「トリビュートアルバム」ではありません。
Title:KING OF SONGWRITER~SONGS OF KIYOSHIRO COVERS~
5月2日、忌野清志郎の命日にリリースされたカバーアルバム。若手ミュージシャンからベテラン勢まで、RCサクセションやキヨシローのソロでの名曲の数々を、カバーしています。
今回、数多くのミュージシャンがカバーしていますが、まず感じたのは、それぞれのミュージシャンが、あくまでも自分たちのスタイルにあてはめてカバーをしている、という点でした。そのため、例えばマッキーの「スローバラード」は、完全に槇原敬之の曲になっていましたし、ゆずの「金もうけのために生まれたんじゃないんだぜ」は、ゆずの曲になっていました。
ただ、それぞれのミュージシャンが自分たちのスタイルにあてはめてカバーをしても、全く原曲の魅力が損なわれることがありません。それって、やはり原曲の歌詞とメロディー自体が、非常に魅力的だからなんでしょうね。キヨシローって、曲自体だけではなく、その歌い方やパフォーマンス、スタイル全体を含めて高く評価されてきていますが、このアルバムで、あらためて彼のソングライターとしての才能を再認識しました。
そう考えると納得がいくのがこのアルバムのタイトル。最初、ちょっと違和感があったのが、彼は、「キング・オブ・ロックンロール」みたいな呼ばれ方をすることは聞いたことあるのですが、「キング・オブ・ソングライター」という呼ばれ方って、あまりされていないような印象を受けます。でも、このアルバムを聴いて、このタイトルが納得しました。確かに、彼はソングライターとしても、邦楽界のキングであるんだな、ということを認識したからです。
実際、企画者の意図としても、キヨシローのソングライターとしての側面に焦点をあてたカバーアルバムみたいで、彼の楽曲はあくまでも「素材」として使ったカバーを目指していて、トリビュートアルバムを意図した作品ではないみたいです。そのため、本来、彼を語る場合ははずせないようなミュージシャンは参加していませんし、逆に、一見、彼とは関係のなさそうなミュージシャンが参加しています。ただ、それは、むしろキヨシロー本人との距離が遠いほど、楽曲を、純粋な「素材」として調理できる、と考えたからでしょう。
そう考えると、非常におもしろいカバーアルバムだなぁ、ということをあらためて感じました。実際、アマゾンの評価などを見てみると、熱心なファンには評判が悪いみたいです。確かに、カバーの出来として、すべてが良い出来には感じませんでした。ただ、あまりキヨシロー本人のパフォーマンスと比較せずに、一歩離れたスタンスで見て楽しむべきアルバムのように感じました。
ちなみに、個人的には、いつものせっちゃんのスタイルで、力強さを感じさせる斉藤和義の「エンジェル」や、おもいっきりキュートなガールスポップに仕上げた住所不定無職の「JUMP」が良かったなぁ。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
Gray Ray&The Chain Gang Tour Live in Tokyo 2012/奥田民生
昨年から今年にかけて行われたライブツアー「Tamio Okuda Tour 2011-2012 “おとしのレイら”」のうち、東京4公演について、ライブが行われた当日に、その日のライブをCD化し、会場で発売する、という企画が行われました。ここ最近、話題となったライブCDの「売り方」で、今後ももっともっと増えていきそうな予感がします。このライブアルバムは、そんなライブCDの中からベストアクトを収録し、また、当日、収録できなかったアンコールの音源を収録したもの。当日、買いそびれたファンにとっても、買ったファンにとっても、そもそもライブに行けなかったファンにとってもうれしいアルバムになっています。
内容については、言うまでもありません。いつもの奥田民生らしい、飄々とした感じがしながらも、迫力あるロックを聴かせてくれたり、ダンサナブルなロックンロールナンバーで楽しませてくれたり、ミディアムナンバーではしっかり聴かせてくれたり。ライブミュージシャンとしても、その実力を実感できるライブ盤でした。
評価:★★★★★
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