THE ROOTSのコラボ第2弾は・・・。
Title:Betty Wright:The Movie
Musician:Betty Wright&The Roots
2010年には、John Legendと組み、昔ながらのソウルミュージックをカバーして、大傑作を作り上げたTHE ROOTS。そのJohn Legendに続いてタッグを組んだのが、マイアミ・ソウルの女王と呼ばれるBetty Wright。「Claen up Woman」のヒットや、74年にグラミー賞を獲得した「Where is the Love」でも知られるシンガーの、10年ぶりとなる新作で、見事なタッグを組んでいます。
John Legendとのタッグでも、単純にオールドスタイルのソウルを演るのではなく、HIP HOPの要素を取り入れるなど、巧みに「今風」を取り込んだTHE ROOTSでしたが、「懐かしい歌を聴きましょうよ」という呼びかけからはじまる本作でも、SNOOP DOGGやLIL WAYNEなどといった、HIP HOPミュージシャンがゲストとして多く参加し、単純に、懐古趣味のソウルミュージックとは一線を画するアルバムになっています。
また、THE ROOTSの演奏もまた魅力的。「TONIGHT AGAIN」「HOLLYWOULD」あたりでは、シンセの音などを取り込みつつも「WHISPER IN THE WIND」では、優しいギターとストリングス、ホーンの音で、メロウな雰囲気を作り上げていたり、「OLD SONGS」ではファンキーなギターを聴かせたり。ただ、全編に共通して、Betty Wrightのボーカルを引き立てる、暖かみの感じさせるサウンドが、とても魅力的でした。
しかし、このアルバムで一番魅力的だったのは、やはりBetty Wrightのボーカルでしょう。いわゆるはりあげるタイプのボーカルではなく、その声からは優しさが感じられるものの、その一方、その奥には、一本芯の通った力強さが感じられます。
このアルバムに収録されている「SURRENDER」は、今年のグラミー賞のBest Traditional R&B Performanceにノミネートされ、話題になりました。このバラードナンバーも魅力的ですが、個人的には、それに続く「GRAPES ON A VINE」が良かったなぁ。ちょっとしっとりとしたボーカルを、最初は優しく、そして時にはシャウトするボーカルに、ロックテイストのギターサウンドは、ゾクゾクっとします。「同じ木になる葡萄がいつも甘いワインになるわけじゃない ちょっと渋くても、熟成すればするほど味がよくなるのよ」という歌詞も、ベテランシンガーの彼女だからこそ歌える大人の味わい。とても魅力的なナンバーです。
John Legendとのコラボに続いて、またもや傑作コラボ。輸入盤は昨年の発売だったのですが、日本語訳詞もついている国内盤は、ようやく発売になりました。これを機会に、是非。
評価:★★★★★
THE ROOTS 過去の作品
WAKE UP!(John Legend&The Roots)
undun
ほかに聴いたアルバム
INTRODUCING DIGITAL HARDCORE/ATARI TEENAGE RIOT
2010年に復活し、昨年はフジロックへも出演したドイツのデジタルハードコアバンドATARI TEENAGE RIOT。その復活や、フジロックへの出演を記念して、日本限定でリリースされたベスト盤。選曲は、9mm Parabellum Bulletが手がけています。わずか6曲というのは、ちょっと物足りなさを感じる一方、1,700円という安さや、デジタルハードコアというジャンルがら、好き嫌いが分かれそうなことを考えると、ちょっと興味があるけれど・・・という方が手を伸ばすには最適なベスト盤かも。
評価:★★★★
ATARI TEENAGE RIOT 過去の作品
ATARI TEENAGE RIOT 1992-2000
IS THIS HYPERREAL?
VIVA ELVIS THE ALBUM/ELVIS PRESLEY
あのエルヴィス・プレスリーの新録音として話題となった作品。シルク・ドゥ・ソレイユの「Viva ELVIS」の協力のもと、彼のボーカルトラックのみ残して、バックのサウンドを完全に今の音に作り変える企画。企画としてはおもしろいと思うけど・・・ただ、バックサウンドを作り変えても、楽曲の魅力が変らないというのは、やはりエルヴィスのボーカリストとしての魅力によるものが大きいんでしょうね。彼のボーカルは、今聴いてもとても魅力的ですし、男が聴いてもうっとりするほど。
ただ、企画としてはおもしろかったのですが、これで新たなエルヴィスが誕生したか、と言われると微妙で。曲によっては、少々チグハグな感じもしないこともなく。何年後か後に、「まあ、悪くはなかったよね」みたいな感じで、想い出の彼方に行ってしまいそうな感じのアルバム、かな?
評価:★★★
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