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2012年7月 1日 (日)

歌は世につれ・・・

「歌は世につれ世は歌につれ」。歌謡曲でよく使われる、ある意味、陳腐な決まり文句です。ただ、実際、時代の状況と、曲のヒットというのは密接に結びついているもの。確かに、時代を超えた名曲、というものもありますが、その時代だからこそ売れた曲というのもあり、それだけに、本来、過去のヒット曲をその時代から切り離して評価する、というのは、出来ないのかもしれません。

ただ、残念ながら、最近のいわゆる「ロックの歴史」的な本や、ロックのディスクガイドで、その曲がヒットした時代の状況について語られている本はあまりありません。そんな中、今回紹介する広田寛治「ロック・クロニクル」は、現代史の観点からロックの歴史を切り取った力作。公民権運動や、ベトナム戦争に対する反戦運動と、ロックという音楽が、密接に結びついていたことを、詳しく書いてあり、単純なロックの歴史を知るということではなく、現代史の本としても興味深く読めた一冊でした。

著者の切り取り方にもよるのかもしれませんが、60年代や70年代は、確かに若者が、ロックという音楽を通じて、社会に関わり、そして大きな影響力を行使していたんだなぁ、ということを感じます。ロックンロールの黎明期には、ロックンロールを、黒人の音楽で下品なものと忌み嫌われていた大人たちと、黒人という差別感情を抜きに、カッコいい音楽を聴きたい若者たちの攻防が、とても生き生きと描かれており、ワクワクしました。また、ある程度、ロックが社会に認められてきた60年代後半から70年代にかけて、公民権運動やベトナム反戦運動とロックが密接に関わり、ロックを通じた若者たちの力で、世の中が徐々に良くなってくる展開に、一気に読みすすめることが出来ました。

ただ、80年代以降に関しては、評価が定まっていないということから、記載が事実だけを羅列しており、簡潔になっているのですが、ある意味、70年代以前と同様に、「反戦・反権力・平和活動」みたいな、リベラルな観点から記載されているため、少々、ロックの歴史という点からは、その流れがわかりにくかったように感じます。特にこの時代、内省的な側面をテーマとするようなバンドが増えてくる中、70年代以前のロックと社会との関係性をベースとしては、ロック史を捉えられなかったのでしょうか。一方では、ミュージシャンのチャリティー活動については、必要以上に書かれているような感じがして、チグハグなイメージがありました。

そして現在。ロックという音楽は全く元気がありません。特に、社会情勢という観点からすると、世の中の情勢が複雑になりすぎて、60年代や70年代みたいな、ストレートな主張が、なかなか受け入れられづらかったりするからでしょうか。思えば、70年代、ロックミュージシャンは世界平和を叫び、世の中のひとたちが手を取り合い、国境のない社会を作り出そう、と歌いました。しかし、皮肉なことに、21世紀の現在、国境のない社会を作り出そうとしているのは、「グローバル化」を標榜する大企業であったりします。

しかし、音楽と時代の流れというのは、今でも密接に結びついているように感じます。例えば日本。現在、AKB48が爆発的な人気を獲得しています。個人的にAKB48が好きではありません。それは、AKB商法というCDの売り方もそうなのですが、例えば「総選挙」だの「公式ライバル」だの、彼女たちにまつわる「物語」を、すべて仕掛ける側が作り出して、ファンはそれにのっかるだけ、という必要以上の「わかりやすさ」がどうも好きになれない大きな要因だったりします。ただ、現在、複雑化してしまった社会だからこそ、逆に、こういう「わかりやすさ」が求められているのかもしれません。そういう意味では、今なお、ヒット曲と時代性は密接にリンクしているのでしょう。また、ロックリスナーとしては、現在、その時代性とロックがあまりリンクしていないというのに、寂しさも感じました。

ちょっと話は反れてしまいましたが、そんなロックを現代史の観点から詳細に描いた本。かなり分厚い1冊ですが、読み応えありましたし、非常に立体的な観点から、ロックという音楽について学べることが出来た1冊でした。ロックや、あるいはポピュラーミュージックが好きで、昔のヒット曲やミュージシャンの曲を聴くようなリスナーであれば、必読の1冊だと思います。

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