遊び心満載の原点回帰作
Title:SQUARE ONE
Musician:m-flo
前作「COSMICOLOR」で、いろいろなボーカリストとコラボを組んだ「loves」シリーズにひとまず幕をおろし、事実上の活動休止状態になっていたm-flo。「loves」シリーズの次は、どのような音を聴かせてくれるんだろう、と待つこと5年、待望となるニューアルバムがリリースされました!
今回のアルバムのコンセプトはSQUARE ONE=原点回帰。LISAと活動した第1期、「loves」シリーズの第2期に続く第3期として、原点に戻って新たな活動を再開した彼ら。ただ、原点回帰といっても、肝心な「音」に関しては「原点回帰」ではありませんでした。
デビュー当初のハウスやR&Bのテイストはむしろ薄れ、楽曲としては、エレクトロ方面の色合いが強くなっています。特に「Perfect Place」のように、ビートの強い今時のエレクトロナンバーが多く、今の彼らの音の興味が、こちらの方向であることが感じられます。
もちろん、そんな中で、パンキッシュでロックテイストが強い「Don't Stop Me Now」や、「So Mama I'd Love To Catch Up,OK?」などトランシーな楽曲、また、メロウな女性ボーカルが入った「All I Want Is You」の冒頭はかつてのm-floを彷彿・・・させながらも、途中からビートの強いエレクトロナンバーに突入してきます。
そんな訳で、楽曲自体は決して「原点回帰」ではありません。ただ、彼らがこのアルバムを「原点回帰」というのは、楽曲自体ではなく、アルバム全体の遊び心ではないでしょうか?
まず、このアルバム、数多くのゲストボーカルが参加していますが、誰がどの曲に参加しているか、一切明らかにされていません。そのため、はじめてアルバムを聴く時に、どんなボーカルが聴けるか、ワクワクしながら聴けましたし、また、聴いた後も、どの曲が誰なんだろう、という推測がまた楽しかったりします。例えばパンクロック風の「Don't Stop Me Now」はハイスタ難波章浩という予想が圧倒的みたいですし、「ALIVE」はEXILEのATSUSHIでは?という声がネットでは多いみたいです。そんな中、タイトルそのまま「Sure Shot Ricky」では、消臭力のミゲル君をサンプリングしていて、とてもユニークなナンバーになっています。
また、アルバム全体がひとつのドラマのようになっているのも大きな特徴・・・というと、初期のアルバムを思い出す方も多いのではないでしょうか。今年2012年というと、そう「EXPO EXPO」で、バーチャル万博が行われる年。しかし、このアルバムの中では、不況の影響で、万博は中止に。グローバルアストロライナー社も倒産というニュースも飛び込んできます。思えば、「EXPO EXPO」が世に出た2001年は、CDも今とは比較にならないほど売れていたし、世の中も、まだ今よりは、明るい雲行きが見えていた時代。それと比べて今は・・・。そういう空気をたくみに読み込みながらも、物語の最後では・・・続きは是非CDを聴いてみてください(笑)。
「loves」シリーズでももちろん遊び心は多かったのですが、今回のアルバムはそれにも増して遊び心満載のアルバム。そう、この遊び心こそが、m-floの大きな魅力。そういう意味でも、まさに「原点回帰」のアルバムになっていたと思います。
音的には、正直言うと、ここ最近流行りの音で、「彼らもこの方向性に向かうんだ・・・」と思うとちょっと残念。とはいえ、彼ららしいポップスセンスあふれるメロディーは健在。十二分に楽しめる内容だと思います。
本格的に復活した彼ら。次は、やはりリミックスアルバムで、そのアルバムでは、本作の続きの物語も??と思うと、次回作もとても楽しみになってきます!m-floは、やはりこうでなくちゃ!あらためてそう思った1枚でした。
評価:★★★★★
m-flo 過去の作品
electriCOLOR -COMPLETE REMIX-
Award SuperNova-Loves Best-
m-flo inside-WORKS BEST III-
MF10 -10th ANNIVERSARY BEST-
m-flo inside-WORKS BEST IV-
ほかに聴いたアルバム
Condenser Baby/SHAKALABBITS
相変わらずのパンキッシュで元気なガールズロック路線炸裂な1枚。まあ、はっきりいって真新しさはなくマンネリ気味なのは否めないんですが、ええ、個人的に好きなんですよ、この手のガールズロックは(笑)。マンネリとはいえ、ポップなメロディーラインはやはり耳に残るし魅力的です。
評価:★★★
SHAKALABBITS 過去の作品
SHAKALABBITS
4 ALL AGES
Phasemeter Trippin' Bug Shake
VOICE/上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips
このアルバムはすごい!
上原ひろみといえば、「THE STANLEY CLARKE BAND FEAT. HIROMI」がグラミー賞を受賞し話題になるなど、日本でも知名度の高いジャズピアニスト。しかし、「ジャズ」というカテゴリーなだけに、ロックやポップスフィールドであまり聴かれることのないようなイメージもあります。しかし、このアルバム、是非ともロック好きにも聴いて欲しい!特に1曲目2曲目は、バンドとの演奏が非常にスリリングで緊張感があり、まさに手に汗握る展開に。「Voice」では特に中盤のピアノとベースにドラムスがまざる演奏が、迫力満点。「Flashback」は、ピアノが奏でるメロに重なるポリリズム的なドラムスがとてもユニーク。その後も、緊張感ある演奏が続き、最後まで耳を離せません!ジャズにとどまらず、ロック好きならはまりそう。お勧めです。
評価:★★★★★
上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
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