« 33年ぶりの来日公演! | トップページ | 前田敦子卒業後初のシングルは? »

2012年9月 4日 (火)

ネットコミュニティー発

Title:diorama
Musician:米津玄師

個人的に、以前から、いわゆる「同人音楽」と言われる、インターネット発の音楽の動きに対して、非常に興味深く見ていました。ここのサイトでも、「同人音楽」系のミュージシャンのアルバムは、何度か紹介してきましたが、そういう商業ベースがスタートではないヒットが、新たな音楽の潮流になるのではないか、そういう期待があったからです。(ただ、残念ながら、最近、そういう「同人音楽」がむしろ商業ベースに容易に組み込まれてしまっている傾向があるようですが・・・)

ただ、残念ながら、ネット発の音楽は、例えば初音ミクのように、どうしてもいわゆる「おたくカルチャー」に吸収されてしまい、その狭いコミュニティーに留まる傾向にありました。特に最近は、音楽市場が狭くなってしまったため、狭いコミュニティーに留まっていても、チャート的には十分ヒットを狙えるようになってしまったため、その傾向は、より強まってしまったように感じます。

そんな流れの中、おもしろいミュージシャンが出てきました。彼、米津玄師は、もともと「ハチ」というハンドルネームのボーカロイドのプロデューサーとして、ニコニコ動画で絶大な支持を得ていたそうです。それが今回、ボーカロイドをやめ、自らボーカルを取り、アルバムをリリースしました。

ボーカロイドという形態をやめたため、このアルバムは、ネットコミュニティーの枠を超え、注目を集め、特に「ロッキンオン・ジャパン」誌では大絶賛。一気にその狭い世界の扉を切り開くことになりました。いや、それまでの「おたくカルチャー」という狭いコミュニティーに、「ロケノン系」という別の狭いコミュニティーが加わっただけじゃないか、という揶揄も聞こえてきそうですが(^^;;ただ、それでも、ひとつの枠組みを超えて、普段、同人音楽に触れないようなリスナー層に広がったというのは、大きな意義があると思います。

で、前置きな長くなってしまいましたが、肝心のアルバムの感想ですが・・・

楽曲のベースとなるのは、ストレートなオルタナ系のギターロック。ただ、バンドサウンドがメインという感じではなく、基本的には、宅録系といった感じでしょう。打ち込みなども積極的につかっており、少々音を詰め込みすぎでは?と思うこともあるのですが、軽快でポップ、だけどどこかひねくれた感じのサウンドは、聴いていて癖になる部分も。

それ以上に特徴的だったのが歌詞の世界観で、不思議で幻想的な世界を、1曲1曲構築しています。ユーモアで、文学的な感覚もある歌詞で、リスナーに深読みの楽しさも提供できるような内容になっています。

今回、はじめてボーカルを取った彼ですが、結構端整な歌声で、歌詞の世界観にもあっている感じが。彼のボーカロイドの曲は、聴いたことないのですが、ここらへん、下手にボーカロイドを使うよりも、生声の方が、やはり説得力がったのでは?そういう意味では、自らボーカルを取ったのは、大正解、という印象を受けました。

で、この手のギターロックに、この手の歌詞というと、タイプ的には、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSあたりを彷彿とさせるものがあります。というと、完全に「ロケノン系」といわれそうなタイプの音楽で、そういう意味では「ロッキンオン・ジャパン」誌で絶賛されるのも納得といった感じがします。

また、歌詞にしろサウンドにしろ、いい意味でも悪い意味でも「同人音楽」出身らしさを感じました。悪い意味、で言えば、歌詞もサウンドもちょっと主張が強すぎて、詰め込みすぎな感じが。歌詞の世界観もとてもユニークな一方で、歌詞カード片手で聴かないと、世界観が入ってこないというのがマイナスかも。一方では、このユニークで、立派に構築され、広がりのある歌詞の世界というのも、ネットコミュニティー出身ならでは、といった感じがします。

そういう意味では、ネットコミュニティー発の音楽の良さを発揮しつつ、きっちり狭いコミュニティーの枠組みを超えてきた、という意味で、非常に意義深いアルバムに感じました。確かに、上に書いた通り、マイナス点も目立った感もするのですが、それを差し引いて、十分すぎるほど楽しめた作品だったと思います。これからの活躍も本当に楽しみですし、彼に続くミュージシャンも期待したいところです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

AUDIO GALAXY-RAM RIDER vs STARS!!!-/RAM RIDER

RAM RIDERが、様々なシンガーたちと組んだ企画盤的ニューアルバム。それも、ORANGE RANGEやスチャダラパーのBoseから、中川翔子に声優などで人気を集める桃井はるこまで、バラエティー富んだ参加者がユニークな作品になっています。

ただ、楽曲は、リズミカルなエレクトロポップなのですが、ストレートでベタといった感じ。そのため、最初のインパクトはあって、誰でもすぐに楽しめる内容になっている一方、2度3度聴くと、少々物足りなさを感じそうな内容に。

評価:★★★★

FAMOUS MICROPHONE/鬼束ちひろ

最近、Twitterの暴言騒ぎなど、悪い意味で注目を集めてしまった鬼束ちひろによる、洋楽カバーアルバム。サイモン&ガーファンクルやビートルズ、イーグルスにキャロル・キングなど、選曲は比較的王道な感じ。ただ、カバー自体も、無難な感じ。もちろん、ボーカリストとしても定評のある彼女なだけに、悪いカバーではないものの、後に残る印象はない感じ。Twitterでの暴言など、最近見せる彼女の「狂気」の部分が、曲にももっと反映されればおもしろいと思うのですが・・・。

評価:★★★★

鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓

|

« 33年ぶりの来日公演! | トップページ | 前田敦子卒業後初のシングルは? »

アルバムレビュー(邦楽)2012年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ネットコミュニティー発:

« 33年ぶりの来日公演! | トップページ | 前田敦子卒業後初のシングルは? »