「僕たちの洋楽ヒット」。そう題されたコンピレーションが発売されたのが2002年のこと。タイトル通り、洋楽のヒット曲を包括的に収録した全15枚のコンピレーションアルバムで、それなりのロングヒットを記録したそうです。かくゆう私も、洋楽のヒット曲を手っ取り早く聴けるコンピレーションということで、この「僕たちの洋楽ヒット」と、続編の「続・僕たちの洋楽ヒット」を一通り聴きました。ただし、レンタルで。
今回、元々のコンピレーションが、原盤権などの関係で、一部、廃盤になっていることを受け、リニューアル。全8作、それぞれ2枚組というボリュームで発売されました。そんな訳で、今回はCDを購入し、聴いてみることにしました。
このコンピの壺は、「洋楽ヒット」といっても、ビルボードや全英チャートでヒットした曲ではなく、あくまでも日本においてヒットした曲を収録している点。そのため、日本でだけヒットした曲や、海外のミュージシャンが日本向けに歌った曲なども収録されています。
そのため、いわゆる「ロックの歴史」や「ポップス史」などにおいて、忘れられているようなミュージシャン、語られることのないような曲も多く収録されています。そういう意味では、その後に大きな影響を与えるような重要曲が収録されている、とは限りません。ただ、当時の日本の音楽シーンをにぎわせた曲が多いため、リアルタイムに音楽を聴いてきた世代にとっては、懐かしさを感じさせるのではないでしょうか。
Title:僕たちの洋楽ヒットDELUXE Vol.1 1955-63

さすがに1955年から63年という時期は、自分の親たちの世代でも、リアルタイムに体験しているか微妙な時期。ただ、シリーズ8枚の中、実は「知っている曲」の割合が一番多かったのがこのアルバムというのが不思議なところ。「Unchained Melody」や「Moonlight Serenade」のような、美しいメロディーが誰からも愛されるような曲(逆にいってしまいえば、刺激の少ない無難な曲)が、映画やCM、テレビのBGMなどにくり返しつかわれてきたからでしょう。このアルバムに収録されている「Whatever Will Be,Will Be」なんて、この間、CMソングとして使われていましたしね。
いわゆるロックがはやる前夜で、映画音楽的なインストナンバーが多かった時代。ただ、一方では、ロックンロールの一番最初のヒット「(We're Gonna)Rock Around The Clock」だったり、CHUCK BERRYの「Johnny B.Goode」なども収録されています。今ではおなじみのロックンロールのスタンダードナンバーですが、このアルバムで、スタンダードなポップスナンバーと並べて聴くと、そのリズムといい、サウンドといい、あきらかに浮いており、当時は非常に異質で、かつ刺激的な音楽だったんだなぁ、ということに気がつきます。有名曲が多く、なにげに、リアルタイムで体験していない世代が、一番入り込みやすいのは、このアルバムかも。
評価:★★★★
Title:僕たちの洋楽ヒットDELUXE Vol.2 1964-69

ビートルズが世界を席巻し、ロックが一気に市民権を得た時代。ただ、このアルバムを聴くと、勢いがあったのはロックだけではなく、大衆音楽全体が花開いた時代だったのでは?と思います。SAM&DAVEの「Soul Man」や、OTIS REDDINGの「(Sittin' On)The Dock Of The Bay」のような、ソウルのスタンダードナンバーも収録。一方では、FRANCE GALLの「Nous Ne Sommes Pas Des Anges(天使のためいき)」のような、いわばガールズポップも目立つのがこのアルバムの特徴。前作に引き続き、リアルタイムで聴いたことない私にとっても「知っている」率が高いアルバムで、時代の勢いを感じさせてくれる楽曲が揃っています。
評価:★★★★★
Title:僕たちの洋楽ヒットDELUXE Vol.3 1970-72

個人的に、このアルバムを聴くと、1970年を挟んでの前後が、ポピュラーミュージックにおいてのひとつのピークだったんじゃないかな、と感じます。それだけ、Vol.2とVol.3は、8枚のアルバムの中で楽曲の勢いがありました。曲のバリエーションも豊富だし、ソウルからロック、ポップスまで、どの曲もいまでも輝くようなメロディーとサウンドを奏でています。
CHICAGO、THE JACKSON5、ELTON JOHN、ARETHA FRANKLIN、VAN MORRISON、DEEP PURPLE、FACES・・・・・・層々たる名前が並び、そのどの曲も非常に魅力的なのですが、その中でも個人的に一番気に入ったのがJANIS JOPLINの「Me And Bobby McGee」。昔の恋人との思い出をつづった彼女の代表曲。切ない歌詞とメロと、そして、そんな曲にピッタリなジャニスのボーカルが、とにかく泣けました!
Vol.2とVol.3は、リアルタイムを知らない音楽ファンでも無条件でお勧めできそうなアルバム。有名どころもたくさんですしね。豪華なコンピレーションです。
評価:★★★★★
Title:僕たちの洋楽ヒットDELUXE Vol.4 1973-76

70年代後半あたりからが、急速につまんない。こういうことをいうと、異論も多そうですが、なんというか、ロックは急速に様式化し、ポップは無難なポップスが増え、全体的に、瑞々しさがポップスシーンから失われていくような、そんな印象を受けます。このアルバムに収録されている曲も・・・悪くはないけど、無難といった印象が強く・・・いままでのアルバムに比べると、勢いがグッと落ちた感が・・・。
評価:★★★★
そんな感じで、日本でのヒット曲とはいえ、音楽シーン全体の大きな流れを感じることの出来るコンピレーションでした。ただ、ビートルズやストーンズ、カーペンターズの曲は収録されていないのね。ここらへん、大人の事情か、それとも、今でも簡単に手に入るような有名ミュージシャンの曲はあえて収録しなかったのか(でも、Vol.5でQUEENとかは入っているし・・・)。
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