・・。
評価:★★★★
女王蜂 過去の作品
孔雀
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