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2012年7月16日 (月)

2枚の傑作アルバムとは異なる魅力が

Title:EP's 1988-1991
Musician:My Bloody Valentine

1988年にアルバム「Isn't Anything」、1991年に「Loveless」と2枚のアルバムをリリース。そのサイケデリックで甘美なフィードバックノイズで、多くのロックリスナーをとりこにし、「シューゲイザー」と呼ばれる音楽のジャンルに絶大な影響を与えたバンド、My Bloody Valentine。その後、事実上の活動休止状態となり、「伝説のバンド」と化していたのですが、2008年にまさかの復活。フジロックにも来日し、大きな話題となりました。

そして今年、その2枚のアルバムがリマスターされて、再発売されたのですが、それと同時にリリースされたのがこのアルバム。このアルバムは、タイトル通り、1988年から1991年の間にリリースされたEPを集めた音源。いまとなっては入手がかなり困難になってしまった貴重な音源を収録しており、ファンとしては、待ちに待ったコンピレーションアルバムといったところです。

このEP集が非常におもしろいのは、「Isn't Anything」と「Loveless」という2つのアルバムでは捉えきれないマイブラというバンドの広い音楽性を捉えているところでしょう。クリエイション移籍後初となるEP「You Made Me Realize」では、フィードバックノイズの嵐に、一般的なマイブラらしさを感じるのですが、どこかガレージパンクっぽかったり、爽やかなポップソングになっていたり。クリエイション移籍前のマイブラは、シューゲイザーとはほど遠い、サイコビリ色の強いバンドだったそうですが、最初期から「Isn't Anything」への間の音楽性の模索を感じられて、非常に興味深い内容になっています。

その後の「Feed Me With Your Kiss」EPや「Glider」EP、「Tremolo」EPなど、2枚のフルアルバムの前にリリースされたEPは、アルバム収録曲もありつつ、マイブラのイメージを保ちながらも、アルバムとは微妙にベクトルが違う楽曲なんかも入っていたりして、ここらへんも、アルバムではおさまりきらない彼らの世界が垣間見れるのがとても楽しいところでしょう。

個人的におもしろかったのが、「Instrumetal No.2」「Instrumental No.1」と名づけられた2つの曲。「Isn't Anything」のLP盤のファーストプレス5,000枚にのみつけられた激レア音源なのですが、「Instrumetal No.2」では、ブレイクビーツの要素も取り入れたHIP HOP的なナンバーで、ケヴィン・シールズの興味が、この方向もあったことを伺わせつつ、ひょっとして、マイブラがそのまま活動を続けてたら、こちらの方向に進んでいったのかも?と想像してしまったり。あるいは「Instrumental No.1」は、荒々しいインディーロックに、ひょっとしたら、こちらの方向に進んでいたかも?なんてことも想像したり。かなり実験的な作品なだけに、想像力が膨らんでしまいます。

ファンならば、絶対に聴くべきアルバム。ファン以外ならば、まず2枚のアルバムを聴いてから、になるので、お勧め度は低いのですが・・・。ただ、このアルバムで、2枚の傑作アルバムに至る過程を想像できたり、あるいは、もし活動休止しなければ、マイブラが進んでいた方向を勝手に(笑)想像できたりして、ファンとしては、たまらないアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)/GREENDAY

「21st Century Breakdown」発売後に行われたライブツアーからハイライトを収録したCD音源と、2010年1月のさいたまスーパーアリーナでのライブの模様をおさめたDVDのついたライブ盤。国内盤の場合、歌詞にまで字幕がついているのがうれしいところなのですが、歌詞カードを読んで、一応、どんな内容かは知っていたのですが、ライブ映像を見ながら、歌詞の内容がわかると、なんか、すごく反権力的に煽った内容だなぁ、ということをあらためて感じます。つーか、これ、歌詞の内容をわかるかわからないかで、ライブの印象がかなり異なりそうな。そういう意味で、言葉の壁を強く感じました。

評価:★★★★

GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown

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