タイトルは、また長いです。
Title:THE IDELER WHEELS...
Musician:FIONA APPLE
約7年ぶりとなるFIONA APPLEのニューアルバム。例のごとく、またタイトルが異常に長く、正式タイトルは「The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do」だそうです。
今回のアルバムで、まず印象に残ったのが、そのアレンジでした。とにかく、シンプルで音数の絞っており、ピアノが、彼女の歌声に寄り添うように、その音色を奏でています。そして、その音の間を埋めるように鳴るのが、独特なリズムを奏でるパーカッションやドラム。そのパーカッションやドラムのリズムが異様に生々しさを感じます。
それだけシンプルで、かつ生々しい音だからこそ、余計に際立つのが、FIONA APPLEのボーカル。こちらも、静かながらも力強く、いい意味での明け透けさを感じさせるボーカル。今回のアルバムで歌われているのも、基本的にラブソングながらも、心の奥底をするどくえぐるような歌詞と、彼女の心の奥をむき出しにするような力強いボーカルと、そのアレンジに、非常にマッチしているように感じました。
いつも以上に複雑なリズムパターンと、シンプルだけでも、それだけに奥の深いアレンジが印象的な作品。それだけに、このアルバム、「難解」と捉える方も少なくないようです。確かに、あくまでも彼女の「歌」を聴かせることがメインとなるアルバムではありますが、そのメロディーも、派手なサビがあるわけでもなく、微妙にひねくれています。そういう意味で、確かに「キャッチー」な作品ではないかもしれません。
ただ、個人的には、このアルバム、「難解」とは思いませんでした。確かに、複雑なリズムを奏でているものの、メインとなるのは、やはり彼女の歌。それも、歌詞の内容がわからなくても、しっかりと私たちの心に響いてくる力強さがあります。メロディーにしても、派手さはないものの、メロディアスなそのフレーズは、決してわかりにくいものではありません。ビルボードのアルバムチャートでは、最高位3位を獲得するヒット作となりましたが、その売上からも、決して、一見さんお断り的なアルバムではないことがわかるでしょう。
最初は、そのアレンジにゾクゾクと来て、このアルバムに深く惹かれましたが、徐々に、彼女のボーカルとメロディーに惹かれていき、気がついたら、全11曲45分、最後まで、全く耳を離せませんでした。
期待を大きく上回る傑作で、個人的には、今年のベスト盤候補だと思います。決して派手ではないものの、その奥ははてしなく深く、聴いていくうちに、FIONA APPLEの世界に徐々にはまっていってしまった、そんな傑作でした。
評価:★★★★★
Torches/FOSTER THE PEOPLE
昨年、話題となった、アメリカはロサンジェルス出身のインディーギターロックバンド。雰囲気としては、いかにも最近のインディーロックの流れといった感じ。ニューウェイヴ風の軽快でダンサナブルなリズムと隙間のあるシンセの音色、そしてポップなメロディー。Vampire WeekendやTwo Door Cinema Clubあたりに通じる雰囲気もあるのですが、それよりは、もっとポップス寄りで、「ギターポップ」というカテゴライズにも当てはまりそう。軽快なポップチューンが楽しめましたが、「よくあるインディーロックバンド」という印象も抱いてしまい、今度、長く人気を持続するには、もうひとつ、圧倒的な個性が欲しい感じも。
評価:★★★★
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