日本への強烈なメッセージ
Title:B級映画のように2
Musician:田我流
最近、歌詞にしろサウンドにしろ、より強烈なメッセージや個性を感じられるミュージシャンが出てくるのって、ロックよりもHIP HOPのような印象を受けます。日本にしろ、アメリカにしろ。ってことは前にも書いたような気がするのですが、また、今の日本に強烈なメッセージを放つ1枚のアルバムがリリースされました。
そのアルバムを産み出したのは、田我流(でんがりゅう)。山梨県を拠点に活動するHIP HOPユニットstillichimiyaのメンバーで、このユニット名も、山梨県一宮町が、周辺町村との合併により消滅してしまうことに反対して活動を開始したことからつけられた名前だとか。それだけでも彼らの強いメッセージを感じることが出来ます。
特に強烈なのが、中盤から後半にかけての社会性の強い楽曲。「Resurrection」では「国は民を守らない」とストレートな批判をした上で、私たちに対しての強いメッセージを放っていますし、「Straight outta 138」では、政治家からメディアまで、この日本の病巣をバッサリ、ストレートなメッセージで切り捨てています。特に後半では、反原発に対してのメッセージが印象的。
67年前のボロ負けで終わったあの戦争を
やつらの夢それが原発だ間違いねー
だからもうとっくの時代遅れ
死にぞこないじじいのノスタルジー
立たなくなったチンポの代わりの
シンボルだそれが原子炉
(「Straight outta 138」より 作詞 田我流, ECD)
とある意味ユーモラスを交えた視点で、反原発を高らかに唱えています。確かに、原発に対して無条件で推進しようとしているのって、中曽根だったり石原慎太郎だったりして、この視点も納得なのかなぁ(笑)。
インタルード的に入っている「愛のテーマ」では、反TPP論で一躍知名度をあげた中野剛志氏の演説がサンプリングされていて、このメッセージもかなり強烈でした。
社会派の曲以外では、基本的に、若者の日常をリアリティーもって切り取っているのが特徴的。特に「ロンリー」では、テーマ的には、「ここではないどこかへ」という、J-POPですっかり陳腐になってしまったテーマながらも、若者の心境をするどくきり取った内容で、手に垢がついた内容ながらも、非常にリアリティーある歌詞になっています。
ただ、このアルバムが素晴らしいのは、そんな社会に対する批判や、若者の現実をリアルに切り取りながらも、その向こうに希望を感じさせるメッセージを歌っている点。特に「あの鐘を鳴らすのは、、俺」では、タイトル通り、自分の力で、明るい未来をつかみとろう(・・・文字にすると陳腐な感じがするけど)とする、力強いメッセージソングになっています。
もともと、彼の所属するstillichimiyaは、地元一宮町への愛情から産まれたグループ。このアルバムも、日本や日本人に対して、厳しい批判を繰り広げる内容になっていますが、その先には、ふるさと日本への心からの愛情を感じました。
ただ、リリックからの強い印象と比べて、トラックやラップ自体は特に目新しさは感じられず・・・といった感じ。ラップは、これだけの内容なだけに、言葉を丁寧に綴っている印象はあったのですが。まあ、もっとも、このリリックからは、それをおぎなってあまりあるパワーを感じたのは間違いないんですけどね。
東日本大震災以降の日本については、数多くのミュージシャンがそれぞれのスタンスで曲をつくってきましたが、これだけストレートで、強烈なメッセージを放ったミュージシャンは少ないのではないでしょうか。それだけ、強力なパワーを感じさせる1枚でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Schwarzenegger/[Champagne]
このアルバムで、初のベスト10ヒットを果たした4人組バンドの3rdアルバム。基本的には、「よくいるタイプのオルタナ系ギターロックバンド」という印象を受けたのですが、正統派のギターロックから、アコースティック、パンク、ガレージ、ストリングスを入れた作品など、バリエーションもあり、メロもポップで、ベスト10ヒットを記録するのもわかる感じが。
評価:★★★★
Chronology[2005-2010]/Sound Horizon
アルバム毎に物語を作る・・・というイメージがあっただけに、ベスト盤をこんなに早い段階でリリースするのは、ちょっと意外でした。ただ、フルボリュームの内容で、あれだけ音を詰め込んだアレンジの曲が続くのは、最初はよかったのですが、最後まで聴きとおすのはちょっとしんどかった・・・。
評価:★★★
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